第332話 一日の終わりに
森から戻って2階で宴会実施。その前にみんな大好きカツカレー、ディーンの嫌いなニンジンスープ付き。
ディーンとクリスも呼んだ。ハウロンを紹介されて固まる二人。
「とうとう大魔導師まで……。氷の――奥さんを呼んだら、夢のパーティーまであと一人に……」
ディーン、令嬢と言おうとして回避したな? そこは気を使うんだ?
ディーンが好きな冒険譚はバルモアと結婚前のもの。でもバルモアの熱烈大ファンのディーンは、ディノッソの前では気を使い『氷の令嬢』とは呼ばない。結婚したら令嬢じゃないからね。
シヴァ自身も奥さんって呼ばれるのが好きで、あまり貴族だったころの自分は好きではないっぽい。
「変わった香りね? 漂ってくる匂いからエスの料理に近いのかと思ったけれど、見た目は違うわね」
紹介の後、並べられたカレーを前にハウロン。
「おお、カツカレーだ、カツカレー」
「クセになる味なのだよ!」
緊張気味だった二人が、カレーを前にはしゃぐ。ニンジンスープも食えよ?
パエリアとかチャーハンは好評だったが、二人に白飯は不評だった。味のないご飯が何のためにあるのか分からんとか言っていた二人だが、カツカレーを食べて翻意した。どうも二人にはご飯のほんのりした甘さとか、その辺は感じられないらしい。
「この不思議な食事も受け入れているのね」
ため息混じりのハウロン。言外に単純でいいわね、の副音声が聞こえた気がした。
「ん、美味しい」
それでも一口食べて感想を漏らす。
食にこだわらず、腹が塞がればいいというタイプではあるけれど、味もちゃんとわかるようなのでホッとしている。
「おかわり」
「早!」
カレーは飲み物なディーンがもう食べ終わった。
「俺も」
ディノッソも早い。
「……」
カーンが無言で皿を持ち上げる。
カヌムの家は、暖炉にいる細かいののような、普通の家にいるレベルの精霊に制限していたんだけど、台所周りと二階のここと――調理スペースは少し解禁しよう。料理に影響があるように。
食事の後はワイワイと酒盛り、ハウロンは見事なからみ酒を披露してくれた。
「何であれに対処できるのよ! 超能力!?」
「いや、俺は普通だろ。ジーンがずれてるだけで」
今はレッツェが絡まれている。
俺も絡まれたが、飲まされても酔わずに正気だったのが面白くなかったのか、対象が変わった。すでにディノッソ、ディーンとクリスは撃沈済み。
「俺はジーンの行動の見た目を、俺の普通に当て込んだだけだ」
「何であれを見てそんなに揺るがないのよ!」
「動揺はすでにしまくった後なだけだな」
レッツェがグラスを空けるたび、ハウロンが酒を注ぎわんこそば状態。ちなみに飲むのをやめるとキスされそうになるので、飲まざるを得ない。
そのハウロンが撃沈し、今日は早い時間にお開き。飲むペースが早かったからなあ。
「どうしようかこれ」
床に転がり、机に突っ伏す面々を見ながら言う。
「転がしておいてもよろしいかと」
「俺が火を絶やさん」
執事もカーンもこのまま転がしておく一択だった。
まあ二階は板張りだし、火を絶やさなければ大丈夫かな? 【収納】から羽毛布団を取り出して、掛けて回る。
「じゃあ頼む。おやすみ」
執事とカーンに後を任せて、俺はリシュの待つ家に転移。
リシュが駆けてきてクンクンと匂いを嗅ぐ。酒臭くてすまない。リシュが気が済むまで匂いを嗅がせ、その後は一緒に遊ぶ。
夜の室内遊びは、俺が物を隠してリシュが探すゲームや、綱の引っ張りっこが多い。綱を引っ張る遊びは、必ず離させることとセットで遊ぶ。
綱は俺が作った特別製。それでもやっぱりすぐにほつれてダメになる。リシュの引っ張る力が強くなったからだ。俺も力はあるので平気なんだが、綱はそうもいかない。
たくさん予備は作ったが、盛り上がってきたところで切れるのは頂けない。現在、強い綱の素材を模索中。――リシュが元気になって何より。
その後は、風呂に入って、牛乳を飲んで、少し精霊の名付けをして、そしておやすみなさい。
ベッドは柔らかく、ほどよく固く、シーツの肌触りは滑らか。自分の体温で布団が温まってくると、すぐに眠気が訪れる。
眠りに落ちる前に、リシュが隣の籠に収まっているのを見て幸せな気分になる。今日も一日、楽しかった。
できれば一緒に過ごした友人たちも、楽しい気分で眠りについていてくれたら嬉しい。――まあ、今日は酒の酔いで眠りに叩き落とされたって感じなんで無理だろうけど。
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