第613話 やる気をもらう
カレーにワインはどうなのかと、優雅に食べる執事を眺めながらラッシーを飲む俺。酒は飲めるようになったけど、まだ食い合わせというか、飲み合わせというかはよくわからない。
でもカレーと冷えたビールは合うような気がする。炭酸だし、以前見たCM映像的に。こっちはビールは常温だけどね、俺が知らないだけであるかもだけど。
デザートは苺のシュークリームにその場でアイス盛り。
「変わった食い物だよなあ。暖炉にあたりながら食うと、すげー贅沢してる気分になるというか、贅沢なんだろうな、これの材料。怖い答えがきそうだから聞かねぇけど」
ディノッソがシュークリームを食いながら言う。ちなみに手掴み。
「うむ」
ナイフとフォークを使って食べているアッシュ。
アッシュはアイスクリームよりふわふわの生クリームの方が好きなんだけど、シヴァが好きなんだよね。アイスクリーム。
そんなに顔に出ないんだけど、嬉しそうに食べてる。シヴァが嬉しそうに食べてるとディノッソもそこはかとなく嬉しそうなので、アイス盛りにした。ディノッソ家、お帰りなさいのご飯だし。
アッシュには預かってるシュークリームがあるし。
「ジーン、見て見て。これ、私が倒したクマ〜」
そう言ってティナが見せてきたのは、多分灰色熊の2本のツノ。
ツノが無事ってことは、頭からハンマーでどんっとやったのかと思ってたんだけど、そうでもない? いやでも後頭部からという線も。
「僕はこれ! 灰色狼!」
「僕もこれ! 灰色クーガー!」
バクとエンの手のひらにティナより小さいけど2本のツノ。
ティナのハンマー、バクの大剣、エンの片手剣。3人は俺が作った武器を愛用してくれてるようだ。
「3人ともすごいな」
エンのツノの一つは豆粒並だけど、エンには【収納】の能力がある。能力をつけた精霊は今も肩におり、リスの姿をしている。そのリスと俺の作った精霊剣と相性が悪いわけじゃないけど、両方に魔力を使うのは結構難しい、とディノッソが言ってた。
なので十分すごいんだと思う。こう、すごいかどうか判断する基準をどこに置いていいのかわからないんだけど。
「ジーンにあげる」
そう言って手を差し出してくる3人。
「ありがとう。じゃあ一個ずつもらう」
武器のお礼かな? ここはありがたく貰おう。
また島の塔のコレクションが増えた。嬉しそうに笑った3人が、今度はアッシュに何か綺麗な石をあげている。
「俺とシヴァからはちょっと珍しい食い物。いつも貰いっぱなしだからな。名前は忘れたけど、ラードで炒めると美味いぞ」
ディノッソが話している横で、シヴァが籠を持って微笑んでいる。
「ありがとう。俺としては手料理で十分だけど。――白い?」
シヴァの手料理は美味しいのだ。
「シモフリヘラジカツノですかな?」
籠の中身を見て執事が言う。
「ヘラジカ……」
「そう、そう。そんな名前だったな。寒くて、魔物の多いところに生えるんだ」
シモフリは霜降りだろうか。たぶんこの葉を覆ってる、白い毛のことかな? 形は確かにヘラジカのツノみたいに枝分かれしててちょっと肉厚。
ちょっと食べるの楽しみ。
アッシュを送り、シュークリームを渡して解散。久しぶりに子供達に抱きつかれて、ディノッソがきーっとしてほのぼのした気分になった。
『家』に【転移】して、暗がりのルゥーディルにびっくりしつつ、走ってきたリシュを受け止めわしわしと撫でる。
俺が家に入ると、暖炉のダンちゃんが火を入れてくれる。オレンジ色の揺れる光が部屋を照らす中で、リシュとしばらく遊んで過ごす。
ルゥーディルは光が届かないところまで移動した。リシュが闇を司ってるからって、眷属になったルゥーディルも暗がりにいなきゃいけないんだろうか。
ルゥーディル的には居心地のいい暗がりからリシュを愛でてるんだろうか?
精霊の感覚は理解できないところがあるからなあ。大抵そのまま受け入れてるけど、ルゥーディルが人型なせいでちょっと引っかかる感じ。
さて、明日はソレイユと会って、城塞がくっついた後の進展を聞いて、それによって用意する苗の種類と数を決めないと。
アミジンの人たちも交流してくれるというか、要望があれば色々協力してくれるらしい。彼らの土地側で綿花が栽培できそうだって建国の宴会の時にソレイユが言ってた。
遊牧民だけど、やっぱり定住したい人も一定数いる。女神もそれで狩りと農墾で2人だしね。
クリス像が祀られてるタリアの土地は順調で、青の精霊島と同じくブランド化に成功しつつ、世界にトマトを広げる拠点になってる。かりんとう饅頭ちゃんの問題が片付いたんで、近隣の地域も復活するはずだし。
俺があちこち泊まり歩くためにも、衛生観念と食材は広げないと! 子供たちも頑張ってるし、俺もがんばらないとね。
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