第454話 【聖典】の向かった先

 結果的に言えば町や民間人への被害はそこまでなかったらしい。


 レイナの集団殲滅魔法やプラルの暗器、エリーゼの防御壁のお陰で被害は最小限に抑えられたのである。


「でも、1番頑張ったのはケロナでしょう? 貴女がエルサとメイアを倒したのには間違いないんですから」


「そう? 皆がいなかったらこの町も【クレイトン】みたいになっていたと思うよ」


 クレイトンで見たような大災害を食い止められたのは嬉しいが、それにしても私たちだけであの【聖典】の侵攻を食い止められた事を実感できる風景に私は満足している。


(クレイトンでは殆どの人が大切な人を失っちゃったからね...)


「ディール、サーシャ、マーヤ」


 私は聖典と一緒に戦った仲間の名前を呟いた。


【聖典】が生み出す負の連鎖はあまりにも大きい。


 だからこそ誰かがアレを破壊しない限りは永遠にこの苦しみを味わう人が出続けてしまうのだ。


「...そう言えば【聖典】はどの方角に消えたの?」


 私の言葉に皆が口を閉じる。


「どうしたの?」


 明らかに皆の顔色が悪くなっている事に気がつく私。


 その沈黙を破るようにレイナが声を出しました。


「...恐らく」


「ガライだよねぇ...」


 突然別の方向から私達の会話に介入してくる者がいたので、そちらの方向に全員が一斉に振り向くのでした。

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