第499話 契約相手
こんにちは、メール小麦を普通の小麦に替えるには、旱魃から速く普通の気候にして、小麦をたくさん収穫してもらうしかないけど、そもそも普通の小麦が行き渡ってるなら、俺が持ってるメール小麦放出しなくってもいいんでは? ってなってるジーンです。
猫船長に何往復させる気だ! って叱られました。いいんですよ、一回くらいで。
そして帰ったらリシュにいつもより長くふんふん嗅がれております。やはり猫は気になるんだろうか。
リシュと取ってこい遊びをやって、こしょこしょと撫でながらブラッシング。リシュの毛は絡んだりしないけど、ブラッシングは気持ちよさそうなのでマメにしている。
さて、飯。何食べようかな?
すりおろした山芋に醤油と鰹出し汁、砂糖少々――めんつゆ作って【収納】しとこうかな。これをスキレットで焼いて、マヨネーズを掛けて彩に小ネギを散らす。卵の黄身を半分。
枝豆のガーリック醤油焼き、鳥手羽、キュウリとナスの漬物。そしてキャベツたっぷり焼きそば。
ふわふわの山芋、焼きそばのソースの匂いに負けないニンニクのきいた枝豆、歯応えが変わる漬物。鳥手羽も美味しい。
たぶんここでビールなんだろうけど、飲み慣れてないからコーラで。ぷはっとして幸せ。
醤油の匂いもソースの匂いも、食欲をそそる。『食糧庫』と【全料理】を選んで大正解。
明日の朝はご飯と味噌汁、金目鯛の干物、蕪の漬物、豚味噌を作ったから朴葉焼きにしよう。
みんなと食べる時は洋食が多いから、一人で食べる時は日本食(?)が多くなる。日本にいた時、食事は適当に済ませていたことのほうが多いけど、こっちにきてから色々食べたくなった。ないと思うと食べたくなるよね、懐かしいというのもある。
明日はソレイユと打ち合わせして、カーンの国との交易の話しなきゃ。島からは面倒だろうから、やりとりはナルアディードに持った商会とになるんだろうけど。
でも、海の移動はともかく、エスから先への移動は伝があるかな? その辺確かめないと。ナルアディードの海運ギルドとも繋がりがあるみたいだし、大丈夫だとは思うけど。
風呂に浸かってリシュの隣で眠る。
で、翌日。
「と、言うわけでメール小麦を積んだ船が来るんだけど、どこで受け渡す?」
島の執務室でソレイユに聞く。
メールの地から海峡を通ってくると、エスのほうが近い。ナルアディードはいろんな船が入れ替わり立ち替わりする交易の中心だけど、港が狭い。積み替えるならエスの方が楽だと思う。
「ナルアディード一択。ナルアディードの名があった方が価値が上がるのよ。もう何件か希望が来てるし、船から船に荷の移し替えをすることになるわ。あなたが運んでくるんだと思って、メール小麦が予定通り手配できなかった場合の保証を大きくしちゃったんだけど」
ため息をつくソレイユ。
「ああ、もし失敗したらその時は俺が運んでくるから」
猫船長なら大丈夫だと思うけど。
ファラミアからお茶を受け取って飲む。
「とりあえずメール小麦は塔の倉庫にも詰めとくから、こっちに運んで料理に使って」
「ううう、高級品」
今飲んでるお茶もだいぶ高級だと思うけど、ソレイユはどうも対価を払わず目の前にある高いものに弱いらしい。
「船が運べるのは船の数だけだけど、持ってこられるのはさらに増えたから」
「至極当然のことを言っている風だけど、おかしい……」
頭を抱えるソレイユ。
「それで前にちょっと話したエスの先の新しい国との取引の話、とりあえず小麦を運ぶとこからお願いしたいんだけど」
「エスの運搬業のいくつかに当たりをつけたわ。普通に取引にいい相手と、船ごと買取できそうな相手。どっちがいい?」
商売の話になると元気なんだよな。
「んー。ちょっと後で聞いてみる」
多分、カーンの国はエスとの取引もすると思うんだよね。
「我が君、移住希望者の中にあちこちの手の者が紛れ込むようになりました。弾いておりますが、念の為探りを入れてきた者たちのリストを」
商売の話が終わったところを見計らい、アウロがそう言って紙を何枚か渡してくる。
「うわ、多い!」
国やら個人名っぽいのやら、ずらっと並んでます。
「まあ、ナルアディードのギルドから、マリナ、エスまでこの島に興味津々ってとこだな」
キールが言う。
「興味を持つな、と言う方がおかしい。この島は領主をはじめ環境が素晴らしい」
アウロがなんかさらっと俺を上げてくる。
脳筋キールとなんかおかしいアウロ、残念な美形二人組。
「この島に住めるならスパイじゃなくって、当主その人が来そうな勢いだけれどもね。立場的にあなたが移住してどうするのよ! みたいな方からも来てるわよ、申し込み」
げんなりしているソレイユ。
まさかどっかの国の国王とかから申し込みあったとか言わないよね? こっち人口3000人くらいでも、国を名乗るからな、油断してるとあり得るところが何とも。
「あ、そうだ。これ船の契約書、ソレイユに渡しとく」
「ありがとう、もう契約までいってるのね。相手は私の知ってる名前かしら?」
そう言って丸められた猫船長との契約書を開く。
「肉球……?」
ああ、うん。名前書いてないね!
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