新たなるコンソールへの第一歩

994. 目覚めのあいさつ

 僕は目を覚ましたあと、数日休んでギルド評議会に顔を出しました。

 もっとも、こちらは顔見せだけであり、具体的な参加はしばらくミライさんたちに任せると伝えるだけです。

 本番は裏社会のボスのところですね。


「……それで、あたしに会いに来たってのかい」


「はい。快復とはまだ言い難いですが、動けるようにはなりましたので」


「そいつは結構。だが、また調子を崩されても困るんだけどね、あたしも」


「大丈夫ですよ、今度は加減をしてやります。さすがにまた竜が飛んできたらどうにもなりませんが」


「竜災害なんて何度も起こってほしくないけどね。……そういや、例の麻薬の件だが、古代の竜族が絡んでるとかどうとかって聞いたけど?」


「そちらも調べさせてはいるのですが、何分『パンツァー』が知っている程度の知識しか存在しない相手なもので。僕も忙しくて拠点の資料を調べることができず、調査が進んでいません」


「そういうことなら仕方がないさ。竜のくせに麻薬なんて毒物を使ってくる化け物を相手取るのは、相当きついだろうからね」


「正直つらいですね。侵入ルートがわかればまだなんとかなるんですが、そちらもわからず終いでして」


「そこを責めるつもりはないさ。竜災害が終わった直後の混乱をさらに麻薬の混乱が上書きしたんだ。経路をたどろうにも限界がある。あたしだって調べられなかった」


 やっぱりそうですか。

 あれの入手経路がわかるような真似をしているとは思いませんでした。

 ですが、本当に誰にも気付かれないよう慎重にやっていたようですね。

 彼女にも勘付かれず、あとから調べようにも行き詰まるとはたいしたものです。


「それで、話はそれだけかい?」


「僕からは以上です。できれば、僕が寝ている間に入ったギルド評議会の支援について、新市街側からみた感想をいただければ」


「そうだね。あんたんとこの錬金術士ギルドは文句なしだ。聖獣も新市街の中を出歩くようになったんで、奪い取ろうとするやつも減った。なにより、安い値段で気軽にいつでも買えるようになったのが大きい。なんだかんだいっても、新市街支部ができる前はポーションを気軽に手に入れられなかったからね」


 ふむ、壁の内側と外側で流通が変わっていましたか。

 これはあとで商業ギルドに確認を取らなくては。

 コンソールの街でポーションの流通が滞るのはよくありません。

 高品質なものはともかく、一般品質なものはいくらでも量産がきくのですから。


「鍛冶ギルドと服飾ギルドに対する不満も減りつつある。どちらも新市街に用地を確保できたことで支部を建て始めた。稼働するのはまだ先なんだろうが、目に見える成果ってのは大事だね」


「それはよかった。料理ギルドなどはどうでしょう?」


「あそこも大好評だよ。ただ、指導がきついって話は出てるけどね。コンソールの壁を挟んで料理に対する考え方がだいぶ違ったようだ。ここはさすがに内側の流儀にあわせなくちゃいけないから、四苦八苦しているようだよ」


「まあ、コンソールに来た以上、コンソールの料理を食べたいのが旅行客のニーズでしょう。宿屋ギルドも似たような感じですか?」


「あそこもがっつり指導が入っているそうだ。ただ泊まれればいいだけの安宿を目指すのか、高級志向を目指すのか、それすらあいまいな店が多いって話さ。こればっかりはあたしも納得できることだから助け船は出せない。しっかり指導してもらうことだね」


 料理と宿屋は厳しい指導が入っているようですね。

 ほかのギルドも聞いてみると、医療は薬草を使った簡単な傷の手当てを、商業ギルドは商売の基本の講義を、木工ギルドは実際に木工製品を作らせることを始めているそうです。

 宝飾品ギルドは新市街で技術を教える講師を探している途中だと報告を受けているそうですね。

 あと、冒険者ギルドが南に支部を、それ以外の方角に訓練場を建設中だとか。

 ギルド評議会の支援もだいぶ入ってきているようですし、これならば今後の交流を増やせるでしょう。

 心の壁はできる限り早く崩さなければなりませんね。

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