第233話 絡んでみる
「お前の話はいつも
「話をよく聞く前に脳が否定するね! 自分がいかに常識人だか思い知るよ」
ディーンとクリスから散々な言われよう。
俺も
料理を食べて酒を飲み、色々なことを話す。ディノッソは先に家族が待つ家に帰り、独身男四人が残る。
冒険者は動けるうちに金を貯めるだけ貯めたら、辞めて奥さんもらって隠居するパターンが多い。レッツェも奥さんもらって小店を任せるつもりでいたみたいだし。
男の冒険者は結構晩婚。精霊が能力を与えてくれる世界なんで、男女の差がないと見せかけて、出産で命を落とす女性が多すぎ問題のせいで、女性は早めに結婚して冒険者を辞めることも多い。
腕のいい冒険者でも、ディーンみたいにパーっと使って金が貯まらないやつが圧倒的。周りも結婚しないから、まだ遊ぶという思考だろう。
ディノッソみたいに早く結婚する人もいることはいるけど、命がけの商売なせいか
金のある商家、金がなくても貴族は早婚。病気や事故で命を落とすことが多い世界だからだ。農家も自分で食うものを確保できるところは、早婚だし子だくさんかな。要するに自分も含めて家族に食わせられるようになったら、とっとと結婚して子どもを作り家を残す。
でも独身のままの人もたくさんいる、結婚のプレッシャーがあるのは残すような家や土地がある人たちだけだ。
俺はリリスに冒険者がメインではなく、回復薬をつくる腕のいい薬師で商人と紹介された。精霊銀とか、命を救ったお礼にもらった系の言い訳用。おかげでいつアッシュとの仲を進めるかの追求が厳しかった……。
夜が更ける頃にはディーンとクリスは支離滅裂なことを言っては二人だけで納得して笑いあい、俺はそれを呆れて見ながらレッツェから恋愛話を聞き出そうとして失敗。
「そう言うのはディーンから聞け、ディーンから。経験豊富だから」
「ディーンからはすでに聞いた後だし、毎回おんなじようなパターンで飽きた」
ディーンは酒が入ると自分のことについては隠し事ができなくなるタイプ。
依頼の話になると、どんなに酔ってても正気になるし、しっかりしてるのかしてないのか不思議。なお、クリスの話は詩的で装飾的で長かったので、内容を半分覚えていない。
「いいから飲んどけ」
む、飲み食いさせとけば静かだと思ってるな? まあそうなんだけど。
男同士の飲み会っていいな。馬鹿話して酔って床に転がる――俺はディーンたちが持って来たこっちの酒しか飲まないし、【治癒】の効果がうっすら効いているのか、深酔いはしない。でもちょっと一緒に転がってみたり。
あれだな、飲み会の場所は床に座れる方がいいな。座卓と畳――いや、さすがにこの石の家に合わないから厚手の絨毯とクッションか。でも場所が三階の市壁側の部屋しかない。男が五、六人転がるには狭いな。
翌日は二日酔いもなく、朝の日課をこなす。リシュは今日も可愛いい。
本日は迷宮に持ってゆく保存食の準備とか、日常の料理に使う調味料の調合とか。そう言うわけで、まずは豚の背脂を鍋にかける。ふつふつと脂が滲み出て鍋を液体が満たしてゆく。焦げないように火加減を調整して、放置。
揚げ物用とリエット用にラードを大量に作る。リエットはレバーペーストよりもクセが少なく、ジャムより食べ応えがある保存食。迷宮への出発の二、三日前に作って持ってゆくつもりだ。
でも今日はコロッケ、コロッケ。唐揚げも揚げよう。千切りキャベツたっぷり刻んで、ついでに茗荷も刻んで冷奴。あとは蒸しなすを生姜醤油で。
野菜で健康的に見せかけてコーラでどん! 唐揚げとコロッケは定期的に食いたくなる。サクサク熱々の牛肉コロッケにかぶりついて、ほくほくのじゃがいもと牛肉の味を楽しむ。揚げ物と炭酸は罪の味。
ごはんの後は、納屋の一階で果物や畑から収穫した野菜をせっせと仕込み、干し野菜や酢漬け、煮詰めて瓶詰めにする作業をする。
この納屋の地下には半分埋まった壺にオリーブオイルを保存している。まだちょっとだけだけど、去年自分で絞ったやつ。
今年はワインもたくさん、ワインビネガーも作る気満々。バルサミコ酢なんて真面目に作ろうとすると十年以上かかるっぽい。気が早いことに大小の樽を用意してある、今年の秋の葡萄が楽しみ。
精霊がちらちら姿を現して、詰めるはずの瓶に先に入り込んだり、大きな桃の匂いを嗅いでうっとりしてたりする。精霊銀みたいに形を変えるとかはないけど、味が一段も二段も上がったり、野菜や果物がもともと持っていた薬効が上がったり。
精霊の出入り自由な納屋で作ったものはちょっと反則かもしれない。でも大量に作るから台所じゃ狭いんで許してもらおう。
自給自足スローライフは結構やることが多いのだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます