第42話 ディノッソ家
オオトカゲの皮を
今回は藍染めを施した革に、
――青色失敗したからだろうとか言わないでください。ライトノベルの主人公が黒コートが定番なのが大変よく理解できた。まだらになったところが目立たないように色を濃くしてったらほぼ黒です。
オオトカゲの二本ツノの革は三本ツノのものに比べてあまり伸びないけど、こっちの方が軽かったので
他に今から用意しないと間に合わないのは、料理に使うドライトマト、干し椎茸を初めとした干し野菜やドライフルーツ。砂糖漬けのアプリコット、干し貝柱、燻製ベーコン、チーズ。
甘いものも欲しいからブランデーケーキとキャラメルで固めたナッツバーを作るつもりでいる。こっちは出発する直前に作るので今はまだ計画だけ。
準備を進めながら早朝にリシュと散歩、朝ごはん後に森で精霊とのあははうふふの追いかけっこ。森で大きな精霊を見つけ、疲れた時は昼までゴロゴロ。空いた時間は生産、夜は家で精霊の名付け。
飽きたら工房に顔を出したり、冒険者か商業ギルドに顔を出して販売がてら人と話すという生活が続く。
「ディノッソ、暇か?」
「よく来たな」
今日はディノッソ家に遊びに来た。他と違ってディノッソ家の人たちは挨拶にハグしてくるのでハグし返す。
ディノッソと、黒髪の美人な奥さん、可愛い女の子、双子の息子。子どもが六、七人いるのが普通らしいがディノッソ家は今のところ三人だ。子ども三人はほっぺたへのチュー付き。
「これお土産」
遊びに来ると歓迎していろいろ出してくれるが、ディノッソ家は農家としては裕福なほうではあるものの余裕があるわけではない。
秋は俺が消費してしまうものの代わりに薪割とか収穫の手伝いなどの労働をしたが、冬場でそれはできない。とりあえず現物返しということで、食べ物の差し入れは欠かせない。
白色雁を五羽、ワインの入った皮袋を一つ、フルーツケーキを一本。塩と砂糖を差し入れることもあるが、今回はウサギの毛皮。消耗品はともかく、あまり高い形の残るものを差し入れてしまうと、徴税官にばれた時が怖いので。
薪もだいぶ使わせてしまうけど、こっちは秋口に俺とディノッソで競うように割りまくったので大丈夫なはず。
「いつも悪いね」
「ありがとうございます」
ニコニコと受け取るディノッソだが、あっという間に奥さんに奪われる。特に酒へのガードが堅い奥さん。
「ああ、なんと儚い……」
芝居がかって残念そうな顔をして左右に顔を振るディノッソ。
奥さんは完全スルーで、子供たちもフルーツケーキに手を出そうと奥さんを取り囲んで嬉しそうに騒いでいるためスルー。
「……」
「何やってたんだ?」
「豆
さやごと干してカラカラになった状態の豆を、子供たちと一緒に剥いていたらしい。外は寒いし大体暖炉のそばでできるて仕事をしているか、農具を直しているかのようだ。
子供達の椅子を一つ借りて、俺も豆剥きに参加する。軽口を叩きながら剥いていると、子供達の手をかいくぐってフルーツケーキが乗せられた木皿が届けられた。
「はい、お疲れ様あなた。ジーン、ありがとう」
ぞんざいに扱いながらも奥さんはディノッソに色々なものを一番に差し出す。
仲のいい夫婦で、仲のいい家族。時々お邪魔しては、こちらでの農業関係のことを教えてもらったり、こうして普通の家族の雰囲気を味わう。俺の家族はどう考えても普通じゃなかったので軌道修正。
「ジーン、ありがと〜!」
座っている俺に抱きついてくるティナ、ディノッソ家長女八歳。
「ケーキおいしい〜!」
「おいし〜い!」
双子も奥さんも笑顔。
「あああ!! お父さんは許しませんよ!」
ディノッソだけが慌てているのだが、これは前回きた時にティナが俺のお嫁さんになる宣言したせいだ。
「あら、いいじゃない。生活力あるし、幸せになれるわ〜」
「ティナは大きくなったら俺のお嫁さんになるって……、なるって……っ!」
「往生際が悪いわよ」
「いや、俺もまだ結婚する気はさらさらないし」
何をどう考えても守備範囲外だし。
「まだだと!? 娘の何が気に入らないんだ!」
奥さんの不穏で前向きな肯定に釘を刺したらディノッソが絡んできた。
「娘をどこにもやりたくないんじゃなかったのか。話をややこしくするな!」
「僕もジーンの家にお嫁に行く〜」
「じゃあ僕も〜」
明らかにおやつにつられた双子も参戦して抱きついてくる。なんだこの拘束具。
「だったらいっそ俺も行く!」
「いらん!」
子供達ごと抱きつこうとするディノッソを足で止める。
今日はなかなかカオスで、奥さんがずっと笑ってた。
帰りに干したトウモロコシの粉をもらった。こっちのトウモロコシは八列しかなくって変な感じなんだが、味はどうなのかな?
試食、試食。
玉ねぎのみじん切りを炒めて、ニンニクとマッシュルームのみじん切りも投入。鶏ガラスープを加えて沸騰させたら、トウモロコシの粉を投入。木べらでかき混ぜながら火を通すと、どろっとしたものが水気をどんどん吸って木べらが重くなる。
そこにバターとチーズ、塩胡椒を入れて混ぜて、バットに伸ばして冷やす。固まったら適当な大きさに切って焼く。
熱いうちに一つ。日本のもののように甘みは強くないけど、トウモロコシって穀物だったんだな〜という味。素朴な味なので、トマトと生ハム、バジルを挟んでさらに幸せ。
うん、これも持ってこう。
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