第638話 進行状況
「
ハウロンからの抗議。
「そういえばそうでした」
つい気になって。
「大賢者は、聞いてしまえば早いことも、自分で探ってゆくスタイルなんだね!」
感心したようなクリス。
「聞くべきことは聞くわよ? ただ、ジーンに答えだけ聞いたら、賢者じゃなくって神託者みたいになっちゃうじゃない? 完成された絵を出されても困るわ。アタシ、パズルは自分で完成させたいタイプなの」
ハウロンがクリスに。
やっぱり俺は黙っておいたほうがいいか。俺も聞いただけじゃなく、実際にあちこち調べに行きたい派だし、そこで新しく何か知るのも楽しい。
「ああ、でもすごく楽しいのよ? ジーンは、気づかなかったパズルの存在そのものとか、失くしたピースを教えてくれるから」
ウインクしてくるハウロン。
調べることが楽しくなくちゃ、賢者なんてやってないよね。俺もエクス棒片手にもっとあちこち行こう。
「楽しそうで何よりだが、心臓発作おこさねぇようにな」
ワインを飲みながらディノッソ。
「カーン殿の国は順調か?」
「ええ、お陰様で。ティルドナイ王への忠誠や畏敬の念は、移住した者たちの中でとても高いもの。それに神々の見守る地ということで、旱魃や嵐に飲まれることなく、地に働きかければ働きかけただけ成果が出るのがわかっているもの。やる気が違うわ」
アッシュの問いにハウロンが答える。
「
これは俺に対しての答え。
「楽しみにしてる」
日本の米とは種類が違う、粘り気の少ないやつなんで合う料理はチャーハンとかかな?
なんかこう、バナナの葉っぱで包む蒸し料理とか作ってみたいよね。楽しみ。バナナが二年ほどで収穫できるんで、バナナも頼んでる。
今は色々植えてみて、土地と気候にあった農作物を検討中。昔より色々種類が増えてるからね、というか俺が増やしたからね!
住人の食生活の基本になるものか、交易的に儲けが出るものか、手探り中。
俺としては特定の農産物に偏ってほしくない。神々の祝福があるとはいえ、何か変動があって農作物全滅とか怖いし。色々育ててれば何かは残ると思う。そうすると効率悪くて儲からないんだろうけど。
その辺は俺の口出すところじゃないので、代わりにせっせといろんな苗を届けている。アミジンの方でも色々作り始めたし、タリアのトマトは順調だし。
タリアは旱魃真っ只中で、トマト植えて助かったせいで、なんか俺の領地以外もトマト流行りなんだけど。旱魃の影響は緩やかに抜けてきてるし、ロメインレタスをちょっと混ぜてもいいかなって。
葉っぱ食べたい葉っぱ。
「カーンの国って肉はないのか、肉。豚とか!」
肉をかじりながらディーンが聞く。
俺が葉っぱのことを考えていたら、ディーンは肉のことを考えてた。肉はリクエストされる前に出してある。
ああでも、建国のお祭りの時の豚の丸焼きの料理美味しかったな。
「山羊と羊を飼い始めたわよ、羊毛も取れるし。豚は餌の価値と1頭分の肉の価値が釣り合わないわ」
豚は雑食、穀物を食べる動物。牛や羊、山羊は草を食べて育つんで人間と食べ物が被らない。木の芽を食ってしまうのは困るが、草地が広がっていれば餌はなんとかなる動物だ。
「ジーンのおかげでアミジンと『青の精霊島』との取引もばっちりよ。キャプテン・ゴートが海の上は引き受けてくれているし、川はソレイユ嬢が手配してくれたわ。川船屋は、落ち着いたら
嬉しそうにハウロン。
「俺は顔繋ぎだけだけど、うまく行ってて何よりです」
ハウロンは、ソレイユ嬢のためにも、早く収益が上がる商品を作れるようにならなくちゃ、張り切ってるし、ソレイユはソレイユで、『王の枝』のある国との独占取引! 先行投資! と燃えていたのでwin winの関係だろう。本当何より。
「楽しそうで何よりでございます」
「生き生きしてんなぁ」
ハウロンを見て執事とディノッソ。
「何か手伝えることがあればいいのだが」
「ありがと。ここでこうして一緒に飲んでくれるだけで充分よ、苦労も多いけれど、自分が今楽しいんだって自覚できるもの」
どこまでも真面目なアッシュに笑顔を向けるハウロン。
「ジーンをちゃんとこっちに捕まえといてくれたら、国どころか世界にとっての大功績よ」
大賢者、本日二回目のウィンクをアッシュに飛ばす。
「む?」
眉間に皺のアッシュ。
「うん?」
俺はちゃんとここにいますよ?
あ。俺が精霊側にいっちゃうことを心配されてるのか!
「人生今が一番楽しいし、アッシュもみんなも側にいる方が断然いい」
「うむ。私も家を出て、ジーンと出会ってからの方が楽しいようだ」
難しい顔をしているけれど、アッシュも楽しいなら何より。
「ま、ジーンとアッシュはいつも通りでいいってことだな」
レッツェが口に切り分けた肉を放り込みながら言う。
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