第326話 そういう性能でした
「二本ツノのオオトカゲ程度を、ソロで倒すくらいの魔法の手順を教わるのが手取り早いんじゃねぇか?」
レッツェの有難いアドバイスにより、とりあえず火・風・土の魔法を習う。その辺のツノウサギから二本ツノに効くまでの三段階くらい。
まず魔法陣。
「……で、ここで喚ぶ精霊を選別、ここで術者に物理的・精神的危害を加えない縛り、ここで寄ってきたら仕事をするまで逃げられないようにして、ここで……」
まず呪文で魔法陣を発動、精霊が固定されている場合はそのまま進む、精霊を選ぶタイプの陣はそこで呪文――
呪文も魔法陣を発動させる合言葉のような、任意の言葉を当てはめる場合と、精霊に指示する言葉がある。任意で決めた言葉も精霊の興味を引くような音を選んだりと、ちょっとだけルールがある。
「精霊が余計なことしないようにガチガチにしてるのか……」
なんか普通に願いを聞いてくれるので変な感じがする。
「価値観も考え方も違うのよ、精霊の個体によっても違うし。呼び寄せられて怒るのもいるし、悪戯好きなのもいるし、好意で結果がひどかったり、ね。最低でも『術者に危害を加えない』『最後の魔力は残す』の二つは約束させないと」
「なるほど?」
坑道で眼鏡が符を何枚か持ってたのは、ある程度使う魔法ごとに魔法陣を用意してたんだな。
魔法陣があったほうが、全部呪文で指定するよりその場で消費する魔力が少なくて済むし、失敗も少ない。
俺も最初に使ったライトはひどい目潰しだった。それに森に移動して魔法の練習をした時も、家で使った時と比べて、威力にだいぶ差があったのに今はどこで使っても特に過不足を感じない。
エクス棒を手にいれるため、寒い森に行った時は暖炉のダンちゃんに服の中に居てもらって、半分物理で温めてもらったこともあった。それと比べると今は快適にお願いを聞いてもらっている。
「そう言えば何で制限なしで概ね俺の願いは普通に通るんだ?」
レッツェの方を見て聞く。それを魔法と言わないでとハウロンにお願いされた俺だ。
興味津々の視線がレッツェに集まる。
「……お前、俺が何でさっき言わなかったと思ってるんだ?」
半眼のレッツェからほっぺたに教育的指導を食らう。
ああ、まだバラしていない俺の秘密に関わるのか……。気づきませんですみません。いつもより伸びておりますので許して。
「まだ秘密があるのね? ……いいわよ、全部言いなさい。口外しないって誓文入れるわよ」
ヤケクソ気味にハウロンが言う。
すかさずノートがハウロンの前に書類を置く。
「アンタ、用意してたのね……」
「最近は何枚か常備してございます」
続けてサイン用のインク壺と羽ペン。
今にもため息をつきそうな、微妙に疲れた顔でサインをするハウロン。出てくるルゥーディル。
「……まあ、そういうこともありますな」
遠い目の執事。
「ないわよ!!」
「ねぇよ!!!」
ハウロンとディノッソ。
「……誰だ? また新しいの?」
額を押さえながら聞いてくるレッツェ。
「ルゥーディル。大地と静寂、魔法を司ってるから? 普段はうちのリシュのスト……見守りをしてる。ハウロンってチェンジリング?」
今まで出てきたのはチェンジリングの時なんだが。
「違うわ。でも大地の精霊の力はだいぶ取り入れているから――って、どう考えてもアタシ側が出てきた原因じゃないわよね!?」
ハウロンはごついおじいちゃんなのに、時々ソレイユのイメージがかぶる。何でかと思ってたら、涙目なのに聞いたことには混乱しながらも答えてくれるからだな。
「ノート!!」
「何となく予想はしておりました。この場合は誓文が強固になるわけですし、宜しかったかと」
叫ぶディノッソに会釈する執事。範囲内だったらしい。
「で? 俺の頼みが歪まないのって何で?」
「お前……。マイペースが過ぎないか?」
レッツェに聞きたいことを聞いたら、答えとは違うことが返ってきた。
「混乱と混沌には慣れてきた」
「慣れるのはいいけど、収拾つけろよ……」
ため息をつくレッツェ。
「俺の考えってだけで、正しいかどうか分かんねぇけど。助けるために名付けてるのが広がって精霊が好意的になってるってのと、エクス棒のお陰だろ。王の枝ってのは精霊と人間の間を取り持つ、本来そういうもんな上、お前が願ったことも影響してんじゃねぇの?」
「ああ! なんか快適!」
そういえば基本性能が、精霊寄せで、精霊に人間の価値観寄りに働かせて、めでたしめでたしな枝だった。
「お前今、王の枝について、すごく乱雑な理解をしなかったか……?」
「今のレッツェの説明で合点したぞ?」
何の問題もない。
「ちょっと待って、今またアタシの知らない爆弾情報が二つ増えた気がするんだけど!?」
ハウロンが混乱している!
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