第515話 達成
一応、人外恋愛シリーズということで雪女、天女の羽衣。雪女は三好達治の「雪」の印象の方が強いけど。
「純粋な精霊に対して、人間の男のなんという不誠実……」
クリスが
思わぬところに着弾!
『うふ!』
「それでも条件が揃うとどうしても愛しちゃうのよね〜」
ため息をつくかりんとう饅頭。
おっきなボコッという気泡――今回生まれたのは熱波の精霊――と、ずぶずぶと沈んで行く本体。とりあえずボコッは、海流の精霊に頼んでエス側の元々乾いてるとこに流してもらった。力技だけど、セーフということでひとつ。
「わははは! 精霊は愛する条件が崩れた時点で、愛着も未練もねぇからな!」
エクス棒。
「は〜。人間に捕まるのは怖いですねぇ」
カメは違った意味で捕まりそう、具体的に言うと浜辺でクソガキどもに捕まりそう。
雪女も天女も完全に
ここでクリスと交代。
話のネタが切れたら、ハウロンと交代って思ってたんだけど、クリスのお話は豊富。臨場感たっぷりに身振り手振りがつくから、聞いていて面白いし、情緒を揺さぶられる。
ハウロンは大賢者らしくたくさん話を知ってるだろうけど、多分講義っぽくなっちゃうからクリスが一番いいんだよね。
クリスの話を聞きながら、お弁当に手を伸ばす。明太子とホタテのおこわ、俵形の塩結び、おいなりさん、ささがき牛蒡とウナギのご飯が田の字に区切られた四つの区画をそれぞれ埋めている。
小さな重箱は2段、もう片方は当然おかずだ。
塩ダレチキンにミートボール、アスパラガスの胡麻和え、根菜とインゲン豆の信太巻、柚子をくり抜いたやつに紅白なます。
ウナギご飯は胡麻、海苔、大葉の薬味が効いて美味しい。お茶を飲みながらもぐもぐと食べる。クリスには好評だったけど、ちょっと揚げ物も欲しかった気がするな。
クリスの話にズンズンと沈んで行くかりんとう饅頭。うーん、やっぱり上手いなあ。
「交代、100万回生きたねこいきます」
俺の話でも沈んでくけど、俺の場合は即興で作ったわけじゃないからね。
「ううう。愛を知って旅立つとは……っ!」
クリスは感動しやすい。
「ご主人、なんか甲羅につっぷしてるのがいる。それはそれとして、ポップコーンおかわり!」
エクス棒はけっこうドライ。
コンコン棒の木の試練って、受ける人によっては結構えげつないことになるし、ドライにならないとやってられないか。いちいち助けてたら『王の枝』の試練にならないもんね。
エクス棒におかわりを出し、ついでにクリス分のポップコーンとビールも。精霊用には真水と花。俺の出した小さな花が、精霊たちに戯れられ、くるくると回りながらゆっくり海上へと登ってゆく。
さて、かわいそうなゾウは、俺にもダメージがあるからパス。話はスーホの白い馬、ごんぎつね――ごんぎつねの話って、ものすごく精霊の手伝いっぽいな。良かれと思って手伝ってるのに、猟師にとっては迷惑千万な結果という……。
交代で話を続けることしばし。
「あああ、ありがとう! これで安楽の地にいける〜。熱いマグマに
なんか目を凝らすと、地面がうにうに動いている……気がする。いや、これかりんとう饅頭のお迎えに来てるのかな?
「ありがとう」
俺の手に流れ込んできたのは、精霊の雫。すごく濃い赤茶色、それでいて宝石の透明さを持ってる綺麗な石。
「エクス棒に食べさせてもいい?」
「いいわよ〜。エクス棒ちゃんのお腹に入っても、自分の気配はたどれるもの。顎の人、ヴァンの話をたくさんありがとう! あなたには拾い物だけどこれをあげるわ〜」
顎の人。
うん、そこに精霊がいるから目印になるんだろうね。なかなかひどいな!
「お役に立てて光栄だよ!」
ふよふよとクリスの元に流れ着いたのは金。精霊金かな?
なんか精霊金でできた鎧が沈んでいる話を前に聞いたような……。拾い物、ってまさか……
まあいいや。気にしない方向で!
「またどこかで〜。火口でお話してくれたら、なにかいいものをあげるように眷属たちに伝えておくから、火口に寄った時はよろしくね〜」
「ああ、わかったよ。火口に寄った時のために、とびきりの話を用意しておこう!」
クリスが力強く答える。
「楽しみにしてるから」
そう言っているうちに、地面と穴の壁の隙間というか、うにうに動いているようなところに少しづつ吸い込まれていくかりんとう饅頭。
「は〜。どうやら解決したようですね。上がったらセイカイ様にご報告します」
カメが言う。
それにしても、火口に寄るってどんな状況なんだろうな。
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