第466話 フグ爆弾
お弁当箱に料理を詰める。俺が【転移】で行ける東の端は、今のところユキヒョウの住む場所周辺。
でもちょっと北寄りすぎるよね? 多分、気候が似たところに似た文化が
ナルアディードはドラゴンのいる南の地域や、霧を超えた西域、南を経由するけど東域とも交易があったはず。一応、航路をたどろうかな? 人のいる場所にいる精霊ならば、意思の疎通が楽な可能性が高い。
日本酒の小瓶を【収納】に入れて、準備完了。
そういうわけでやってまいりました、ナルアディード。最初に買うのは海路図です。神々からもらった地図があるからスルーしてたけど、人の痕跡をたどるなら人の作った地図が必要だよね。
バカ高い上に、正確とはいえないんだけど。すでにエス付近のマッピング、俺の地図と違うし。
なにこの角に描かれてる海の中の巨大なタコ? いるの? 魔物? 食べられるの? ダイオウイカとかゴムみたいで美味しくないって聞いたことあるけど。
一応の下調べをしたところで、エス川の東にある海岸に【転移】。随分前にカメと戦う羽目になった海岸だ。確かあの時は鼈甲を手に入れたんだったな……。安産祈願だか子宝祈願の意味があることを知らず、うっかりシヴァに渡しそうになった記憶が蘇る。
ここを南下して、陸の端についたら海を見ながら東に移動する予定。海沿いに街があるはずなんだ。お高い地図は、海沿い以外はだいぶおおらかな書き方されてて、どうなってるかさっぱりだけど。
エス川を遡った時と同じく、見たことのない魔物とはとりあえず一度戦ってみながら、精霊に名付け、【転移】をする。
今回、精霊への確認も怠らない。魔の森の魔物と違って、即死とか毒の攻撃をしてくる奴がいる可能性がある。
青とエメラルドグリーンの海、珊瑚礁。そしてイルカの魔物。
ちょ、フグ、フグを投げてくるのをやめて下さい! 鼻先? 口先? とにかく突いて海の中から狙ってくる。そっちからは届かないだろう、あっはーみたいな顔をするのやめろ! 知能高いなこのやろう。
棘を持った爆発するフグ。地面に着弾しても爆発までしばらく間があることがあるんで、多分時間式なのかな?
対抗手段、ここは魔法か。魔法だな?
「こうだ!」
魔法のバットでフグを打ち返す。
いや、あれ? なんか違う。
イルカの魔物の近くで爆発するフグ。二匹ほど力なくぷかっと浮かぶイルカの魔物。それを丸く囲んで見ている仲間のイルカの魔物。
浮かんだイルカからこっちに顔を向け、やる気のイルカ。降り注ぐフグ。打ち返す俺。ノーコンのイルカがいるのか、俺から少し離れた場所に着弾するフグが爆発する中、とにかく打ち返す。
バットはバットの形状をしてるけど、木や金属でできてるわけじゃない。細かい光の何かだ。俺が魔力を放出している間は消えないのかな? 色々謎なんで後でハウロンに聞こう。
それにしてもイルカ! お前ら爆発までの時間を数えてからフグを投げるまでの知能はないようだな! ふははは! いや、鼻先で保持できないからかもしれないけど。こっちはイルカを狙って打ち返す余裕が出てきたぞ!
――なんか違う、違うけど今更切り替えられない……っ!
そういうわけで、たくさんイルカの魔物を仕留めました。海から引き上げたら、下半身(?)に硬そうな鱗があったんで俺の知ってるイルカじゃなかったけど。
魔物だからツノはあるわ、目の下は黒くってイボ付きで皺が寄ってるみたいな状態なので、全体像がイルカじゃない。海から顔だけ出してた時はちょっとイルカっぽかったんだけど。
ナルアディードで聞いたイルカとこいつらが同じものなら、取れる油を革の
ところでフグがいないんだけど、全部爆発したの? それともイルカの魔法だったの? どっちだ。
海水で手を洗い、岩陰で海を見ながら昼。
酢飯に胡麻と紅生姜が入ったお稲荷さん、じゅわっとほんのり甘いお揚げ。黄色い厚焼き卵は出汁、うちの鶏の卵は美味しい。
小ぶりの
冷えた日本酒を少々。酒の味はまだよくわからないけど、雰囲気ってあるよね……。というか、喉を焼くみたいなんだけど、度数高過ぎか!
真ん中を赤紫蘇でピンクに染めた酢蓮と、オレンジ色の車海老の酢の物。甘鯛の塩焼きを一切れ、生麩を揚げたもの、インゲンの胡麻和え。小さな新ジャガを焼いたもの。
つい、日本的な風景を期待して和食のお弁当にしたけど、1日目はまだエスの文化圏から抜け出せてないね! 熱いし! 見える植物は椰子っぽいし!
珊瑚礁が中に見えるエメラルドグリーンの海は綺麗だけど、気が早過ぎだった。
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