第121話 予想外
図書館にこもって数時間、隙間材判明。
石と石を積んだ時に接着剤としてモルタルや漆喰を入れてたんですが、どうやらそれが蜂蜜と小麦粉らしいです。
うん、却下!
いくら精霊が寄り付きやすくて、建物がなぜか長持ちする不思議が起こってもダメ! 日本人のメンタル的に……っ
百歩譲って森に建設予定の小さな家なら試してみてもいいけど。あそこ街中より精霊多いし。
灰の方も判明。ツォラ火山の火山灰と石灰、火山岩、海水を混ぜて作る。この火山灰が海水によって溶解したときに生まれる結晶が強いらしい。
ツォラ火山はあれだ、風の大神の前の大神――精霊が住んでた場所だそうで、今も眷属だった精霊が多く、塵のように細かいのが灰に混じっているのだそうな。
断然こっちです。最初から精霊入りか、後から精霊入りかの違いかもしれないけど、蜂蜜と小麦粉は蟻がたかりそうだ。
よし、廃坑から戻ったら火山灰集めをしよう。海に面した建物だし、
カダルが言いたかったことは物と精霊のバランスが大切ってことだろうか。物を作っても精霊が生まれたり、入り込める余地を残すこと。
ガラスの色とか日本の知識で作っちゃったけど、色を出す方法とかもうちょっと精霊混じりな方法というか素材があるのかもしれない。これからはそれらしい場所や物は
日本でも金のかからない逃げ場所として図書館によく行ってたせいか、ここはすごく落ち着く。もうちょっと居たいけれど、今日は早めに帰って明日の弁当を作らないと。
司書さんに挨拶をして図書館を出る。最初、この崩れかけた寺院は心配になったものだが、よく見ると崩れてはいけない壁や柱は少し欠けがあるものの全部無事だ。どうやらわざと崩してあるらしい。
わかるようになったのは、俺の家作りの知識が増えたからだろう。わざとなのは分かったけれど、お布施はちゃんとしてゆく。
家に帰って、リシュと遊んで夕食。計画通りラーメン!
豚と鳥の雑味を限りなく取り除いた出汁と鰹節効いた魚介出汁の混合、醤油。麺は中太ストレート。チャーシュー、メンマ、海苔、半熟よりは固めのゆで卵。
パリパリの羽の生えた焼き餃子。これは以前、たくさん作っておいたもの。
野菜はキャベツ。加熱したキャベツに、ニンニクのみじん切り、すりごま、砂糖、塩、ごま油をあえるだけの手抜き。お好みで鷹の爪少々。
幸せ幸せ。
あ、明日は豚の角煮持ってこうかな。醤油を使ってるから家の外では叱られるか。食材の選定が面倒すぎる、早く色んな野菜を出回らせないと。
食材に下処理をしたり、その他準備を終えて風呂に入る。しばらく入れないだろうからゆっくり楽しもう、そう思っていたら珍しくリシュが来た。バスタブの側面に足をかけて「何をしてるの?」的にこっちを見上げてくる。
まだ小さいからバスタブの中は見えない。ちょっと湯をすくってリシュの鼻先に持ってゆくと、匂いを嗅いで納得したのか、それとも興味を失ったのか、新しい遊びを探して風呂場から出てゆく。
リシュは扉の通り抜けをするので、家の中も外も自由自在なのだ。
翌日は少し早く起きて、シーツ類をひっぺがして脱ぎっぱなしの服と一緒に洗濯袋に詰め込む。
日課の散歩、そのまま畑の見回りをしていくつか袋に詰め込む。家は水路というか小川が縦横に走っているので問題ないんだけど、俺の家のある国は夏に雨が降らないから青菜の季節は秋から春にかけて。
果樹の植えてある場所ではオレンジとレモンを収穫。なんとなく春とか夏のイメージがあったけど、みかんと同じく冬が旬。自らの名を色名にした果実、稀少で高価らしいです。ついでにみかんも収穫。
家畜に餌をやって、鶏小屋から卵を失敬。
お腹が空いたところで朝ごはん、リシュには水と本日は豚のロース。自分にはご飯と味噌汁、焼き鮭、卵焼き、万能ネギたっぷりの豆腐、お漬物。由緒正しい朝ごはん、どの辺でこの形ができたのか知らないけどな。
さて、待ち合わせ時間になるので移動しよう。
コートを羽織って【転移】。集合場所はレッツェたちが住む貸家、ディノッソ一家は俺の家を通り抜けてゆくので、まずはそれを待つ。
コーヒーを飲んで図書館から借りてきた本を読んでいると、裏口が叩かれた。扉を開けると俺と同じように洗濯物の袋を抱えたディノッソ。
「おはよう」
「おう、調子はどうだ?」
「いたって普通」
ディノッソに道を譲って一家を中に招き入れる。
「おはよう、ジーン!」
ティナの両手を挙げたハグのポーズに屈んで合わせる。
「おはよう!」
「おはよう〜!」
ティナの後、バクとエンにも流れるようにハグ。
「おはよう、よろしくね」
最後はシヴァにハグして、扉を閉める。
程なく全員合流、全員サンタ。
洗濯屋経由で貸し馬屋に行くのでこうなった。冒険への旅! という風では全然ないけど、帰ってきて洗濯物にキノコが生えてても困るししょうがない。
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