第475話 大体料理と酒で誤魔化す
ハウロンにハルム周辺の見どころを教えてもらった。思い付きで行って帰ってきたら見逃してた感。
海には、岩同士がごっつんごっつんしているところとか、精霊が歌ってる場所とかあるんだって。精霊が歌うってセイレーンみたいなものかな? ユニコーンいるしね。
まあ、俺のところも適当に置いた音楽を奏でる石のせいで、島の北側に船が集まって観光してるし、娯楽に弱いんだな、こっちの人。特に船乗りって陽気なイメージあるし。
「真面目に海路を行くとそんな珍しい場所が……」
「ちょっと、珍しい場所扱いしないで。あと、断崖絶壁があるから普通は海路を行くしかないの」
「船って大変そうだよね」
ネズミとかご飯とか。
「視線を逸らされると別な意味があるんじゃないかと、ちょっとドキドキするよ!」
本能――じゃない精霊の助けで真実に近づく男、クリス……!
絶対にハウロンに却下されるようなことを考えていたので、暴くのはやめてください。
「ビールと唐揚げをあげよう」
「ちょ、あからさまに話を逸らしたわね!?」
「気のせいです」
【収納】から唐揚げを取り出す。鳥だと見せかけてオコゼです。
「なんの揚げ物だい? トカゲ?」
クリスが出した皿を覗き込んでくる。
そういえばオオトカゲで唐揚げにしたな。言い直そう、オオトカゲと見せかけてオコゼです。
「オコゼっていう白身魚だ」
「海の魚ね?」
さすが大賢者、よく知っている。
「うん。フグが爆発して浮いてきたヤツをついでに拾ってきた」
「……どういうことだい?」
ちんぷんかんぷんっぽいクリスのために説明しよう。
「さっきハウロンに聞いてたハルムの周辺の海に、こんな魚の形したイルカっていう哺乳類が――」
「哺乳類?」
ハウロンが話の腰を折って聞いてくる。こっちの生き物の分類は何て言うの? 哺乳類じゃないの? 【言語】さん頑張って!
「えーと。乳を出して子育てする背骨持ちの動物が――」
「哺乳類はわかるわよ。イルカは魚じゃないの?」
おっと、そっちか。
「イルカとクジラは哺乳類だよ――たぶん」
こっちの世界で確かめたことないことを思い出し、付け加える。精霊いるしね、ユニコーンとかユキヒョウの友達の馬が哺乳類だとは俺も言えないし。
「ジーンは知ってることと知らないことの差が激しいね! 時々大賢者様の知らないことまでサラッと教えてくれる」
そして俺が言ってることが事実だと素直に信じるクリス。
「いや、言ってて途中で自信なくなった」
「いえ、よく考えるとちょっと魚にしてはおかしいのよアレ。後で調べてみるわ」
そして自分の目で確認しようとするハウロン。
「それは置いといて。イルカ――の魔物がフグっていう魚の魔物を放ってきて、それが爆発するんだけど、爆発する前に俺が打ち返してイルカがいる海で爆発したから、衝撃でぷかぷか浮かんできたのがコレです。熱いうちにどうぞ」
塩とレモンを添えて。ポン酢もいいかな?
「ちょっと待って、言ってることを整理するわ」
額を押さえて片手を突き出してくるハウロン。
「ごめん、説明下手で。でも待ってると冷めるから」
だってイルカが投げてくるって言おうとしたけど、イルカはトスするみたいに鼻先で突いてるだけだし。どう表現していいやら。
「説明のせいじゃないのだけれど……。でも美味しそうね」
ため息をつきそうなハウロン。
唐揚げは【鑑定】さんのおすすめです。小さめのオコゼは、さばいて頭と骨つきでカラッと揚げてある。
サックサクのパリッパリ。俺には背骨とか大きな骨は、ちょっと口の中に残って邪魔なんだけど、こっちの世界の人は歯応えがある方が好きみたいなんで。
香ばしい衣と小骨のパリパリ、ふわりと淡白な白身。
「これは美味しいわ。すごく上品な味」
「このさらさらした脂は、魚の脂かい? 口の中が熱いけど、そこにこのビールがたまらないよ!」
こっちのビールは常温だけど、日本でCMを見続けた俺としてはビールはきんきんに冷えているもの。もちろん冷やしてます。
時々冷えたものを出しているので、冷やす方法とかには突っ込まれなくなっている。ひえひえプレートEXを作って、冷蔵庫というか冷蔵箱を作ったので熱い季節どんとこい、だ。
「ああ、これも」
アイスを薄く削って器にこんもり盛ったもの。評判が良かったらアッシュに出すつもり。
なお、ひえひえ越してカチカチな冷凍プレートを作り、アイスを作ろうとして混ぜたものをこぼしました。プレートに薄く伸びて固まったのをヘラで削ったのがこちらです。
薄いからしゅっと溶けて、味は悪くないよ! いちごアイスクリームだよ! 失敗だからアッシュより先に食べさせようとか思ってないよ!
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