第648話 エクス棒
「祭りか?」
「あ、ね……キャプテン・ゴート」
いかつい男の肩に乗った猫船長登場。
「ファラミア、ありがとう」
ソレイユが猫船長の斜め後ろにいるファラミアに言葉を掛ける。
少しだけ身を沈めてそれを答えにするファラミア。どうやら猫船長をここまで案内してきたようだ。
ファラミアが留守を預かってるのかと思ってたんだけど、居城の主要メンバー全員がここにいる気配。城は空っぽ? いや、アウロとキールの下の不穏な名前の兄弟がいないな?
「キャプテン・ゴートも来てたんだ?」
「ああ。ソレイユと商談ついでに『
猫船長が答える。
「食べながら話そうか。挟むの何がいい?」
「アンタ、ここでも食い物配ってるんだな」
猫船長と乗り物になっている船員さん、ファラミア、アウロとキールと――おかわりも含めて忙しいぞ?
猫船長は豚肉の塊を柔らかく煮込んで、細かく切って繊維状にしたやつメイン。ファラミアはスパイス入りのソースに牛肉を漬け込んで焼いた結構肉肉しいやつ。
「うまいな」
猫船長の感想はシンプルな賛辞。
ファラミアは無言で2つ目を食べている。しかも同じやつ、実は肉好きなのか?
「もうあちこち見て回ったんだよね? 何か島に足りない施設ってある?」
海の男猫船長、きっとあちこち行って色々な港町を見ているはず。何か意見はありますか?
「ない。むしろ見たことのない施設で溢れている。利用する側の知識の方が足りてないな」
うん。定住してる人はだいぶ慣れてくれたけど、観光客は戸惑ってる人が多いかも。住人の中にも、初めは珍しがって使っても面倒なはずの昔からの手順に戻ってる人もいる。
俺が作った仕組みが全部正しいとは思わないんで、衛生的に問題ないようならやりやすい方でやってもらって構わない。
「それと、この島の『精霊の枝』はティルドナイ王の持つ『王の枝』のものだな? 火の国に所属する町とは思えん水量の豊かさだが……」
猫船長が言い淀む。
火の国の割に水の精霊の方が大分多い上、エスの神々の影響もあまり感じないとか思ってるんだろうな。
ごめんね、あの『精霊の枝』は飾りなんだ。シャヒラの黒い枝は黒精霊が寄ってくるところ、白い枝で相殺になってるんで、普通黒かかわらず精霊が寄ってかな? くらいの効果です。
ハニワの方にも精霊は寄ってくるけど、魔物避けの効果はないし。一応でも、なんか快適の効果は出ているはず……。たぶん。
「猫……キャプテン・ゴートもおかわりいる?」
お口が小さいからファラミアにも食べる速度で負けている。それでももう一つ食べ終えた猫船長におかわりを聞く。
あ、猫船長は船員さんから降りて、商品を受け渡しするカウンターにいます。ちゃんと船員さんにも食べてもらってるよ!
「もらおうか。――もう猫船長でいい」
後ろに耳を倒して不本意そうだけど、オッケーが出た。
「『精霊の枝』の、あの真ん中の存在感のあるアレはなんだ?」
「なんだと言われましても、『精霊の枝』だな」
ハニワでしたか? アフロでしたか?
「俺の伸ばした枝だな! ご主人は精霊の影響を受けてる人間を、名前で呼ぶこと避けてるんだな。ご主人、俺にもおかわり! 辛い感じでお願い!」
エクス棒が会話に混ざる。
名前で呼ぶことを避けている。そう言われるとそうなのかな? 自信ないや。クリスの二つ名で呼んじゃうのと似たようなものかな? 気をつけよう。
ただ、猫船長が精霊の介入で不安定な存在なのは確か。精霊の呪いで猫になってるけど、完全に人間に戻れないほどの呪いじゃないから、揺らいでるんだよね。
「ちょっと待って。はい、猫船長」
具材を挟んで最後にライムを絞って皿に乗せる。
他は紙に挟んで渡してるけど、猫船長は手で持てないからね。
「いつかの……。『王の枝』様」
そっと耳が後ろに倒れる猫船長。
「棒だぞ! 俺はコンコン棒EX、エクス棒って呼んでくれ!」
「棒か」
猫船長の耳がさっきより後ろに倒れて完全にイカ耳。
ごめんね、気さくで。俺が『王の枝』がどんなものか知らないままもらっちゃったもんで、あんまり自覚がないんですよ。国にとって大切とかこう、ね? コンコンするのが目的だったし。
「いや待て。枝?」
「おう! 俺はご主人の『王の枝』だ!」
タコスをごっくんして元気よく答えるエクス棒。
「違う。あれがこの『王の枝』の『精霊の枝』ならば、一つの町に『精霊の枝』が2本?」
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そして遭遇を忘れていて訂正。
・コミック 5巻発売しました!
・カクヨムネクスト期間限定35話まで無料です
(たぬきとごろごろしてるので、何かしだすのも女性キャラが出るのも遥か遠いぞ)
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