277.仮宿作り
さて、今日は仮宿となる砦作り……つまりは『クリエイト・フォートレス』でいくつかの砦を建てて回る日です。
回る日なんですが……。
「建築ギルドマスター。人の活動力ってすごいですね」
「おう。だからこそ急いで家を作ってそこを斡旋しなくちゃなんねえ」
アリアが作る砦の範囲には衛兵を立たせて警備させてもらっているので人は寄りついていません。
ですがその周り、特に街道沿いにはテント村や行商人などが住み着き始めています。
「ナギウルヌさんとの交渉は?」
「お前が仲介してくれたこともあってうまくいった。まったく、子供ですら見習いどころか熟練一歩手前なんてはりきりすぎてるぜ?」
「あはは……賃金、出しすぎましたかね?」
「賃金の問題じゃないそうだ。去年、風邪の根本的な原因を取り除いてくれたおかげで今年はほとんど風邪にかかるものがいなかったらしい。その病人もお前が置いていった治療薬ですぐに元気になった。その恩に報いるにはせめて労働力程度しか貸せないのが悔しいそうだ」
そこまで深刻に捉えてくれなくともいいのに。
本当に義理堅い。
「だがお前が鍛えてくれたおかげで工事は大幅に進みそうだ。そうそう、第二ギルド支部ももうじき完成だとよ。あとは最終仕上げだが、それは自分たちじゃ難しいってんで俺たちが引き受けることになった」
「お手数をおかけします」
「いや、せいぜい水回りと窓の取り付けくらいだ。……本当にあんな労働力を借りてもいいのか?」
「はい。僕の野望には必要な戦力です。さらに鍛えていただけると助かります」
「……学園都市構想か。あいつらなら喜々として力を貸すぜ」
「それならありがたい。正直、ボクの考えより五年は遅れることになりそうですから」
「理由を聞いても?」
「弟子たちの指導が思った以上に忙しくなりそうです。あと、僕の契約している聖獣たちの中にも弟子たちに鞍替えしたがっているものが多数。そういった者たちは、弟子たちの魔力上昇を待ってアピールしようと機会を伺っています」
「いいのかよ、『聖獣卿』。簡単に戦力を手放して」
「むしろ、弟子たちの安全が確保されるならどんどん契約してもらいたいものです。体に負担をかけるので絶対に渡しませんが、最大魔力量を強制的に上げることができる神薬を渡せ、などと言い出す聖獣たちもいて困っています」
「やっぱり、聖獣ってのは自由だな」
「今に始まったことではありませんよ。僕たちの拠点に集まり始めたのだって、僕が連れてきた訳ではありませんから」
「はー。……アリアの嬢ちゃんが戻ってきたぞ」
「ですね。アリア、準備はできましたか?」
「はい。魔力タンクお願いいたします」
「わかりました。それでは、建築ギルドマスター。またあとで」
「おう。頼んだ」
さて、『クリエイト・フォートレス』は僕の土魔法では使えないレベルの魔法。
せいぜいできるのは、アリアの魔力タンクとして補助をする事しかありません。
さて、どうなるでしょう?
「始めます。『クリエイト・フォートレス』!」
アリアが魔法を使った瞬間、僕の中から大量の魔力が引っこ抜かれます。
アリアはそれ以上ですから……またハイマジックポーションと霊薬の出番ですね。
魔法が発動し地面からせり上がっていく砦を見て、周囲にいた人々も集まってきました。
衛兵さんが足止めしてくれてますが……ご苦労様です。
「はあ。いつ使ってもこの魔法は好きになれませんわ」
「期限付き。しかも無駄に広いですからね」
僕たちが薬を飲み終わると、それを待っていた建築ギルドマスターが声をかけてきます。
さすがに目の前でこの規模の砦ができるとは考えなかったのでしょう。
「さすがはアリアの嬢ちゃんとスヴェインだ。規格外の真似をやってのける」
「これ、街壁より高度な魔法なんですよね……」
「それでいて期限付き。やってられませんわ」
「いや、十分だ。今日中に何個作れる?」
「指定された数は作ります。薬は足りますので」
「その代わり、そのあと数日は私どもはダウンします。薬が強すぎてその副作用が出ますので」
「……わかった。ほかの土地にもお願いする」
「砦への移住者と条件はわかってますよね?」
「ああ。希望者を募り抽選、四カ月経ったら念のため引っ越しだな」
「わかっていただけているようで幸いです」
「それじゃあ、じゃんじゃん砦を作ってもらうぞ。次はあっちだ」
その日、指定されてた数だけの砦を作った僕たちは想定通り三日ほど寝たきりに。
それを見た弟子たちは建築ギルドに出向き抗議を行ったとか。
事前に弟子たちにも伝えてあったのに……建築ギルドの皆さん、すみません。
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