第640話 地形変化の原因……?

 ハウロンが山の様な資料を持ってきた。本の形状をしているものがほとんどだけど、石板、水晶球みたいなのも混じってる。


「このあたりが『滅びの国』関連の資料よ。半分は土地や歴史についてだから、今回は必要ないものだけれど」


 今回はハウロンのご先祖が設置した魔法石の場所の確認がメイン。


 魔法石は全部で12個あって、4個は王宮の庭にある。王宮の外にある8個のうち、4つは頑張って確認したんだけど、石の下だったり埋まってたりで、道具を持って出直そうってことになった。


 予定外のことだったし、暗いところで全員で地図を見ながら、その辺の棒で掘ったりしてたからね。どう考えても明るいところで確認して、準備して出直した方が効率がいい。


 ついでにもっとご先祖の魔法陣の効果と意味を詳しく調べること。と、言っても一度ハウロンが調べた後なんで、あんまり新しいことは出てこなさそうかな?


 借家には先日『滅びの国』に行った面々が集まっている。食事を終えて、コーヒーを出したところ。


 メインになるのは、魔法石の場所を書き込んである古地図――ちなみに精霊の悪戯防止に本の形状――なんだけど、この地図から読み取れる場所と、魔法石が実際あった場所が数メートルずれてたりした。


 全体図、魔法石が置いてある場所周辺ごとの写し――これはレッツェとクリスがすでに完成させてる――をテーブルの中央に置いて、資料から抜き出したことを書き入れていく方式。書き込みをするために、余白を大きくとってある。


「まず風見鶏を据えたこの魔法陣は『朝焼けの法』と名付けられていて、効果は『滅びの国』の黒い影たちを外に向かわせないこと。周囲の8個は朝焼け色の魔法石で、中心の4つは夜色の魔法石が使われている――必然的に『朝焼けの法』の中心となる王宮の庭には、影たちがひしめいていると思うわ」


 作業を始める前にハウロンのまとめ。話しながら余白に『朝焼けの法』と書き入れていく。


「うへ、あれがわらわらいるところに行って確認するのか」

「ジーンのランプでなんとかなりそうかい?」

ディーンとクリス。


「『朝焼けの法』ってけっこう大規模で強力みたいだけど、なんとかなると思う。今だって黒い影は島の中をある程度自由にうろついてるわけだし、俺たち分くらい移動はできるだろ」

あくまで島の中に閉じ込めるための魔法陣で、動けないようにするようなものじゃない。


「『朝焼けの法』の魔法陣はこれね。同じ物が王宮の庭の魔法石に刻まれているはずよ。魔力でもって刻んだ物だから、見えないけれど」

ハウロンが言う。


 『滅びの国』で確認した魔法石は、薄青い色・・・で特に目立った傷も汚れみたいなものもなかったはず。魔力もがんばれば見えるかな? というか、魔法陣も本来は見えなくて、俺の見た魔法陣のオレンジが石の色としてハウロンたちに見えている?


「魔法石は風見鶏に嵌められたもの以外、同じ高さに据えられているわ。間隔はこっちの図の、この魔法陣を参考に決められてるみたいで、ちゃんと地図と重なるわ。だから、大きく場所が違うってことはないと思うのよね」


 元になった魔法陣も見せてもらう。


「特定の範囲の中で、方角でぐちをわからなくさせてそこに留めるのかな?」

「ええ。『朝焼けの法』は同じように外の方角を誤認させつつ、加えて王宮の庭に夜を設定した上で、島の周囲を朝だと勘違いさせて、陽を嫌う影たちを外に出られないようにしているの」


 ってことで、資料あさり。『滅びの国』のできた理由とかは、ハウロンが解説してくれたやつを長々と書いてあるだけ。『王の枝』が決定的に狂った理由は、推測なまま。


 魔法石の位置の確認の方は、ご先祖様のメモ頼り。古地図には、小さな魔法石のあり場所を特定できるよう、目立つ目標になる物からどこそこ、と記入はある。壁のこの紋章の下、右に1メートルとか、敷石3個目とかね。


 資料の中のメモには新しい内容なさそうだなあ。


「ハウロンが、この古地図に書かれてる魔法石の場所はどうやら間違ってないって特定してるんだから、実際にずれてるつーのは、地形の方が変わったんだろうな」

資料を一冊つまみ上げて、レッツェが言う。


「『滅びの国』は永遠を爆発直後の状態で罪人が彷徨い過ごす国。なのに地形が変わっているっていうのが飲み込めないのよねぇ」

ハウロンが頬に手を当てて困った顔をする。


「風の大神ランダーロの揺れじゃないのかい? 暗き氷の大狼神たいろうしん――との戦いで、大地が揺れ崩れたと聞くよ」

クリス。


「ああ、最近も揺れはあったわね……」

「あれは震度3くらいじゃない?」


 可愛さ一番選手権でリシュが勝った時、ちょっと揺れた。その揺れで、みんな死にそうな顔してたけど、何かが崩れるほどの揺れじゃなかった記憶。


 こっち、ほとんど地震ってないみたいで、みんなすごく驚く。

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