第574話 話そびれていた白い巨人
「あ。」
唐突に思い出した。
「なんだ?」
「何よ?」
ディノッソとハウロン。
「妙なことなら後にしとけ」
「大賢者の許容量があやしゅうございます」
レッツェと執事。
その言い方、なんかハウロンがメモリ不足のポンコツに聞こえるんだけど。
「知識分、頭ん中に引き出しがあるとする。ハウロンはそれが人よりゃ大量だ、きちんと整理されてるモンが大部分なのに、お前が何かすると全部その引き出しがひっくり返るんだよ」
ちょっとレッツェ、そろそろ俺の頭の中を覗くのやめて?
「顔に出過ぎだ」
「私の言葉は大賢者の能力を疑うものではございません」
レッツェと執事、二人がかりで俺の考えを読んでくるのやめてください。
「ハウロンが興味ある分野だからきっと大丈夫?」
「疑問系やめてちょうだい!?」
ハウロンが抗議してくるが、俺は二人と違って
「何を止めてるの? いえ、ニイ様を止めたいのはわかるけれど」
ほんの少し不安そうにこっちのやりとりを見ているソレイユ。
「何を止めたいんだ?」
その隣でキールが言う。
そう、カヌムの友人たちはいきなり俺を止めてくるんですよ。
「じゃあ後で――」
「いいわよ、気になるじゃない」
大抵止められたら大人しくやめておいた方が騒ぎにならないんだけど、当のハウロンが希望。
「好奇心猫を殺す」
と、ディノッソの肩で猫船長が申しております。猫だけに。
「じゃあ、失礼して。『アミジンの女神、もしかしてあなたって、ルフの時代からいる?』」
石柱から浮き出てきている女神に聞く。
『いいや。でもそうだ。私はもっと大きなもののカケラ。変質もすれば、統合もされる。おそらく私のようなモノは他にもいる』
狩りの女神と白い女神の口が交互に言葉を紡ぐ。
「『なるほど、ありがとう』」
どこかに眠る母なる精霊、その
「なんだったの? ルフって聞き取れたけれど」
ハウロンが聞いてくる。
「ルフの時代からいるのか聞いたら、そうでもあるし、そうでもないって。白き巨人が探している母なる精霊の今の姿、もしくは現れているカケラ」
「ちょっと! 夜の砂漠を彷徨う白き巨人と会ってるの!? しかも、やっぱり隠された女神の一角なの!?」
ハウロンが近い。
「ああ、砂漠でウォーターバイクならぬサンドバイクみたいな体験させてもらった」
疑問系の二つのツッコミがあった場合、どっちに答えればいいのか。
「やめて、乗り物みたいに言わないで! ティルドナイ王の時代から砂漠で伝説的な精霊なのよ!?」
両手で顔を覆う仕草をみせるハウロン。大賢者、オーバージャスチャー。
「お前、またなんか変な精霊引っ掛けてたのか?」
呆れたようなレッツェの声音。
「引っ掛けたつもりはなかったんだけど。カーンに昔砂漠の真ん中にあった水の都トゥアレグの話を聞いたことあって、そこ探してる時に会った白い巨人の精霊。ちなみに月光の精霊」
けっこう前の話なので時効です。
「ちょっと! 彷徨う白き巨人はなんの精霊か正体不明なのよ! 言い当てないで!?」
手を顔から離して、俺をばっと見てくるハウロン。
当てるもなにも、知ってることなので?
「聞いてねぇ精霊といっぱいあってそうだな」
「そういう意味では、
ディノッソと執事。
「全部把握しようとしてたらきりないだろ? あとどう考えても命が危ねぇ」
レッツェ。
「付き合い短いアタシが聞いただけでもヤバい相手とヤバい数よ! それに絶対白い巨人と同じく、他にも会ったことを黙ってる精霊いるでしょう!? 精霊全部一絡げにしてるでしょう!?」
ハウロンが荒ぶっている。
カーンに紹介された遺跡で、砂漠関連というかカーンの時代関連の精霊――ハウロン的にはおさえておきたい話だったか?
「紹介する?」
「紹介って、呼べば来るってことよね!? 爆弾発言やめてちょうだい!」
遠慮された。
「それにしても、ここの女神は隠されたわけじゃ……いや、隠されたのか?」
自分の意思ではなく、崩れて陸から海に滑り落ちた。
土偶ちゃんは自分で隠れてる気がするけど、あっちも水の中なんだよな。白き巨人セナルファールが連れて行ってくれた都市も水の都だ。
「ちょっと明らかに話を逸らしてる! ああもう、一般的に時代の名になるような力を持った精霊は、大抵勇者や『王の枝』、あるいはその両方が関わっているの。どっちも力を失った時には大きな影響を受けるわ。特に『王の枝』に関わる精霊は、黒くなることを含めて、変質する。でも、隠されるというのは、勇者関連でのほうが多いわ」
さすが大賢者、疑問には答えてくれる。そして長文説明してくれるうちに落ち着くのもいつも通り。
なんかソレイユが死んだ目でハウロンを見てるし、チェンジリング二人は興味なさそうだけど。
「ソレイユ、この女神の謎もちょっと関わると思うから」
「……ここを神殿にして、お布施をいただいても?」
「アミジンの人たちからOKもらったらな」
途端にハウロンの話を輝く目で聞き始めるソレイユ。人を呼び込むには新しいものか古いもの、どっちかあった方が呼びやすいよね。
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