第141話 披露
本日の余った時間は森へは行かず、カヌムの家の屋根裏部屋の手入れ。梁を残して天井の内側には板を貼り、中庭を挟んで広い方は真ん中に壁を作って区切ってある。
中庭側の部屋に棚などを追加して、奥の部屋にスプリングを自作したベッドを入れるところまではやってある。中庭側の部屋は階段を上がるとすぐに部屋がある感じ。
奥の寝室には絨毯を敷いて、ベッド脇にサイドテーブルを置き、そこにランプ。棚と空箱の設置、棚の上にはキルトを敷いた籠。はい、大福の寝室です。
ごそごそと色々配置して、軽食の用意も完了したところにディノッソたちが来た。
「はい、はい。ここ土禁、これに履き替えて」
三階に案内して、柔らかい布を合わせた部屋履きを出す俺。キルトでできたハーフブーツみたいなやつだ。
「……ノート?」
三階を見回してしばし固まったまま、執事に呼びかけるディノッソ。
「範囲外でございます。人目につかない場所の家具の類は――」
そうです、執事の言う通りセーフのはずだ。
「よし、お前と俺の文化は違うことがわかった」
レッツェが最初に靴を脱いで履き替え、部屋に入る。
壁にめぐらせた棚には酒とガラスの器、天井から高さ違いに下げたランプたち。暖炉の位置に鎮座するクッキングストーブ――石のブロックも使って暖炉よりのデザインにしてあるが――、その上の
座面と背に織の厚い布を張った猫足の椅子、もちろん中綿入り。綿がなかったんで羊毛だけど。どっしりした絨毯と、ごろごろするためのクッションと寝椅子。
「明るいな……。顔?」
棚に置いたランプは、後ろにつけた反射鏡を
ガラス板を作る実験をしたついでに銀鏡反応実験もして、ガラスに銀をくっつけて鏡に。雷銀がうっかりできて爆発したのは忘れたい思い出。化学実験は調子に乗ってはいけない。【治癒】のお世話になりました。
「……いや、うん。外に出せないものが増えただけだな」
レッツェの中で何か折り合いがついたらしい。
「うわ、きもっ!」
「映ってるのは自分の顔だぞ、ディノッソ」
「顔の話じゃねぇ!」
鏡を覗いて嫌そうな顔のディノッソに言ったら否定が返ってきた。
「ここまではっきり映るとは……。ぜひ売っていただきたい」
「順調に流出させてんじゃねぇよ」
あちこちみて回る三人を放置して、コーヒーを淹れる。ディノッソと執事は紅茶。ゲームをするための丸テーブルとは別に椅子の間に二つのティーテーブルを配置している。
すでに用意されたつまみの隣にカップを置く。つまみはフライドポテトとポップコーン、ジャーキー。もうちょっとしたらクッキングストーブでドリアを焼く予定でそっちも皿に盛られた状態で棚にスタンバイ。
なじみやすそうなところから食材を増やしていく方向だ。
「茶が入ったぞ」
「おう」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
まだ周りを見回して落ち着かない感じだが、三人とも席に着く。
「今日は武器だったな」
「はい」
ディノッソの確認に素直に返事をする俺。
「……いきなり顔をそらしたな?」
「頑張ったんだけど力及ばず、希望にそえていないのがこうですね?」
出禁にしてみたりしたんだが。
「ああ、気にするな。精霊は気まぐれなのはわかってる」
「漏れ聞く伝説の精霊剣の打ち手も思い通りに作るのは難しかったと聞きます」
レッツェは黙っているけど、思ったよりも叱られない気配!
「とりあえず出してみろ」
「では、まずはお子様向けシリーズ」
上に置くと机が壊れそうなので保護者のディノッソに渡す。
ティナのハンマー、バクの大剣、エンの片手剣。
「リスが可愛らしゅうございますね」
執事が褒めてくれる。
「ティナのハンマーは、なんか魔力を込めると殴る瞬間大きくなるのが特徴です」
「は?」
「バクとエンの剣は魔力を込めるとなんか伸びます」
「おい」
「奥さんの剣の片方は氷属性でこっちは普通」
「まて、普通じゃない冷気だしてるだろうがよ!」
「もう片方はなんかエナジードレインがつきました」
「レイスでも憑けたのかよ!」
カンカンしてた時に確かにレイスや吸血鬼にダメージがいくとか考えていたのは否定しない。
「あ、ノートの武器も同じ効果だから。あとこっちは視力を奪う効果、これは毒ね」
「軽く言われましても……。ですが確実にレイスなどに効果がありますな。ありがとうございます」
「物騒な武器ばっかじゃねぇかよ!」
だって暗器なんだもの、イメージこうだろう? 仕方ないじゃないか!
「ディノッソの炎の大剣は火属性ね、ちゃんと燃えるから。これは普通」
「普通じゃねぇ気配しかしねぇよ!」
「これ、俺も受け取らなきゃだめか?」
椅子を引いて腰を浮かせながらいうレッツェ。
逃げる準備はやめてください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます