第630話 好意
さて、お弁当8人分。
とりあえず和風と洋風。こう、気温的にも見た目的にも寒そうなところに行くから、冷えたお弁当じゃなくって温かいのにしよう。
【収納】持ち特権だね。
和風は串を刺した肉巻きおにぎり、おいなりさん。卵焼きにチューリップの唐揚げ、エビフライ、ささみ大葉チーズを春巻きの皮で包んで揚げたやつ。ブロッコリーの塩麹マヨネーズソース、蓮根の甘酢漬け、ツナと枝豆のサラダ。肉スキー用に豚の角煮。
む、ちょっと主食と豚の角煮の味が被る?
肉巻きおにぎりを、筍の混ぜご飯を俵形に握って海苔をくるっと巻いたものに変更。肉巻きは足りない感じだったら出そう。
洋風はどうしよう? みんな飲むよね。こっちはいつもの飲み会メニューでいいか。
パンを2種類、バゲットとドーム型のライ麦パンの薄切り。焼いて、ブルスケッタとカナッペに。ちなみに2つの違いは、表面にオリーブオイルやニンニクを塗るかどうかのようです。
載せる具材は選んでもらえるよう別途用意。パンに載せられるサイズの小さなオムレツ、トマトとバジル、餡子とバター。アボカドディップ、レバーペースト、ジャム。
ピンチョスを何種類か。クリームチーズとサーモン、生ハムとカマンベール、砂肝と焼きネギ、ズッキーニとベーコン。後半二つは熱々、それと温かな野菜スープ。
ガッツリいきたいだろうディーンとディノッソ向けに、肉挟みパンも用意しとこう。アッシュ向けにはフルーツとバナナオムレツ。
新しく作らなくても【収納】にたくさんあるんだけれど、つい作ってしまう。【収納】から出したものは作りたてだとわかってはいるけど、やっぱりなんか時間が経過してる気がするんだよね。俺の持ってる作った記憶が前だから。
食べ物がたくさんあるのはいいことだ、またいつ何時サバイバルに放り込まれることになるとも限らないし。
あ、その場合は【転移】も【収納】も取り上げられるんだろうか。多分、この2つと【縁切】【解放】【勇者殺し】、それと『食料庫』は守護してくれている神々由来ではない気がする。
神々は俺の眷属になってしまったので、その属性や能力由来のものはおそらく大丈夫。いきなり使えなくなるってことはないと思う。
『家』も、こっちの世界にある建材であーじゃないこうーじゃないしたので大丈夫だと思うけど。トイレ、トイレも水を司るイシュと大地を司るルゥーディルとパルがいるから大丈夫。……大丈夫だと思いたい。
――【転移】を失くした時のために、妖精の道をいくつか覚えるか。
作物は『食糧庫』からせっせと移して畑で育ててるんで、大抵の物は確保できると思うんだけど。大豆が育つ土地を探しに行かなきゃ。
まだよくわからないけど、いる。絶対いる。ナミナがナミナと入れ替わっていたり、たくさんの国の興亡に関わっている存在が。メールの人たちが内緒話をする理由の存在が。
敵対するつもりはないんだけど、その存在がこっちをどう思うかわからないし。
考え事しながら料理。大丈夫です、作り過ぎても【収納】に入れとけばいいんです。【収納】便利すぎて失くしたくないんですけど。【収納】って、どんな精霊の力なんだろう?
倉庫の精霊とかいるんだろうか? ちょっと人様の家の倉庫に入らせてもらおうか。メール人の倉庫は特殊だろうし、カーンのとこの宝物庫みたいなのはなんか色々侵入者対策のあれこれの方が目立ってたし……。
いたのかな? 倉庫の精霊。
どちらかというと建物や、荷物についてる精霊が幅を利かせてる気がするな。俺の塔も倉庫ごと青トカゲくんが管理だし。
とりあえずお弁当よし! お弁当は箱に入れてって、テーブル代わりにしよう。蓋もお盆になるし。
ピクニックシートのトカゲ皮よし! これは二枚重ねで間に綿を詰めたもの。なんか俺が行った範囲の『滅びの国』は、灰色の石がゴロゴロしてるというか灰色の石の印象。
島自体、ほとんど灰色の石でできてる? みたいな。あれでどうやって作物育ててたんだろう? 滅びる前ってどんな国だったかちょっと知りたいかな。しかもあの石、湿ってるんだよね。
というわけで、防水仕様のクッションシートです。
幽霊避け用のランタンもOK。一応、アッシュに贈るつもりのものを予備として。あとランタンじゃない魔法陣描いた羊皮紙を数枚――頭の中のハウロンがなんか酸っぱい顔してるから、数十枚に増やしとくか。
「ジーン何してるの?」
魔法陣を描いてたらミシュトが寄ってきた。おそらく作っている魔法陣に光の精霊に力をこめてもらっているためきになったんだろう。
「ほう。我らの眷属の力が必要かえ?」
その証拠にハラルファも来た。
力を込めてもらうと言っても、具体的にはインク壺に手を突っ込んでかき混ぜてもらってるだけだけど。
「『滅びの国』に旅人の石を探しにいくから、幽霊対策に魔法陣描いてるところ」
いつでも発動できるように魔石をくっつけたタイプを作っている。
『滅びの国』は人間に力を貸してくれる普通の精霊はほぼいないと思わないと。それに俺が使うんじゃなくって、主にレッツェ用だし。
「えー。あそこの黒精霊、なんかねっとりしてて嫌〜〜〜」
ミシュトが大袈裟に引く。
「……あれはのう。強く反発はせぬくせに、払ってもいつのまにかまた絡んでくるからのう。地につく足、体に落ちる影にも注意せぬと面倒なことになるぞ。ほれ、少し手伝ってやろう」
そう言って小さな精霊が両腕をつこんでいたインク壺の中に指を突っ込むハラルファ。
「じゃあ私も手伝ってあげる!」
そう言って、俺の用意した羊皮紙に両手を伸ばして「えいっ」とばかりに力を送るミシュト。
「ありがとう」
助かります。
――ん? あれ、これもしかして怒られるやつじゃ? ――まあ、好意でやってくれてるし、安全になるに越したことはないよね? うん。
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