974. スヴェイン不在のギルド評議会
***ミライ
「ん? ミライの嬢ちゃん、スヴェインのやつはどうした?」
私が錬金術士ギルドマスターの席に座っているのを見て冒険者ギルドマスターのティショウ様が不思議そうに声をかけてきます。
それはそうでしょう、サブマスターが席に着くということはギルドマスターが不在ということなんですから。
「スヴェイン様は今朝、家で倒れました。緊急ですが私が代役です」
私がティショウさんに対して返した言葉は、思いのほか室内に響き渡ったみたいです。
事前打ち合わせなどをしていた各ギルドマスターが全員話をやめ、こちらを注目しました。
「お、おい? それって大丈夫なのか?」
「命に別状はないそうです。アリア様の見立てですからそこは安心です。ただ、〝女神の口づけ〟という霊薬を使ったため、完全に回復するまでは目を覚ましません。復帰するのがいつになるのかはちょっと……」
「む、むぅ。錬金術士ギルドマスターには竜災害以降走り回ってもらっていたが、このような形になってしまうとは」
「そうですね。しかし、困りました。錬金術士ギルドマスターが抜けるとなると、コンソール新市街のボスとの接点も切れてしまいます」
ああ、あの方との接触もスヴェイン様が行っていたんでしたっけ。
正確にはスヴェイン様しか信用されていなかった?
どちらにしても、新市街のギルド開発を止めるのはまずいです。
そちらはどうしましょう?
「あんたら、がたがたぬかすんじゃないよ! いつまで若僧ひとりに頼り切ってるのさ!」
ここで声を張り上げたのは料理ギルドマスターです。
もうかなりのお歳なのですが、その声には勢いがあります。
「本来、スヴェインひとりに頼り切っていたことの方がおかしいんだよ! コンソールのことはコンソールギルド評議会が決める、当然のことじゃないか!」
「そ、そうだな。竜災害という嵐のせいで弱気になってしまっていたようだ」
「だらしないね、医療ギルドマスターも。そりゃあ竜災害なんて人間の身じゃどうしようもないさ。だがね、そこからの復興や新市街の統治までスヴェインひとりに頼り切るのはどうかと思うよ!」
「確かに。だが、裏のボスとどうやって連絡を取る? あいつはナギウルヌ以上に慎重な性格をしているぞ。スヴェインが接触できていたのも、スヴェイン個人が信用されていたからだ。ギルド評議会としてあいさつしに出向こうとも会ってはくれないだろうよ」
「あっちが会ってくれないなら、あっち抜きで進められるところを進めるだけだよ。冒険者ギルドはいい土地を見つけたんだろう? じゃあ、そこを手に入れられるように頑張りな」
「だな。ほかはどうする?」
「あたしらのところはスヴェインがすでに話を付けてくれているから、そこを使えるようにしていくよ。宿屋もそうだ。建築もそうだしね」
「うむ。あとのギルドは様子見か?」
「それぞれ出て行けない理由はあるんだろうが、早く行けるように頑張りな。裏の顔役の力がどうしても必要ならスヴェインの復帰を待つ間にそれ以外の準備を整えておきな」
料理ギルドマスターはさすがに年季が違います。
ほかのギルドマスターたちをまとめ上げてしまいました。
私もスヴェイン様不在の城を守りあげなければなりませんね!
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