第408話 色々確認。
この世界にペンキがないことに気づいたジーンです、こんにちは。塗料はあるんだけどね、材木が綺麗に染まるのはない。というか、木材どころか布なんかが綺麗に染まる塗料が珍しくって高いから、島の産業にしたわけですよ。忘れてたけど!
俺の理想の犬小屋計画
あ、入り口は犬が齧り易いんだっけ? そこも松の方がいいか。いや、そもそも杉にしたの、日本で犬小屋によく使われてたからだった。
松は木の匂いがきついとかあるかもしれないから、わんわんにちょっと嗅いでもらおう。黒檀ならわんわんの指定だから大丈夫なのかな?
「そう言うわけで、どの材木がいい? 黒檀の台座は台座で熟練の職人が作ってるけど」
思い立ったが吉日で、砂漠の地下神殿に来ている。
「おお? わんわんは黒ければ黒いほどいい!」
嬉しそうに尻尾がビシバシ左右に振れる。
「愛しのア・ナ・タ♡」
「……っ!」
「いや、聞いてるのは匂いなんだけど。嫌な匂いじゃないか?」
後ろが何かガタガタうるさいけれど、スルーする。
「わんわんはどんな匂いも平気ぞ! ……いや、酢は少し苦手だが、オレンジの匂いも平気ぞ!」
つんとくる匂いは苦手なのか。
一応、候補の木材の匂いを嗅いでもらい、全部オッケー。お気に入りは黒松。地の民のところで高温処理した黒山ちゃんの松は、水分を失いきゅっとしまって、木というより黒耀石のようだ。
黒檀もつややかで綺麗だけど、どこか暖かい印象。暑いとこだから、ちょっと冷たい印象のある黒松の方がいいのかもしれない。
ところでわんわん、床に水が2cmくらい溜まってて、思い切り浸かってるんだが気にしないの? いいの? お腹冷えない?
「うふふ……」
「……ッ!!」
俺も後ろのガタガタは、聞こえないし見えないことにして、気にしないけどさ。えっちなことは下半身がないからできないのが救い?
「部屋、別にした方が良くない? 水浸しだけど」
「わんわんは女神エスを守る、一番無防備になるこの部屋で!」
……まあ、本人がいいならいいんだけど。エスのどこがいいのか謎だけど――ご主人様タイプだからだろうか。
俺はあまり長居したくないので移動! 場所は島。エスでの出来事が濃かったんで、なんか久しぶりな気がする。
子供たちの声が時々聞こえてくるけど、エスの街より騒がしくも雑多でもない。でもカヌムより開放的。晴れも多いし、日差しも強いしね。カヌムは薄曇りでも晴れカウントするくらいだし。
居城がある側の水路が一本、青く染まっている。染色は順調だ。他の都市では、染色屋と皮なめし屋と諍いが絶えないらしい。どっちも仕事に水を使って、どっちかが使ったらその水は使えないからね。
染色屋同士でも赤を染める許可持ってる集団と、青を染める許可を持っている集団とで水争いしてたり。
うちの島には皮なめし屋はないし、染色はどの色も同じ職人さんたちに許可だしてるけど。染の秘伝や、材料の入手ルートとかまるっと無視だ。
赤とか紫は俺が素材とってきた時だけで、基本藍玉での染色だけど。いざとなったら、水量と水路増やすだけだし。なお、技術の秘匿はソレイユと金銀が、一応対策をしているようだ。
城塞内はこれでも秘密がいっぱいなので、一般人は入れない。商談とかで人を招くことはあるけれど、一人歩きはさせないようだ。城塞側の広場は職人さんは特に制約なく歩き回って自由に見えるけど。
橋を渡らないと入れない
チャーリー、庭師としても凄腕だな〜って思っていたら、壁に魔法陣。気をつけて見て見るというか、小さな精霊を見えるようにして改めて見てみると、あちこちに魔法陣。
すぐわかるような場所に描かれたものから、隠されたものまで。許可された者しか
『あれは何?』
『レンガ〜』
『あのレンガが好きになるお手伝いするの』
魔法陣の効果はよくわからないのもあったので、魔法陣に描かれたことを手伝う精霊に聞いた。
意味がないのに、気になって仕方がない普通のレンガ。なんという罠。おじいちゃん、おじいちゃんの仕事か!
「おかえりなさいませ、我が君」
のこのこ歩いて城塞内を確認していたら、笑顔のアウロが生えた。
「ただいま。色々手を入れてるんだな」
「パウロル様が惜しみなく手を貸してくださいます。――精霊が見えておられないのが不思議なくらいです」
俺が魔法陣を眺めていたのに気づいたのだろう、アウロが言う。
「色々な魔法陣を知ってるみたいだな」
それにどこかお茶目。
「ええ。とても才あるよい方に来ていただけました。枝との相性もよろしいらしく、充実してらっしゃるようです。補佐のオルランド殿は、時々叫んでらっしゃいますが」
ああうん。あのハニワ、定期的になにかやらかしてそうだしな。おじいちゃんは精霊体験ができて喜んでるようで何より。オルランド君は頑張って!
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