第28話 お金の話
借家に行ったら中庭の草がぼうぼう、昨日は普通だったのになんか伸びた。しかたがないので草刈りをする。この家を引き渡された時も伸びてたので鎌はある。刈った草は乾いたら焚きつけにするため、角に重ねてあるのでその上に新たに積む。
家二つ分の掃除が面倒くさい!
今日の予定は商業ギルドにポーションを売りに行った後、冒険者ギルドに行く。
ポーションは一瓶あたり買取は金貨一枚と小金貨一枚。小金貨三枚と考えた方がわかりやすいかな? 小金貨は金貨の半分の価値だ。金の量がそのまま価値になっているので、大きさ自体が半分。
ポーションの一般への販売は金貨三枚が相場っぽい。
普通はだいたい『精霊の枝』で水を買わなくてはいけないらしく、そっちがけっこうかかるようだ。しかも一日に買える量が決まっている。
『精霊の枝』は都市ならどこにでもあるそうだが、規模はそれぞれだ。ここは魔物との戦いが多い辺境なだけあって、王都の派手さはないけど大きい方だ。
『祝福された水』は精霊次第であまりとれないらしい。見てるとただ単に用意された水盆で精霊が飲んだり水浴びした後の水が『祝福された水』と言われてる気がするんだけどね。
精霊は流れてる水のほうが好きらしく、あまり水盆は使わないようだ。家の水が祝福されてるのは元が力の強い精霊たちによって作られたこと、飲んだり水浴びしまくる精霊が多いことの両方だろう。
あれ? アズが使った水……。まあいいか。
気になって調べたら領地から流れ出すと普通の水になってるみたい。『精霊の枝』のものも持ち出すと半日ほどで普通の水に変わるそうだ。
ただの水に戻ってしまう時間は
まあ、領地そのものがあれなんで水は今更だな。
俺はポーションを大量に作れるし、元手が薬草くらいしかかからない。目立つのもやだから二本ずつしか売らないけど。
銀貨十二枚で金貨一枚、銅貨十二枚で銀貨一枚分。金貨、銀貨、銅貨がどこの国でも使える貨幣だけど、それだけじゃ不便なので、それぞれ半分の価値の小金貨・小銀貨・小銅貨と四分の一の価値の四分金・四分銀などがある。商業と冒険者の両ギルドのおかげで、その間のお金も大体同じ価値になってきてるみたいだけど。
同じ金貨でも最後の抵抗なのかその国の王の似姿が押されてたり、名前が違ったりするけど、大きさは一緒。
一番小さなお金はモンと呼ばれる、モンは十二枚で銅貨一枚分。銅貨だけ二分の一の小銅貨、十二分の一のモンで、金銀の1・2・4とは繰り上がりの単位が違う。
豚の丸焼きは銀貨二枚くらい。下水に放されてるの知ったからにはこの町では絶対買わないけど。
下水はトンネルになってて、太いところは用水路の両脇に人が歩ける通路がある。ご家庭から流れ込む下水は一旦貯める窪みがあって、水気が多いのはそのまま流れるし、食べ残しやブツはそこに溜まる。そして豚の登場。
確かに豚は雑食だし、下水の掃除は大切だと思う。だが、誰なんだ考え出したやつは! そこはファンタジーらしくスライムとかにしとけよ! なお、農家の豚の丸焼きは小銀貨一枚分くらい高い。納得である。
頭の中で通りで見かける売り物と、その値段を覚えながら冒険者ギルドに来た。
「ツノありの熊は大きいのならまるっと全部で今は金貨一枚くらい」
「ジーン殿?」
入ったら、アッシュがいたのでつい。この季節は毛皮の需要があるのと、秋に色々食べて薬の材料になる胃や心臓に栄養を蓄えてるため買取価格が高いが、春になるとガクッと下がる。
あと普通のサイズだと小金貨一枚にしかならない。傷のないでかい毛皮が金持ちに売れるからこその金貨一枚。アッシュは大物狙いだった。
「ジーン殿、後で時間をいただけないだろうか? ポーション代などきちんとしたい」
「それは対価を求めて渡したわけじゃない――住処が決まって、生活が安定してからでいい」
お代はいいと断ろうとして、引きそうにない雰囲気なので言い足す。
「む……。すまぬ」
アッシュにも一応経済観念がついたのだろうか? 不本意そうだが受け入れた。その後ろで頭を下げてくるノート。頭下げてるのに仕草が優雅。
基本、この都市に所属してない者は
ぼったくり宿の熊積立が戻ったとはいえ、家が決まった後も色々物入りのはずだ。
「おう、来たか」
酒場の机でディーンが手を振っており、同じ席に髭の生えた男がいる。中肉中背、ちょっとひょろりとしてるような気もしないでもない? みたいなおじさんだ。
三十前後かな? いやでも肌の感じからすると見た目より若い? おじさんぽく見えるのはヒゲと疲れたような半分閉じた目、猫背のせいかな?
どうやらこの人がディーン曰く「堅実な冒険家」であるらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます