第198話 二人の滞在予定
「……今日は何かの集まりでしょうか?」
ディーンたちと貸家でお茶を飲んでいると、訪ねてきた執事が入り口で言った。
「おはようございます、いえ、もう昼ですか」
清々しい笑顔のリード。
「こいつに引っぺがされた結果だから気にすんな」
白い
「まさか全員着替えがないとは思わなかった。洗濯物ためすぎだ」
シーツやらを引っぺがして洗い物をまとめて出して、現在上の階は虫よけ効果のある香草で
こっちの世界で服なんかに掛けるやつで、後には匂いしか残らずぺたぺたしない。電化機器がないので遠慮なくいける。
「一ヵ月二ヵ月着替えねぇなんてざらだぞ?」
「夏場でそれはやめろ」
冬場でもやめていただきたい。
「涼しくて快適ではある」
甚平の構造を一通り調べた後のレッツェ。
「今日は食事以外で出かける予定はなかったからね! 美味しい食事が出て清潔になるなら万々歳だよ!」
起きるのを待って、一階の共有スペースに下りてきた順に、ブランチを与え、ひっぺがしたのは俺です。
ひっぺがしていたらリードに見られて固まられたのも俺です。存在を忘れていました。
色々誤解を解くのが先行して、甚平の説明は前に見たことがあるエスの白い民族衣装をうろ覚えで作ったと伝えてごまかした。だいぶ違うけど。
実際この白い甚平は、エスに行ったときに購入した麻で作ったものだ。おろしたてなのでちょっとぱりぱりした感触だが、そのうち馴染んでくるだろうし、夏は肌にくっつかないので涼しい。
俺の夏場の寝間着予定だったんだけどな! 涼しいように大きめに作っていたので、全員問題なく着ている。ディーンだけちょっと下が短いけど、無駄に体がでかいんだからしょうがない。
俺の牛乳の成果はいつ出るのだろうか……。
リードはちゃんと洗濯済みの着替えを持っていた。今日が洗濯物の回収に回ってくる日だと伝えると、旅の間に着ていたらしい服をクリスの袋に詰め込みはじめた。
自主的なので綺麗好きっぽい。クリスもディーンに比べれば綺麗好きだけど。いや、クリスとレッツェは綺麗好きというより、手入れがいいと言った方がぴったりくるかな。
洗濯はマメじゃないけど、服にブラシをかけたり脱いだ時に形を整えたりしている。その辺は俺より細かい、俺は面倒なので脱いだものを椅子の背にかけっぱなしとかよくする。
リードがいるので、飯はパンと野菜スープ、ソーセージに目玉焼きだった。美味しいと言われると嬉しい反面、こちらにない材料を使っていないか心配でひやひやした。
燻煙が終わるまでの待ち時間、俺の持ってきたパンにオリーブオイルと塩をつけて食べ、酒を飲みはじめたのが三人、レッツェと俺はお茶という構図。レッツェの出してくれたお茶は、ちょっと土臭いけど慣れると香ばしくて美味しい。
「で? 何か用事か?」
「リリス様に頼まれ、リード様への支払いを届けに参りました。伝言で街を出る前に一度食事を共にしようとのことです」
そう言って丸めて封蝋をした羊皮紙っぽいものと皮袋をリードに渡す。
「商業ギルドで現金化できる為替と、一部は使いやすいよう銀貨で用意いたしました」
「リリス様を途中までお送りした後でよろしいのですが……」
リリスは一週間ほどここに滞在し王都に戻るそうで、その時に合わせてリードも旅立つとさっき聞いたばかりだ。
今日は一日休んで、明日は例のあの件で城塞都市に行くそうなので、落ち着かない感じだ。
俺もディーンとクリスに、一緒に来て娼館どうだ? って誘われたけど、城塞都市はパスだ。
結局リードが受け取って、執事とのやりとりは終了した。娼館行きの一部になるのか、『精霊の枝』での精霊との会話の一部になるのか、どっちだろう?
燻蒸の始末を終え、借家を後にする俺。リードの前で色々やらかしたり口を滑らせそうなので早々に。
島にも燻蒸条例でも作ろうかな? 衛生状態にもよるけど、年に四回くらい、蚤・虱とかの駆除を。今はナルアディードからの出入りが激しくてダメだけど、島だし何回かやれば殲滅できるんじゃないかと期待。
城塞の廊下とかにイグサや藁、ハーブを混ぜた物を敷こうとしていたので止めた。これは外から持ち込まれる汚れや雨などのほか、床にこぼした飲み物も吸い取ってくれる、室内の湿気を吸収する、石畳を歩く時の緩衝材がわりなどになるらしいのだが、不衛生すぎると思うのは俺だけか?
年に何遍かその草ごと捨てるのだそうだが、食べ残しからネズミの死骸までいろんなものが出てくるそうで……。せめてイグサは編んでラグかなんかにしてほしい、そしてこぼすな、こぼしたものをそのままにするな!
まず床に物を捨てない文化から根付かせないと。それを考えると、ディーンも綺麗好きな部類に入る……のか?
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