第565話 おうかがい
「こんにちは、わんわん、アサス」
そういうわけで、わんわんにハウスがそろそろ届くことを知らせ、2人に祭りみたいにするかどうか聞くために地下神殿に来た。
「うう、古き神々に気安すぎるわ……」
ハウロンが後ろでうめいている。
「来たか、人間!」
床で伏せていたわんわんがこちらにやってくる。
「人間、エスをなんとかしろ! 隔日で来る!」
アサスがガタガタ言ってる。
「色恋はもともと不得意だし、人の恋路を邪魔すると馬に蹴られそうなんで、自分でなんとかしてください。わんわん、これお土産」
ちょっと肉がこびりついたドラゴンの骨です。
「む、わんわんに捧げ物か! よいぞ、受け取ろう!」
嬉しそうに骨を咥え、かじり始めるわんわん。
「待て! 愚弟にだけか!?」
ガタガタアサス。
「アサスの好物しらないぞ」
「魚だ! 魚を捧げるが良い! いつか我が身体を食った魚ならばなお良い! 我が体が戻ればなお良い!」
ちょっとアサスがガタガタ言ってることがえぐいんですが。
「まあいいけど。焼いたやつ?」
「蒸したやつだ!」
「……これでいい?」
たぶんヤシの葉で包んで蒸し焼きとかそっち方面なんだろうけど、俺が今持ってるのはシャケのちゃんちゃん焼きだ。
ガタガタ言ってるのが、台座の上なんで渡せないんだけど、出したら細い植物のツルが伸びてきて、ちゃんちゃん焼きを持ってった。
「む、うまい! 次回はエスで獲れた魚を持つがよい!」
そう言うと、あとは黙って食べ始める。
「……アサス神……嵐と戦の神…………」
カーンの声が沈痛!
「今日来たのはわんわんの家――台座が出来上がったんでお知らせ。運び込む時、お祭りする?」
「わんわんは静かな方が好きぞ。ただ、外で騒ぐ分にはよい。漏れ聞こえる程度の音楽と、愉快な声は好きだ!」
わんわんが骨を齧りながら答える。
「そろそろエスの溢れる季節が巡る、陽の光を我に当てよ。さすれば芽吹いた苗は育つであろう」
アサスは明るいところに移動したいようだ。
「だ、そうです」
「……分かった」
うなずくカーン。
「地上の神殿の整備も終わっております。そこに嵐と戦の神の台座を設置して、アサス様の台座を運び込み、神殿をお移りいただきましょう。お移りいただいた後は神事として町の者全員で酒宴をはるのでよろしいでしょうか?」
ハウロンが改まってカーンに尋ねる。
「そのように計らえ」
「はい」
軽く頭を下げて返事をするハウロン。
国に関することの確認は、時々堅苦しくなる。
でも地の民が
でも設置までは自分たちでやりたがるだろうし。
「こうしてはいられないわ。神殿の飾り付けと、酒宴の手配をしなくちゃ。でもエス様の訪れもあるのよね? 絨毯やクッションの類は持ち込めない……。そうすると花かしら? この国で花はまだ少ないわ。旱魃の影響の残る内海周辺も。それ以上に手を伸ばすまでツテがないわ――ジーン、ソレイユに頼めるかしら?」
考えをまとめるためか、ぶつぶつ言ってたハウロンが俺を見る。
「大丈夫だと思う、花は島にあるし。でも急な依頼は割増とられるぞ」
俺の塔の風呂の周りの薔薇やらを切ってもいい。
酒は小麦の代わりになんとかいう神殿から買う話をしてた。これを機会に、俺が頼んだ量よりだいぶ多く取引するって。売り先はまだ決まっていないはずだ。
「初めての神事ですもの。ここまでみんな頑張ってくれたし、慰労の意味でも少し贅沢しましょ。多少かかっても構わないわ」
笑顔のハウロン。
「建国の祝いでもあるか。それなれば最初だけ姿を見せてやろうぞ」
食べ終えたアサスが言う。
話、聞いてたんだ?
「愚兄だけでは寂しかろう、なればわんわんも参加するぞ!」
骨から顔を上げて言うわんわん。
「ありがとう存ずる」
「二柱の神の御心に、感謝いたします」
頭を下げる2人。
柱に顔だけのアサスと、わんわん降臨か。ベイリスとシャヒラの方が絵面良くない?
「この国に王の枝があるだろう? 神事の時に祝福を授けようぞ」
「人間の枝だろう? わんわんもしてやっても良いぞ!」
えーと。この場合の枝ってカーン?
そう思ってカーンを見たらすごい顔してた。ハウロンは俺の腰のあたり――エクス棒を見てるけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます