第622話 ランタン

 無事透明な宝石をもらってきた。【鑑定】さん曰く、アクロアイトだそうだ。トルマリンのカラーレス、トルマリンって熱すると電気を帯びるんだっけ?


 占い師の使う水晶玉くらい大きいし、風の精霊とちょっとだけ火の精霊の影響を受けてる。条件的にはバッチリです。


 作業部屋で球体に向かい色々確認。さてこれの中を削って、ドームを……。


 ……。


 頭の中で、ソレイユがものすごい悲鳴を上げ始めた。いやでもね? そのために拾ってきたんだしね?


 あ、血涙。


 でも使ってこそだと思うんですよ? え、宝石は飾っておけって? いかん。イマジナリーソレイユが俺の作業の邪魔をする。


 だめだこれ、リアル本人にバレたら絶対同じことになる。こう、なんとか外側だけペロンと取れないものか。


 色々考えたあげく、【転移】を使うことにする。


 ただ、一つのものの中身だけってのができなくて、ちょっとずつ削って、球体の中に球体を作って、それから。先ず、精霊鉄の道具を作って、カリカリ削っていく中で道具の形を変えながら気長に頑張った。


 最後は道具の形を崩して精霊鉄を流れ出して終了。中の球体を【転移】!


 できたのは少々不恰好な球体と、4ミリくらいの厚さのドーム。よし、これでソレイユが泣かず、俺の目的も達成。


 ドームの中を研磨して綺麗につるんとさせる。――ついでに中身の方も、綺麗に整えて証拠隠滅しとこう。その前にひとまわり小さいドーム作っとくか。


 とりあえず今日はここまで。リシュと遊んで、ご飯!


 メカジキのガーリックしょうゆバターソテー。バターで表面を香ばしく焼いて――ふっくら柔らかいメカジキにニンニク醤油の香り。


 さっぱり目のドレッシングで、ベビーリーフとわかめのサラダ。ごはんと味噌汁。


厚めのメカジキはしっとりやわらか。バター醤油がサラダともごはんともとてもよく合う。メカジキを大きくしたんで、ちょっとくどくなってきたかな? ってところでレモンをかけるのもいい。


 翌日は基本のフレーム。持ち運び前提なのでランタン型にすることは決定している。


 オイル入れる部分に魔石を入れられるようにして、タンクの上には灯心とかじゃなくって、魔法陣。精霊の居心地をよくするためのもの、パウロルおじいちゃんに教えてもらった霊を退散させるものの二つ。


 後者は幽霊避けにもなるんだけど、滅びの国は幽霊がいすぎて遭遇しないのは無理な気がする。一応浄化するのもつけとこうかな? あそこのは王の枝の黒精霊に絡め取られてて無理だけど、そのうち必要になるかもしれないし。


 ああ、ドームの中に入ってくれた精霊を守るためにも、ランタン自体に強化とか守護とか。


 元になる金属は何にしようか? ここは精霊銀かな? 


 銀は精神的せいれいてきな影響を与える金属、鉄は物理的に影響を与える金属。精霊の認識ではそんな感じ。人間もかな? 金の方は物理的にも精神的にもとても安定した金属で、防具など守ることに使われることが多いんだって。


 精霊銀のプレートに魔法陣をいくつか先に書き出す。何かあっても簡単に消えないように、彫りながらインクを流し込むような感じで。


 アクロアイトのドームにも特殊なインクで透明な魔法陣を一つ。これは一番強烈な浄化の魔法。パウロルおじいちゃんの魔法陣をアレンジして、もっとわかりやすく精霊に対してのお願いごとが書いてある。


 出来上がった魔法陣のプレートを組み合わせるよう、精霊銀を足して水銀のように流れてランタンの形に整えてもらう。


 オイルを入れるところに、親指の先くらいの魔石をいくつか詰める。魔法陣のプレートを蓋にして、その上にアクロアイトのドーム。ドームに丸く空いた穴は、魔法陣の蓋にピッタリハマる。つまみを持ち上げると、ドームが斜めに持ち上がって、蓋も外せるし、ドームの穴が精霊の入り口になる。


 よしよし。形的にはいい感じ。


 ひとまわり小さなドームで、同じようにランタンをつくる。少しだけ丸みを帯びたデザイン、魔法陣も変える。


 ……よし、こっちもいい感じ。


 ハウロンかパウロルおじいちゃんに採点してもらって、これでよければ滅びの国に再チャレンジしよう。魔法陣改変しちゃったし、ハウロンに見てもらおうかな。


 精霊との相性というか精霊に好かれてないと発動しないタイプなんで、精霊の見えないパウロルおじいちゃんに見せて、切ない感じになっても困るし。おじいちゃん、精霊に愛されてるけどね。座布団ずっと尻の下にいるし。


 お直し用の精霊銀と、魔法陣を描くための道具を持って、砂漠へ【転移】。


 広いからついでに後でドラゴンの解体も――って、やっぱり気温低いところでやろう。干し肉になってしまう。また北の大地かな。


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