第567話 ハウロンのお誘い
集まるのはカヌムの俺の家、久しぶりのゲーム部屋。最近貸家に直接行くことが多かったからね。
食事は牡蠣のクリームパスタ、ほうれん草入り。牡蠣はぷっくりするまで炒めて、牡蠣の半分はアサリの煮汁と潰して混ぜて
ズッキーニにベーコンを挟んでアンチョビニンニクソースつけて焼いたやつと、チーズカツレツ。
「
「牡蠣も美味しゅうございます」
「美味いけど、集めたのがハウロンなところに不穏な気配がする」
ズッキーニを切って口に運ぶレッツェ。
微妙に警戒している様子。
「言うな、料理を食い終えるまで言うなよ? せっかく美味いもん食ってるんだし。うをっ!」
チーズカツレツのチーズに驚いているディノッソ。いや、そこは驚かなくてもいいよね?
「……」
ハウロンは目を合わせない!
「……ソースも濃厚でございますな」
執事は気づかないふりをしている。
「うちのティナが、しっかりしてるのに戦闘ではドジっ子気味でさぁ」
あからさまに話題を変えてくるディノッソ。
「精霊剣というか、ハンマーは?」
それに乗るレッツェ。
ティナには俺がリス付きデザインのハンマーを贈っている。重さが気にならず、大きくなったり小さくなったりする優れものだ。
「破壊力満点。ついでに振りかぶったハンマーがエンとバクに当たりそうになった。真面目に言うとドジっ子ってより、ハンマーの大きさの調整がうまくいってなくって、振り回されてる感じかな」
「自分が扱えるより、大きくしちまうのか」
「そそ。
わざとらしいやり取りですね?
「スピードも変わらないようにする?」
「いや、ティナに覚えさせる。てか、気軽に言わないで?」
ディノッソに却下される。
「よし! 食べ終わったわ。アタシの頼みを言ってもいいかしら?」
ハウロンがフォークを置き、ナプキンで口を拭う。
こっちの人、テーブルクロスで口拭いたりし始める場所あるんだけど、あれはどういう文化なんだろう。店側もそのためにクロスしてるみたいだし。
「まだでございます」
執事が笑顔で却下。
「早食いしてんなよ、大賢者」
半眼でハウロンを見るディノッソ。
「お前また何かやったのか?」
こっちを見てくるレッツェ。
「……」
なんでハウロンがおかしいと俺が何かやったことになるんだ? と思いつつ、心当たりはあるので自首します。
「いや、そっとほっぺた差し出されてもな?」
そういいつつ伸ばされるほっぺた。
右の頬を打たれたら左の頬を差し出しなさい。暴力に対して、暴力でもって対抗してはいけない――のか、はたまた右は左より尊いものなので、左出しとけなのか。とりあえず無抵抗です。
「え、見つけただけじゃなくやらかしてるの!?」
ハウロンが驚いてばっと俺を見る。
「ちょっ……」
それに驚いて、ワインをこぼしそうになってるディノッソ。
「本筋に入る前からカオスでございます……」
執事は微笑みを浮かべて余裕。
「まあ、なんだ。先にハウロンの頼み事とやらを聞いてからのほうが分かりやすいか?」
「心の準備的にもそっちの方がいいんじゃねぇ?」
言い合うレッツェとディノッソ。
「アタシの頼みは、巨石の時代の遺跡に一緒に行ってほしいってことよ」
「それだけか?」
「それだけよ」
レッツェの確認に断言するハウロン。
「他のやつが言ったら無茶だが、転移できるハウロンの頼みとしちゃ大したことない?」
ディノッソがワインを飲みながら言う。
「誘って来たのがジーンなのよ?」
「大したことになりそうだな……」
じっと見るハウロンから、グラスを口に持っていったまま顔を逸らすディノッソ。
「お誘いはソレイユとキャプテン・ゴートとハウロンにした。ハウロン、遺跡好きかな? って」
「好きよ? 好きだけどね!? 過去の失われた技術とか途切れた伝承を繋げる輪とか! でもアタシには絶対レッツェが必要なの!」
「いや要らないだろ。大賢者」
エキサイトしているハウロンに、レッツェがいつもと変わらない声で否定する。
「ジーンのあんまりな非常識っぷりに、自分の常識が揺らぐ気がして怖いのよ! 揺らがない掴まれる場所がほしいのよ!」
「大賢者の基準に俺を置くな」
「さすが、頼られておりますな」
「ジーン関係では間違いないだろ」
ちょっと、俺が非常識みたいに! でもテーブルクロスで拭く常識は持ち合わせていないから、こっちの常識があるかは自信ない。
「で? 何をやらかしたんだ?」
レッツェが聞いてくる。
「丈夫な足場にしようとしたら、巨石の時代の神と城塞が復活した」
ちょっと大規模でした。
「……」
「……」
「……」
「……巨石の時代の住人もコミだとか言わねぇよな?」
「城塞だけです」
怖いこと言わないでください! 無人ですよ、無人。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます