第474話 ナミナ

 たぶんナミナについては俺の【縁切】と同じようなものを喰らって、光の玉との違いに目を向けられなかったんだと思うけど、今なら城塞都市アノマの女神像を見ることができるかな?


 光の玉は戦から生まれた精霊で、司ってるのは剣技と攻撃魔法、光属性なのに回復系は苦手。ナミナの眷属だった座布団たちは、主に回復と癒し。


 光と清浄、処女神ナミナ――俺が見てたのが、最初から光の玉アレってことは、対象は俺だけじゃない。神々もかかってるくさいし、もっと広範囲なんだろうね。


 考えられるようになったってことは、俺に【縁切】かけたモノと強さのレベルが近づいてきたかとも思ったけど、範囲広いと効果が薄まるみたいな話だったし、近づいてるのは確かだけど、どれくらいの力の差があるかは謎。


 まあ、力量が近づいたら、力を奪われるとかありそうだし、精霊ノートをつくって、せっせと分散させておこう。石になった風の精霊とかリシュのことを考えるとありそうだし。


 さて、何者かがいようといまいとやることは変わらない。シャカの掌の上だったとしても、美味しいものを食う、人の料理を楽しむために食材を広げる、臭い街はいやなんで衛生観念を広める。俺がおおっぴらに快適生活するために、便利な道具を広める。綺麗な風景を見に、あちこち行く。


 屋根裏のベッドの上、大きなお盆。お盆の上には『食糧庫』から持ち出したコーラ、ポテトチップス、チョコレート、そしてタコをスライスした燻製。


 あんまりベッドの上で物を食べる習慣がないというか、こぼしそうでしないんだけど、今はなんとなく怠惰にしたい。


 厚切りザクザクポテトをパリパリ、コーラで流し込む。少しほろ苦くも甘い焼きチョコレートをサクリ。燻製タコをもぐもぐ。


 うん、タコちょっとしょっぱいな。あとで自分で作ろう。


 しょっぱいもの、甘いもの、歯応えの変化。喉を刺激する炭酸、飲み慣れた味。


 怖い存在だけど、『食糧庫』をくれた何者かには感謝しかないので、今のところ敵対する気はない。多分、神々じゃないよねこれ。神々を通してるかもしれないけど、どう考えても司ってる物とかけ離れてるのも混ざってるし。


 何者かって、もしかして俺が最初にいた島の山の中のそばにいたんじゃないかな。【転移】で『家』に連れて行かれたから場所がわからないけど、あちこち歩き回って思ったけどあそこ『地図』に載ってない。


 気候的にも地形的にも似たところがないんだよね。小さな島がいくつもあってそれなりに寒いとこ。北は寒すぎるし、北西はなんか地形が違うっぽいし。神々の影響地域は地図に載るはずなのに、ない。


 寿命と引き換えにもらったモノは、気づけは俺がサバイバル中に欲しいと願ったモノばかり。いやもう一人で生きてくなら絶対欲しいという切実なあれだったけど、聞いてたのかと思うほどスムーズにもらえたし。


 考えることを奪われるのは嫌だけど、【縁切】は自分もしてるしね! 今のところ存在を暴くつもりも敵対する気もないのでそっとしておく方針。何か流れでついでに探索できそうな時、情報を拾うくらいかな。


 とりあえずドラゴンの大陸の南端、あの寒いところには最初の山はないっぽいね、みたいな。


 おやつを食べ終え、活動開始。ゴロゴロしながらポテチ美味しかったです。


「緑色の宝石の類って、どこが有名?」

再び貸家に遊びに来ました。


 メール人の街にまた行く時のために集めとかないとね。居間にはハウロンとクリスというちょっと珍しい組み合わせ。


「緑って言うとエメラルドかしら? 鉱山は知らないけど、エスの大昔の女王が愛した石として有名で、扱ってるのはエスが多いんじゃないかしら?」


「トルマリンやメノウも緑色があるよ! 僕の故郷周辺に出る魔物が落とすんだけど。でも、そう強い魔物はいない地域だから大きいのは滅多に出ないかな?」

故郷のことだからからか、嬉しそうに教えてくれるクリス。

 

「魔石なら、ハルム海峡神の海の魔物からかしらね?」

この世界に出回っている宝石はほとんど魔石だ。


 魔石は魔法に使ったり、神殿の結界を保つエネルギーに使ったり、使用頻度が高い。あんまり強い魔石は黒精霊の影響が強いから手順踏まないと危ないけど。


 ちなみに精霊の雫、大きな天然石、魔石、小さな天然石の順でお高い。魔石の強さとか、天然石の種類とかでもかわるけど。濁りのない大きな天然石は、純粋に希少価値もあるけど、精霊関係で使い道がなんかあるみたい。


「ハルム……。名前をだされてもピンとこないです、大魔道士!」

どこ?


「エス川の東の海ね。大陸と大陸の間の狭い海よ」

ハウロンが俺の知ってる場所からの位置を教えてくれる。


「ああ! イルカが出るとこ!」

「ピンとこなくても、行ったことはあるのね……」


 視線を逸らされた!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る