第228話 【エリーゼ号】の朝

【エリーゼ号】に朝日が流れ込む...。


「んっ...」


 1夜を船の中で過ごした私達は旅支度をしながら全員の体調管理を行なった。


 取り敢えず全員の怪我の具合を確かめ、大丈夫な事を確認した上で旅に出る。


「じゃあ、取り敢えず【エリーゼ】号は私がしまっておきますね」


 そう言うとレイナは指を2回振って呪文を唱える。


 彼女曰く杖を失ったのは痛いらしいが、別になくても魔法は使えるそうだ。


「【縮小化ミニマム】」


 彼女がそう唱えると、【エリーゼ号】がまるで模型と同じくらいの大きさにまで小さくなった。


 それをみたサラが「可愛い!」と言いながら模型と化した【エリーゼ号】を見つめている。


 こんこんっと妹が叩いていると、レイナに注意されていた。


「叩いたらダメですよ、【縮小化】した物体は強度も柔らかくなるんですからね」


 そう言いながらさっさと魔法袋の中に入れてしまう。


「じゃあそろそろ行きましょうか、とは言えこの辺には村も町もないのでしばらくは適当に歩くしかありませんが...」


 取り敢えず森の中を進む私とエリーゼ。


 サラとレイナには森の上を飛んでもらい索敵と町の探索の両方を行なって貰っている。


 その最中でエリーゼが泣き始める。


「速い! 速すぎますわ!!」


 私に抱きついたままそう叫ぶ彼女をみて私は注意した。


「このくらいで泣くな、エリーゼは冒険者になるんだろう? だったらこのくらいのスピードを出して走れるようにならないとね、私と同じスピードで走れるようになれば一人前になったって認めてあげるから」


 私がそう呟くと彼女は泣くのをぐっと我慢する。


「わ...わかりましたわ! とりあえずこのスピードに目を慣らす事にします...!」


 彼女はその後からは、泣き言を言わずにしっかりと目を開いて私のスピード感に目を慣らしています。


 その様子に私は笑みを浮かべながら(頑張れよ)と心の声を出すのでした。

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