第27話 自分の時間
「ジーン、中堅冒険者に一回ついてかねぇか? こないだ一緒にいてわかったけど、お前ズレてる。普通を知っててズレてるならともかく、違うみたいだからさ」
などとディーンに勧められる俺。目立って強くはないけど堅実に依頼をこなす人を紹介してくれるそうだ。これはありがたく受けた。明日の同じ時間に来れば紹介してくれるって。
「あとお前ら二人、へんなのに引っかかんねぇよう気をつけろ。アッシュは変だと思ったら眉間にシワよせろ」
「む?」
怪訝そうな顔をして眉間にシワが寄ってるアッシュ。寄せるつもりじゃなくても割とすぐ寄るのはやっぱり癖になってるんだろうな。
「アッシュの眉間のシワには賛成だが、俺は別に……」
「お前らは顔がいいの! 変なのが寄ってくるの!」
なぜかディーンがぷりぷりしながら言ってくるのだが、俺は別に言い寄られて嫌だったら断るし、好みだったら乗ってもいいんだが。
いちゃいちゃしたいお年頃、でも自由を満喫したいのが上かな。ディーンの忠告は心にとめとこう。
カイナさんは昇進して忙しくしているらしい。窓口からギルドの運営に関わる方に移動になったらしく、今日は姿を見かけない。ちょっと残念。
アッシュたちはこれからギルドの個室でぼったくられた分の返還とか謝罪を受けることになるらしく、ここでお別れ。この都市での行動範囲は被っているから、これからもちょくちょく顔を合わせるだろう。
それにしてもアッシュたちも借家か。部屋を借りると世話焼きの大家家族とかがいなくても、台所と井戸は共有なんでどうしても人目はあるからしかたないとはいえ、なかなか金がかかる。俺が言うなだけど。
俺はギルドの依頼票をチェックして狩りへ。本格的な冬を目前に毛皮の需要が高まってるようだ、あと肉。ウサギは冬でも活動してるし、元の動物の生態にかかわらず、寒さに強いタイプの精霊がついたヤツは冬でも活動するらしい。
湖に水鳥が来ているか確認して、あとはできれば狐を狩りたい。森の奥で狩ったあのデカイ狐の解体をしたいのでお手本を見たいのだ。
門を出て人目のないところまで歩いたら【転移】。湖は端の浅い水の淀んだ場所に薄く氷が張り始めている。もう少ししたら陽が当たって溶けてしまうだろうけど、確実に寒くなってきてる。
水鳥は岸から遠く離れた場所に何羽か。もう少ししたら本格的に渡ってくるかな? 俺の家がある場所はうっすら雪化粧程度だけど、カヌムは膝丈くらい普通に積もるって聞いた。できれば雪が積もり出す前にお願いしたい。
さて、本日鳥は諦めて狐を探そう。――どう探していいかわからないけど。ディーンから足跡やら
【探索】を使うと色々な気配、狐の気配がわからない。熊と狼、ウサギなど相対して覚えた気配を除いても気配はたくさんだ。試しに近くいある気配を探しに行ったらウロで冬ごもりの支度をしていたヤマネと目があった。
一つ一つ気配や痕跡を覚えてゆくしかないな。森を歩いて正体不明の気配を消してゆく。小鳥だったり、モモンガだったり、ヤマドリだったり、ビーバーが立派な堤防築いてたり。
そして結局ツノありの熊とヤマドリと
「よろしく」
「はい、ありがとうございます」
今回はまるまる冒険者ギルドに売る。熊はツノ分こっちの方が高くて、派手な色の雄のヤマドリは商業ギルドのほうが高く、雉は矢羽に使うため冒険者ギルドのほうが買い取り価格が高いのだそうだ。
なお、どっちもまるまる売らない場合、解体料が発生するのでよっぽどでない限り部位ごとのバラ売りはしない方がいい。全部売るかを解体後に確認してくれるので、ここの商業ギルドも冒険者ギルドも良心的だ。魔石あったら魔石だけ欲しいと言われるのがほとんどだそうだ。
俺は今回、現場で雉は解体して羽根を置いてきてしまった。雉は獲ったその場で腸を抜いておかないと臭みが肉に移るって【鑑定】さんがおっしゃるから……。俺の【鑑定】は食うこと優先で表示されるせいで、矢の材料になるとかその辺のことは後の方に少ししか出ず、完全スルーしてしまった。
雉はツノだけ売って、肉は美味しく食べる方向。さて、野菜を詰めてローストにするか、薄切りにしてしゃぶしゃぶするか。とりあえずちょっと寝かせて熟成させよう。
――しゃぶしゃぶするには卓上コンロが欲しいよな。今回はローストにしよう、窯はあるし。
卓上コンロは無理でも火鉢ならいけるかな? 鍋をかける
鍛治も少し始めたいところだ。
借家の扉を開けて中に入る。一応、暖炉に火を入れて部屋にいますよアピールをして、家に転移。
リシュが走り寄ってきたのでなでてブラッシング。ちょっと大きくなったかな? 手足がぶっといので大きく育つと思うんだけど。
夕食は
暖炉には火が燃えて時々パチパチと音を立てる。テラスに面した場所は全面窓だけどペアガラスだし、分厚いカーテンが引かれ部屋は暖かい。
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