第625話 ジーン、説明をする
「ドラゴンの財宝が巣材って、言い得て妙ね。自身の属性を落ち着かせるためと、子を育むために必要なものらしいから、確かに巣材っぽいわ。でもなんでそんな危ないことしてるのよ? ドラゴンの財宝に手をだしたら、怒り狂うでしょ?」
ハウロンに聞かれる。
確かにドラゴンの守る財宝を手に入れに行く話は物語によくあるし、ドラゴン怒るよね。
「確かに、急に家に来てベッドの端ちょんぎってったら俺も怒るけど。ちゃんと声かけて貰ってきたから」
許可はもらいました。
「ドラゴンの財宝への執着は凄くて、他者が触れることを極端に嫌がるのよ? 声かけたくらいで、どうにかなるものじゃないわよ。場合によっては追ってくるわよ?」
「好きなだけ持ってけって言われたから大丈夫」
あと、むしろ宝石を貰わなかったら追って来たというか、ついて来る気配はありました。
「どんな状況よ!」
ハウロン、ツッコミは叫ばなくても大丈夫だぞ。
「前提として、このランタンを造るにあたり、ドーム部分は光の精霊か風の精霊の影響があった方が良さそうだったんで、魔物化したドラゴンの魔石なら風属性ついてていいんじゃないかって」
「……ドラゴンは風の精霊を体に棲まわせている、という文献はあるわね。本当なら、魔物化した後も風の精霊の影響は大きいでしょう、特に魔石は」
苦悩している顔だけど、俺がドラゴンに至った考え方は理解してくれた様子。
「で、ドラゴン落ちてないか見に行ったら、落ちてなかったけど詰まってた」
「詰まってたって何!? ドラゴンは普通、落ちてもないし、詰まってもないから!!!」
前回は落ちてたんですよ。
「その詰まってた方は魔物で、洞窟の先にいるドラゴンと戦っている風だったんで、後ろから失礼して倒して――」
「簡単に倒さないで!?」
苦戦はしたくないです。
「その先の巣にいたドラゴンが、前に拾ってきたドラゴン肉の親で――」
「ドラゴン肉の親!? 食べた方!? 食べてない方!?」
ハウロンがだんだんパニックを起こし始めている気がする。
「まあ、食う方は全く問題なかったんだけど、宝珠が欲しいって言われて、返したことあったんだけど」
「いつの話!? 私、聞いた!?」
話したかどうか曖昧だけど、叫ばれた記憶がないから言ってない?
「その宝珠を使って、卵を産み直して巣に籠ってたところを、魔物のドラゴンに襲われてたみたい」
「ドラゴンって宝珠を使って卵を産むの? それはそれで詳しく聞きたいんだけれど!」
「そういうわけで、なんかドラゴン的には二回俺が助けたことになってるみたいで、巣材は好きに持ってけ状態でした」
とりあえずハウロンの叫びをスルーして話しきった。
「どこ、どこから突っ込んだらいいの? 聞きたいことが山ほどあるんだけれど、何を主点にすればいいのかさえ定まらない……っ!」
身を捩ってクッションに顔を埋めて頭を抱えているハウロン。
とりあえず香辛料の効いた甘いお茶を飲みながら落ち着くのを待つ。お菓子の方は1つで十分です。
「……ハウロンの休憩時間っていつまでだっけ?」
俺がハウロンの意見を聞きたいところまで、話がまだ到達していない。
「ううう、考えていられる時間が短い……っ。この場合、リンリンを出しても意味がないし!」
大きな体でぐねぐねしてるハウロン。
「で、素材の方はそんな感じなんだけど」
落ち着きそうにないので、話を再開する俺。
「……魔法陣の方ね?」
切り替えたのか、むっくり起き上がるハウロン。
ランタンに伸ばした手を一度止めたものの、そのまま手に取って繁々と眺める。
「ドームに二つ、台座にもありそうね? どちらもこのままではよく見えない――分解してもいいかしら?」
「いいけど、ドームの方は中で精霊が光らないと魔法陣見えないかな?」
一見透明になるように加工した。
「つけてみたいけれど、その前に。それぞれの魔法陣の効果を聞いていいかしら? 流石に見えないままではなんなのか分からないし、この国には様々な魔法陣が組んであるから、試しに発動させてみて他に影響が出たら困るわ」
片手で頬を押さえながら、もう片手でぶら下げているランタンに視線を向けるハウロン。
「メインの効果はドームに描いてある魔法陣で、悪霊退散? 浄化とか」
「幽霊退治用なの?」
「そう」
まさにそれ用です。退治できないみたいなんで、幽霊除けになっちゃったけど。
「台座の魔法陣は、精霊の居心地をよくするのと、遠くに精霊を出すの。あと、底に壊れないように保護のやつ」
「居心地と保護はわかったわ。精霊を遠くに出すのは何故? 確かに、『精霊灯』は精霊が自由に出入りできる形だけれど、これは閉めたら出られないわね?」
精霊はガラス質のものとかの通り抜けが不得意で、ほとんどの精霊ができない。あと、宝石系は簡単に入れるけど、出られなくなることが多い。
「うん。閉めたら、黒精霊とかから遮断されて安全だから。でも、何かの拍子に手から離れて、中の精霊が出られないままっていうのも困るから」
いざという時の脱出用です。
「……ランタンの用途より、私が聞くべきことはジーンがどこに行こうとしているか、なのかしら……?」
ハウロンが遠い目をしている!
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