第15話 再会2

 ウサギを解体というか、ツノを取り魔石の有無を確かめ袋に収めるディーン。冒険者ギルドのほうなら、ツノを持って行けば討伐の報酬がでる。


「ウサギも持っていくのか?」

「二羽は昼飯、あとは奥に持ってって熊や狼の餌にする。置きっ放しだと浅い場所ここに出て来ちまうからな」

「なるほど」


「血の匂いに熊やら狼が寄ってくる、倒す自信がない時はその場で埋めちまうか燃やしちまうんだ」

今まで【収納】に全部詰めてた俺です。そうか、今日は家に転移して昼飯ができないのか。


 無人島での恐怖があるのでちゃんと水と塩、砂糖は持ち歩いているのでセーフ、しかも鞄と【収納】の両方に。【収納】には普通に食事もある程度詰めてあるがそれを出すわけにもいかないので、とりあえず俺も一羽狩っておこう。


 一人で偏った進み方してるんで、ディーンの話は勉強になる。


 他にも魔物の追い方とか森の進み方とか色々教えてもらった。うん、やっぱり先達がいるときは教えてもらうのが一番だな。


 猿の魔物にも初めて遭遇。人里に現れては人間の子供を攫って食べたり、その行動からとても嫌がられる魔物だ。だが集団でなければ力もそう強くない。


「あれだ、あの葉っぱに黄色い縁取りがある草がキンカ草っつて、金持ちが飲む酒の匂い付けに使われるバカみたいな草だ」


どうやら目的地に着いたよいだ。


「匂い……美味くなるのか?」

俺の問いにさあ?とばかりに肩をすくめてみせるディーン。


 ちょっと嗅いでみたけど青臭いような土臭いような……


「俺はいらんな」

「俺もいらねぇ。相手は金持ちだし心置きなくふっかけられっけどな」

薬の材料とかだと金持ちだけ治るのかとか、葛藤ありそうだけど、これはなんか馬鹿な金持ちから巻き上げる系だな。


 俺ももし食料庫がなくて、米とかあったら大金出しても欲しい気がするんで、これはウィンウィンなのか。


 生えてこなくなると困るので半分は残す。キンカ草は地面が凍る冬はさすがに生えないけどそれ以外は年中新芽を出す。


 その中でも春の新しい株と、この時期の匂いの強い株がお高いそう。なお、キンカ草は金貨草で正式名称は別にある。完全に金目の草扱いだな。


 【鑑定】の結果、ギフチョウ草と言って蝶が媒介する黄斑病とかいうのに効くらしい。二、三本は売らずにレシピを調べて薬を作るか。料理と違って一度調べるなり作るなりしないと鑑定結果にレシピが出ない。


 昼の準備は川辺で。ディーンが焚き火用に風よけの石を積んだり兎の処理やらをしている間に俺は薪を調達しに行く。


 薪は乾いた倒木を適当に切って担いで持っていけば終了。


「おおう? あんた本当におおざっぱなんだな」

「細かくしたら運ぶの面倒だろう」

俺だって薪の大きさくらいは把握している。無人島生活で火熾してたし!


 とりあえず皮を薄く削って火口ほくちにする。後は小さいサイズから大き目まで適当に切るだけだ。


 ここもそばに薬草が生えているので、肉の様子を見ながら採取。ある程度焼けたらディーンが適当な大きさに切り分けて、また焼く。丸焼きなのかと思ったけど、生焼けは怖いしこれでいいのだろう。


 ウサギは焼きすぎるとパサパサになるし、独特の匂いも気になる。焼き加減が難しい。


 真剣に焼き加減を見ていたら、ディーンが剣を手に取った。


「む……。すまん驚かせたか」

「ん?」

熊が出たのかと思ったら獅子だった。違うレオン、じゃないレオラだ。


「なんでこんなところに?」

「うむ、熊を狩りに。今は水を汲みに来た」


 いや、聞きたいのはそこじゃないんだが。まあ、逃亡中ならば、ディーンがいる前で言わないか。これは名前も呼んじゃまずいのかな?


「知り合いか?」

「ああ」

「アッシュという、よろしく頼む」

「ディーンだ」


 アッシュがこちらに目配せしてきた、名前を出さなかったのは正解だったようだとほっとする。偽名は髪の色からかな? 日本で言う髪色のアッシュとは違うけど、綺麗な青みがかった灰色アッシュだ。相変わらず顔が怖いけど。


「あの時は案内が途中になってすまなかった。ポーションの代金は必ず」

「気にしなくていい。こっちこそ怪我してるのに案内させて悪かったな」

「いや……」

「ちょうど焼けたところだ、食ってったらどうだ?」

謝罪合戦になりそうなところをディーンがアッシュを昼に誘う。


 肉はちょっと焼きすぎた。


「熊を狩れるならポーションの代金なんかすぐだろ?」

「いや、宿代が少々きつくてな。さすが小さいが人の多い町だ、部屋の取り合いが激しい」

アッシュの言葉に内心首をかしげる俺。取り合いをした記憶がないが……。


「ん〜? 一体どんなとこに居んだよ?」

ディーンって人見知りしないな、と思いながら新たな肉を焼く俺。次回は香草も持ってこよう。


「いや、ベッドと机があるだけだが……。日に金貨一枚はなかなかきつくてな」

「……って、ぼったくられてるだろうそれ」

レオンの話に突っ込まずには居られなかった。


「よくねぇ宿に引っかかったのは間違いねぇけど、なんで気づかないかな?」

ディーンの言う通り、こっちの世界が浅い俺でさえ気づく。


「ギルドの紹介だが?」

「……」

「……」


 話を聞いたらピンク頭からの紹介だった。思わず半眼でディーンを見る。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る