第158話 変化した?
ソーセージを焼いて、ホットドッグパンに挟む。ちょっとはみ出すくらいが正義!
ちょっと遅い昼である。
「辛いのだめな人〜?」
「はーい!」
エンが手をあげる。
「じゃあ、ちょっとな」
マスタードを少し、かわりにケチャップをたっぷりスプーンでかける。専用の容器が欲しいなこれ。
家で刻んできた玉ねぎ、きゅうりのピクルス、ビーツのピクルス。他にザワークラウト、溶けやすいチーズ、チリビーンズ。
「ほら、あとは好きな具乗せろ。チーズは焚き火で溶かしてかけるといいぞ。大人どもは自分でどうぞ、こっちのやつは辛いから気をつけて」
きゅうりのピクルスを刻んだものに似てるけど、こっちはハラペーニョなので注意をする。
コーラといきたいところだけど、コーヒー。パンの表面は薄くカリっと、なかはふわふわ、じっくり焼き上げたソーセージ、ケチャップとマスタード、玉ねぎとピクルスを崩れる寸前まで盛ってがぶっと。
幸せ、幸せ。
「いいなこれ、楽しい」
子どもたちが気を付けつつも具材をこぼして、わいわいしながら挟んでる姿を見てディノッソ。
「食べやすいのもよいですね」
「何よりおいしいのだよ!」
復活した執事と相変わらず身振り手振り付きで大げさなクリス。
「すげー、精霊が固形物くってんの初めて見た」
「うむ」
エクス棒に目が釘付けのディーンとアッシュ。
ホットドッグもエクス棒が好きなジャンクカテゴリに無事入ったらしい。だがしかし、その口はどうなってるんだ? 顎からはみ出してないか? ジンベイザメ方式?
気のせいかもしれないが、大口を開いて自分の胴体くらいあるホットドッグをがぶっとやってるのを見ると疑いたくなる。
「冷静に考えると、俺にも見えるし剣じゃ斬れないしで、相当強い精霊なんだろうとは思うんだけど」
思うんだけどなんだ? ディーン。
「ジーンの連れてる精霊ってワンコといい、この棒といい反応に困る」
「何も困らないだろう?」
「いや、まあ変わんねぇけどよ」
そう言ってちらっと執事を見るディーン。
執事は何で目頭を押さえてるのか。
食後はちょっと魔物を探して周辺を探索だけど、俺は前半馬の番。ルタのブラッシングをして、他の馬にも軽くブラシをかけて、ルタのブラッシングをして、他の馬に軽くブラシをかけて、ルタの……。
「ジーンはマメだな」
隣でアッシュが自分の乗ってきた馬にブラシをかけながら言う。
一頭終わると自分の番だって顔をしてルタが目の前にくるもんだからつい。
「出会った時は変なやつだとは思ったけど、こんなに甲斐甲斐しいやつだとは思ってなかったな。つんけんしてたし――まあ、俺と妹が原因だって今ならわかるけど」
同じく、馬にブラッシングしているディーン。リシュの時といい、けっこう動物好きらしい。
他に残っているのはクリス、レッツェ。なお、執事は「魔物に八つ当たりしてまいります」といい笑顔で言い残し、先発隊に参加。
「解放された直後で、全く我慢するつもりがなかったから。悪かったな、あの時また森で会えて良かったと思ってるよ」
姉のおかげで基本人は信用ならなかったし。
「お前……。ルタにもしゃもしゃされながら言われてもな。あと今は我慢してるのか?」
視線をそらして自分の髪をくしゃくしゃするディーン。
「いいや? 自由に生きてるだけだな」
俺はルタに現在進行形でくしゃくしゃもしゃもしゃ髪を食まれている。
「私も森でジーンに再会できて良かったと思っている」
「ありがとう」
アッシュの言うことは毎回ストレートでちょっと照れる。すごい難しい怖い顔だったりするので、一瞬思考も返す言葉にも詰まるんだけど。
「俺も良かったよ、精霊のことを抜きにしても」
ブラシを持つ手元に目を向けながらボソッと言うディーン。
「何かね、青春かね!?」
「いや、青春は歳でひっかかるだろ」
ディーンの声よりむしろ声を押さえてるつもりらしいクリスの声の方がでかい。
二人はそばに生えてた薬草を採取し、より分けている。
「俺が呆けてた時の詫びをしてただけだっつーの。先発隊が戻ってきたぞ」
ディーンが言い終わる前に、ディノッソたちが姿を見せた。
「ただいま〜」
「たっだいま!」
「ただいまっ!」
子どもたちが駆けてきて、その後ろにシヴァとなんか疲れた感じのディノッソ。
「アッシュ様、ただいま戻りました」
最後に笑顔の執事。
「すっきりしたのかね?」
「ええ」
「なら良かった」
主従の会話は淡白だけど、ディノッソがそんな二人を良くねぇ、良くねぇよという目で見ている。
何かあったというか、執事が何かしたんですかね?
「苦労性だな、ディノッソ」
「半分以上はお前のせいだからな!?」
「参加すらしてないのに!?」
理不尽!
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