第133話 増える動物
「さっき聞いた限りじゃ、強力な精霊なんだろ? もったいねぇなぁ」
「何の準備もなしに捕らえられる大きさじゃないしな。下手に手を出さない方がいい」
「眠らされたらネズミの餌だわ」
残念そうなディーンにディノッソとシヴァ。
忘れずローザ一派の残していった普通の鉱石も回収。買い集めた分と合わせ、これでしばらく色々作り放題だ。
夜遅くに砦に戻り、ベッドも何もない部屋を借りてみんなで雑魚寝。シヴァとティナはディノッソとエンバクに囲まれているからともかく、アッシュはいいんだろうか。いまさらだが。
「何だろうな、屋根と壁ってありがたかったはずなんだがな」
「魔物に襲われる心配がないんだ、ゆっくり寝ろ」
「いびきはともかく、また蹴らないでくれたまえよ?」
「クリス、蹴るのはディーンとレッツェのどっちだ?」
俺、レッツェ、クリス、ディーンの順で転がっているのでレッツェだったら大問題だ。
「酒飲んでねぇから大丈夫だ」
お前か、ディーン。
翌日、部屋の中で火を焚くわけにもいかず冷たい朝食を済ませて、出発する。目が覚めたらディーンの足がクリスに乗ってたけど、こっちには害がなかったのでよしとする。
「ルタ、お待たせ」
ぶるるるっと鼻を鳴らしながらすり寄せるルタをなでて馬具をつける。
なんか、馬房の
なんか疲弊している
三本ツノが大量に湧いていたことは、採取した角を見せつつ報告。定期的に様子を見に行くそうだ。たくさん湧いてたおかげでこちらは予定していた日数をかけずに魔鉱石がそろったのでラッキーだったのだけど、砦の人は大変そうだった。
そういうわけでカヌムに帰宅。
「ルタ、ちょっと飼える場所を用意するまで大人しくしてろよ?」
ルタは譲ってもらいました。
だが、馬場とかいろいろ準備ができるまではこのまま貸し馬屋に預かってもらう。
「お前、本当に動物に甘いな」
「裏表なく懐いてくれるし」
ディーンに呆れた声で言われたが、好意には好意で返したい。まだ人の好意っぽいものは裏を勘ぐってしまって身構えるけど。
屋台を覗いて、みんなで焼き串をかじりながら家に帰る。飯屋よりさすがに風呂だ。
「あ、大福」
『灰狐の背』通りから見える貸家の二階に白い猫が入ってゆくのが見えた。
「……早うございますね」
「あら」
「マジかよ」
「ジーンの言うことを聞いたらしい」
俺の言葉と視線に執事、シヴァ、ディノッソ、アッシュ。
「ダイフク?」
「何だ?」
「どうしたのかね?」
見えない組のレッツェ、ディーン、クリス。
「にゃんこ!」
「なに?」
「なにかいたー?」
どうやらエンに精霊が見えることは確定。他の二人はどうだろ? 入るところが見えなかったのか、見なかったのか微妙なところ。
「ちょっと待て。にゃんこってあれか? 坑道にいたやつか? まさか俺の部屋にいるんじゃないだろうな?」
レッツェが問い詰めてくる。
「あれだ。ベッドマットと布団持ってくから」
「おま……っ! 俺が寝かされるの前提じゃねぇかよ!」
レッツェはサラから情報収集したらしく、ホワイルの能力をよく知っている様子。
「自分ちの二階で飼え、二階で。三階でもいいけど!」
「留守番させるの可哀想だし、家にはリシュがいるし。大丈夫、箱に入れればおとなしいから!」
「ノート……?」
「時効でございます。その場で叱りませんと」
レッツェと言い争ってたらディノッソとノートが何かやりとりをしている。
「こう、精霊って番地理解してるんだ……?」
「認識を改めよう!」
「うむ」
見えないからかピンと来てないらしいディーンに、相変わらずのクリスとアッシュ。
「とりあえず帰ってお風呂に入ってゆっくりしてから話したら?」
「はいはい」
「あ、こら! 引き取ってけ!」
シヴァの言葉に素直に家に続く路地に行こうとしたら、レッツェに首根っこを掴まれて止められた。
「強い精霊なのに」
「不相応なの! 制御できないものには手を出さない主義!」
仕方がないのでレッツェに手伝ってもらったベッドマットを据えてある三階の部屋に引き取ることにした。
ベッドにおとなしく丸まったホワイルは見れば見るほど大福。ちょっとこねさせてもらってもいいだろうか?
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