第473話 世界の謎について考える
快晴のカヌム。この辺りの天気は、晴と言っても薄曇りの時間の方が多いんだけど、初夏から夏にかけては気持ちのいい天気が続く。
挽きたての粉で昨夜仕込んだパンを今朝焼いて、焼きたてを朝っぱらからみんなに配り歩いてきたところだ。――【収納】に入れてあるのでいつでも挽きたてだけど、気分です。
俺も食べたけどバゲット小麦の香ばしい香りが広がって、美味しかった。
もう一種類、ライ麦の黒パンも。こっちの伝統に則って発酵酵母で作ってみたけど、発酵してるせいかちょっと酸っぱくなる。そして、ほっとくとものすごく硬くなるんだけど、その硬くなったのがたまらないんだってディーンが時々力説してる。
そのディーンは寝てて、貸家で起きてたのはレッツェとカーンだけだったけど、共有の居間に籠ごと置いてきたので、他の3人も起きたら食べるだろう。
いい天気だけど、俺は屋根裏部屋のベッドの上。ダイフクはさっき箱の中にいたのを捏ねさせてもらった。もう少し暑くなったら、箱じゃなくって隣の籠にはいるんだけど、まだダイフク的には寒いらしい。
さて、考え事だ。
カヌムの家は精霊避けをお願いしてる。俺が名付けた特定の精霊しか近づけない。精霊避けをお願いしてる精霊より強い精霊や、速い精霊が飛び込んでくる可能性はあるけど、外より精霊に会う確率は格段に低い。
メール人に倣って、自分の周囲に薄い空気の膜を張る。一応これで湧いて出る『細かいの』も平気。『細かいの』は意思の伝達方法ないけどね。
気づいちゃったから考えるけど、今の生活に不満はないし、どうこうするつもりはない。
と、一応前置いておく。メール人の反応からして俺の名付けた精霊は大丈夫っぽいけど、お知らせがいくかもしれないから念の為。
精霊って口にしたことだけじゃなくって、俺の思考も読むからね。まあ、正しく理解してるかどうかは怪しいところだけど。
さて、薄々いるのかな? って思ってたけど、精霊を使って色々してるのがいるね。んで、他人に世界を作らせては壊してる。
目指してる世界は、俺が神々に望まれた物質と精霊がほどよく混じった世界なんだろうけど、具体的にはどういう世界なのかさっぱりわからない。俺に求められたことと、勇者に求めた事が同じだとも限らないし。
もしかしたらソレも自分で目指してる世界がわからないのかもだけど。眷属がたくさんいる精霊なのか、精霊とたくさん契約してるルフとかなのか。
全部思い通りになってないってことは、全部の精霊をきっちり掌握してるってわけじゃないのだろう。俺が名付けた精霊も外れるみたいだし。
たぶん俺を守護する神々はソレと契約してる。海鳥くんと契約した時、レディローズとの繋がりを切らない実験をしたんだけど、俺と神々ってたぶんその状態なんじゃないかな。契約はしてるけど、もっと強力な契約者が別にいて、俺との契約を承認してる。
だから俺を今包んでる空気の膜は、リシュの眷属を選んでいる。リシュは俺がもう名付けてるからね。神々も名付けてしまいたいけど、全員揃ってるところがいいと思うし、さすがに全員一度に名付けるには魔力が心許ない。
なんか神々、強くなっちゃったし。契約者に魔力注がれてきたのかね? 最近は神々の守備範囲の外、地図に映らない場所にいる精霊にせっせと名付けて、神々の眷属からは外れるよう努力してたんだけど、バレたかな?
精霊は俺の心を読むし、神々を通して俺の思考はまるバレしてるんだと思う。別にバレても構わないけど、この世界では思う通りに好き勝手やってるだけだし。
こっちに来てすぐの頃に、あんまり呼び出した者――俺や勇者の行動に干渉したり、願い事をするのはよくないみたいなことを神々が言ってたんで、基本自由にさせてくれる気はあるんだろうしね。
ナミナが別人、もとい別精霊と入れ替わってるっぽいのが気持ち悪いかな。分かりやすく司ってるものも違うのに、精霊も神官もみんな入れ替わりに気づいてない。
でも、以前のナミナを慕っていた者たちは、座布団をはじめ神殿にいた精霊たち、パウロルも離れた。そう強い暗示でもない。
良いモノなのか悪いモノなのかさっぱりわからない。リシュが何か知ってそうだけど。うちの子、頭いいから。
やりたいようにやって、生きたいように生きる。それができる力をくれたことには感謝してるんで、束縛して来ない限り特に敵対せず共生でいいかなって思ってる。
地図に出ない場所に観光に行くのは趣味だし、そこで精霊に名付けるのは必要だし、向こうから飛び込んでくるのも多いし。神々じゃなくリシュと精霊ノートが強化されるのは仕方ないよね。
【転移】も【収納】も『食糧庫』も使ってるから、神々も強くなってるはずだし、わざとじゃないよ。うん、しかたない。
俺が強くなりたいのは勇者にうっかり会っちゃった時のためだしね! 備えは大切だね。
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