第557話 こっちは平和
野菜はたぶん、じゃがいもはナルアディード経由で他所の、トマトは飛び地の、キュウリは島の畑かな? 肉は完全に輸入。
そして待望の手長エビくん。半分に割って、塩を振って焼いただけだけど、島のレモンをぎゅっとやって食べたら絶品でした。殻が少し焦げて香ばしい匂いがしてて、身はぷりっと。ミソをちょい、ちょいっとつけて食べるのもいい。
これに合うのはビールですか、ワインですか? 魚介は白ワインだっていうけど。まだ酒の判断ができない俺です。
割と簡単に幸せな気持ちになって、店を後にする。島は随分人が増えた。
住人も、観光客も。まだ全部できてなかった宿も劇場も完成したし、住居もほぼ埋まった。俺の要望通り、家の窓辺あたりは花が植えられてるし、水路も含め、掃除もされてる。
基本、島の全ては領主である俺のものなので、住居も貸し出し扱い。まあ、実際全部俺が金出して建てた家だしね。場所によっては、住んでる人も領主のものな世界なんで、領主はなかなかの権力。
住人となった人の家は、広さと用途、水路の利用の場所で賃貸料という名の、税金をとっている。
一軒に住める人数も設定してある。住人募集の数を制限してるし、これは俺の感覚だとやりすぎなんだけど、4畳くらいに折り重なるように住んでたりするのを、こっちの世界で見てきたので……。
いやもう十人以上詰まってるんですよ? どう考えても不衛生になるし、あんなに密着してたら一人が病気になったらもれなく全員感染するって。都会の屋根裏部屋怖い。かといって農家の藁の中に潜り込んで寝てるとかもどうかと。
ナルアディードもね、うちより広いけど、島と埋め立ての土地で狭いから、商会長とか、会計やってる人とかはともかく、使いっ走りとかヒラは割とすし詰め。個室という名の戸棚というか押し入れみたいなのを採用しているところもある。四段ベッドが板で囲ってあるみたいな……。
それは置いといて、あとは思ったより希望者が多そうだったので学校も増やした。今のところ子供は半分必須、ここに元々住んでた漁師の人たちとか、大人の希望者も受け入れている。
学校というか、増やした2箇所は読み書きできる住人の家です。老夫婦が昼間、受け入れてくれてる。学校も教える人と生徒の人数は余裕があるようにはしてるけど、合う合わないがあるし、好きな方に通っていいことになっている。
職人とか商売人、働ける人家族を優先に、移住許可をだしてるけど、老人がいない島というのもなんか歪な気がするし、ちょうどよかった。基本は読み書きと簡単な計算、向上心があればもう少し高度なやつ。無料のお昼つき。
一食分浮くというので、みんな真面目に来てるというか、送り出されてる。職人さんも弟子を取り始めたし、いろんな意味でうまく住人が育ってくれるとうれしい。
『精霊の枝』では引き続きパウロルおじいちゃんが魔法を教えてるけど、この島では、精霊落としとか精霊の悪戯関係の仕事がほぼないので結構余裕なようだ。余裕すぎるのか、あふん防犯が増えてるんで、俺の歩けるところが減っている。
――精霊関係の悪戯の対処や、魔法を使っての怪我の治療、今のところ城の関係者だけと聞いた。小さな怪我は、薬師のパメラが対処している。そこも圧倒的に従業員が多いという。何をやってるの何を。
もう移住は締め切ったけど、申請が貴族からも来てなかなかカオスだったようだ。お前ら自分の領地はいいのか! なお、ナルアディードの商業・海運両ギルド長は高い金を出して、宿屋に滞在している模様。
ただ、宿とってるのに帰れない日も多いらしい。無理しないで、うちの島の料理とか家具とかナルアディードに持ち込んでいいんですよ? 広げるの希望なんだから。なんか島に滞在することが、ステータスとして確立されてるからもうしょうがないらしいけど。
島の様子を見ながらそぞろ歩く。メイン通りと広場は人が溢れてたけど、路地は場所によって一人、二人とすれ違う程度。これは観光人数も制限してるから。
メイン通りの広場に近い側は店が並び、広場には市場や劇場、高級店がある。でも路地にある店もなかなかいいぞ。ぜひ入り込んで穴場を見つけてくれ。
青い布も順調、野菜も順調、観光業も順調、『精霊灯』はぼったくってる。島の住人の生活も回り始めた感じ。城はまだ石工たちが頑張ってるので、いつ完成するか謎だけど、町はいい感じかな?
よし、明日はわんわんの寝床がどうなったか、地の民のところにお邪魔しよう。宴会用の料理を仕込まないと。北の大地の市場に行って、度数の強い酒も買ってこよう。
さすがに俺が仕込む量じゃ足りない。出回っているのは大部分が濁酒だし、なんかこう涼しくて広いところで酒を作るのもいいかもしれない。
場所とか人の心当たりは、ソレイユよりハウロンに聞いた方がいいかな? こっち、暖かいというか暑いし。
などと思いつつ、ソレイユにも聞いたら、領地ごと買わないかの話が来てるいくつかを教えてくれた。
その中にシュルムの南側の国の領地もあって、ワインにはいいけど、今きな臭い、と説明された。領地ごと売ってくれる人がいるんだそうで。
レディ・ローザが物資を運び込んでる国ですよ! これから起こることに備えて逃げ出そうとしてるのバレバレすぎない? 少なくともソレイユにはバレてるよね? シュルムにもバレてない?
色々つっこみどころが多くて、とりあえず酒の話は保留。
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