第382話 結論
「なんならアタシの精霊を護衛に……」
「その精霊は、わんわんとやらに勝てるのか?」
「……」
ハウロンの提案に疑問で返すレッツェ。そしてふっと目を逸らして黙る大賢者。
「お前、関係ない顔してウズラかじってるけど、話題の中心はお前だからな?」
ディノッソがチーズを口に放り込みながら、半眼で言う。
「この男をよく理解し、神クラスの精霊にも動じぬ。適任なのだが……」
カーンがため息を吐くように言う。
「神クラスの精霊に動じないのは、見えねぇからだよ。俺には遠い存在、歴史上の偉人を様を付けずに呼び捨てにするようなもんだ。近いところにいるアンタたちとは違うっての。あと本当に死ぬからな? 魔物で、あっさり」
カシューナッツをつまみ上げながらレッツェ。
すごいんですよ、
「……明日、船に乗るまで暇なら、昼間はこいつについていってみないか? 全員で。ジーンさえよければだが。俺、明日は奥さんたちが甘い物ハシゴなんだ」
「う、この国の甘い物……」
あの顎の下がきゅっとなって歯が浮くような甘さのハシゴ……。
「明日もエス川の生まれるところ探しだけどいい?」
「いいけど、エスとは会ったんじゃないのか?」
「エスは関係なく、シナモンがとれるところ見たい」
調べれば調べるほどシナモンのとれるところは増えていって、竜の地で竜に守られてるとか、あとエスの地の外側だとかも。さらにシナモンではなく、カシムが混同されてるとか、情報が錯綜しててですね……。
「ああ、あれか。商人がデマ流してる可能性が高いから、見つからなくてもがっくりするなよ?」
「え?」
レッツェに聞き返す俺。レッツェもとれるところ付け加えてたよな?
「わりぃ、そこまで本気で期待してるとは思わなかった。高価なもんで、産地を隠したい時なんかに、わざと抽象的に表現したり、デマを流すんだよ。信じられねぇような内容でも精霊が関わっていて本当ってことはあるが、話がいくつも流れてくるときゃデマなことが多い」
……。
「あー。源流探すのも楽しいぞ?」
ディノッソが言う。
あ、これみんな知ってたパターン!! レッツェが取れるとこ付け加えたのは、デマだってこと前提に増やした感じか! 通りでなんか気のない感じだと……っ!
「せっかく神殿でレリーフ見て来たし、エスの生まれる場所くらいは見る」
「それはアタシも興味があるわ」
「うむ」
カーンとハウロン参戦。
「私はアッシュ様のご用事が。土産話を楽しみにしております」
執事は辞退。副音声は「暑いんでいやです」かな。
そういうわけで、明日の昼間はエス川
「で? 嵐と戦の神の名が幼児語だと当の神はご存じなのか?」
座りなおしてカーンが言う。
「さあ?」
「ちょっと、ジーン、大事なところよ?」
「特に名前に不満がある様子はなかったけど、それが知らないからなのか、精霊の感覚が違うのかが分からない」
俺に分かると思うなよ?
「俺を見るな」
俺以外の全員の視線がレッツェに集まっている。
「そもそも契約してるなら、ジーンが暴れないよう頼めばいいだけなんじゃねぇの?」
ビールを飲みながらレッツェが言う。
「嵐と戦の神に……」
頭が痛そうなカーン。
「知識、知識がない方がいいってこともあるのね……。そんなの無知なる蛮勇くらいかと思っていたのに……」
無知なる蛮勇? バカが勢いで問題解決するとかだろうか。
「そう、そうよね。あんな誓文でルゥーディル様がいらっしゃるんだものね……。力を弱めた古き神々くらい……いえ、やっぱりなしで」
ハウロンがなんかぶつぶつ言ってる。
「とりあえず、明日だ。一体どういう日常を送ればこんなことが起こるのか、その一端が分かるだろう」
カーンが言う。
「どうしても何も、こいつが強大な力を持ってる割に、自覚が少ないまま、精霊が寄って来てるだけな気がするが。おかしいのはその力の利用が、外部に影響を出さないような、ほぼ食い倒れ旅だっていう……」
「ひどいこと言ってないか?」
レッツェを見る俺。
「ひどかねぇよ。表の勇者殿はとうとう敵対国の主要な精霊を狩り始めたらしいぜ?」
「え? 精霊狩り?」
ディノッソに思わず聞き返す。
「そそ」
「精霊狩りは、契約で縛り己のモノとしたり、存在を崩壊させて意思なき精霊に仕立てたところで、守護精霊かその眷属が取り込むことですな」
俺がピンと来なかったのを見てとった、執事が解説してくれた。
「うへぇ」
姉の【支配】もあるしな。姉も気持ち悪ければ、光の玉も気持ち悪い。
「頑張って名付けよう。エスも誘ってみようか」
「どうしてそうなるのよ!」
ハウロンに叫ばれたけど、なるよね?
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