第484話 破壊。
ドラゴンの牙やら魔石やら一式麻袋に持って、広いとこに来ました。
でもこのドラゴン、城の広場に入りきらなくって、お尻でチャールズが頑張った周囲の庭を壊しました。
俺のせいじゃないです。塔から出たら、すでに着地して待ち受けてたんです。広いとこって、お隣の無人島とかのつもりだったんです。
風の精霊がいるから飛んでる時は、巨体に比べて重さを感じさせないんだけど、地面に着いたらダメだね。広場に敷かれた石畳にヒビがいってる、ヒビが! 体が触れてる防犯タイルが、あちこちであふんあふん言ってるし、カオスすぎる。風の精霊お仕事継続お願いします。
「く……精霊剣さえあれば、少しは足止めのお役に立てたものを……っ!」
警邏用の槍を構えて、衛兵を後ろに従えドラゴンの前に立つ元剣聖。
名前は覚えてません。あと衛兵じゃなくって警備のおっさんのはずだ。
「うわー、うわー。でっかい! 倒すのは無理そうだけど、鱗一枚ひっぺがして逃げるくらいなら……いくらくらいになるかな……」
マールゥ。
「一体何が望みなのです……っ!」
衛兵の後ろ、キールとファラミアに守られながら、ドラゴンと頑張って意思の疎通を図ろうとしているソレイユ。
『恐るならば、恐るならば出て来ずともいいものを。邪魔でかなわぬ』
しゅーしゅー言ってるドラゴン。
チェンジリングも普通の人もたくさん集まってる。
「我が君……」
いつの間にか斜め後ろにいるアウロ。
びっくりするからやめてください。
「あー。このドラゴンのことは気にしなくていいぞ。色々壊して悪いな」
俺の金でできてるものだが、頑張って作ってくれたものだ。
あふん防犯はこのさい入れ替えて欲しいけど。
『ちょっとここも狭いから。西の大きめの無人島で頼む』
『わかった。わかったとも』
素直に答えて離陸。――そのさいに尻尾がぼずっと城壁に当たって崩れた。あー、あー。
「……ごめん。片付けと修理頼む」
そう言ってもう一度塔の中に引っ込む。
絶対来るだろうアウロに一言残して移動するつもりだったんだけど。あわよくばドラゴンに乗って。
扉を閉めて【転移】。
白い岩の島、申し訳程度に細くくねった木がぽつぽつと生えている。俺の島と同じくらいで、平たいところも広いんだけど、土がないんだよね、ここ。
そしてドラゴンがいない。どこまで行ったの!?
『ちょっとさっきこのへんにきたドラゴン呼んできてくれ』
仕方がないので麻袋を開けて、袋の口を西に向けてばふばふと煽りながら精霊に頼む。
精霊は了解! とでもいうように敬礼して飛んでゆく。行動範囲が広いですドラゴン、いや、大きめの無人島が大きめ判定もらえなかったのかな?
あ、来た。
『すまんな。うまく伝わらなくって』
『ドラゴンと人間の感覚は違う。感覚が違うのだ、仕方がない』
着地してきたドラゴン。その衝撃で少し岩が崩れてカラカラと海に落ちる。
『まず最初に説明しとくけど、これは黒いドラゴンの牙と外殻、あと魔石』
並べながら説明。
『うむ。そのような気配がする。そのような気配だ』
『で、貴方と似た、オレンジ色したドラゴンが噛み合って相打ちしてた。ちなみにこちらです』
少し下がってオレンジ色のドラゴンの死体を出す。がっつり首に牙の痕があるし、俺が何かしたとは思われないだろう。ただ、体の持ち逃げ犯と思われるだろうけど。
『おお! 我が子……っ。私の子……っ』
声を震わせて、横たえられたオレンジ色のドラゴンに縋りつき――ガブっと。
え?
途端に流れ出す大量の血。【収納】中はずっとフレッシュなままです。もったいないので血は【収納】、ハウロン欲しがるし。
『おおぅ。血も温かく、竜玉も温かい。これならばまた生み直せる。生み直せるぞ』
顔を上げたドラゴンはごくんと何かを飲み込んだ。
『礼を言う、人間! 我が子は新しいまま。新しいのはお前のお陰だろう?』
『え、うん。すぐに【収納】したから』
ちょっとドラゴンさん、お口が赤いです。
横たえられたドラゴンの方は、首の下、胸のあたりがえぐれてる。そしてもうそれには興味がないみたい。
『えーと、これはもういいの?』
『それは単なるモノだ。単なるモノなので、好きにしていい。我らの体は人間には重宝されるのであろう?』
『うん』
じゃあちょっと頂きますよ、っと。
あ、【収納】前に、血抜きしとこう。土偶ちゃんの巨木から水分を抜いた方法できゅっと。
『もしかして竜玉があればいいのか?』
『うむ。我らの意識は、我らの心は竜玉に宿る。冷えぬうちは、しっかり自我が残っている。私が卵を産めば、また体は手に入る、また体は育つ。壊れた体は不要だ』
『へえ』
ドラゴンにとって、体は変えがきくもので、どうやら【収納】のおかげでセーフだったようだ。そうか、体は変えがきくものなのか。竜玉がないなら、無精卵みたいなもの? 違うか。
どっちにしても食べても大丈夫なもののようです。
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