第648話 定着率30%④

 戦いを続ければ続ける程にどんどん遅くなって行くアポロに次々と砂鉄武器を突き刺す【次元龍】の行動に慈悲はない。


「あぐっ...」


 ぽたぽたと血を垂れ流すアポロの姿に私は(もうやめて)と言葉を溢しました。


 いかにアポロが強いとは言っても、それはあくまで私達と同じ魔物レベルでの話です。


【次元龍】の強さはまさしく規格外のそれであり、その強さは神の次元とでも言い換える事ができる事でしょう。


 しかし、アポロの瞳はまだ死んでなどいません。


 まるで【次元龍】の強さを見定めるかのような瞳をしたまま彼はこう呟くのでした。


「【変異ヴァリエーション】」


 と。


 そう呟いた彼の体から聖なる炎が噴き出して形を変えて行きます!


 七色の羽をその背中に顕出けんしゅつし人ならざる者へと変貌して行くのが分かりました。


 聖なる炎が闇の瘴気を燃やし尽くしたのか、彼の動きは元の状態に戻っていますが、それでも【次元龍】に到底敵うとは思えません。


 アポロの強さは知っていますが、それでもあの時のアレは私の強さであり【次元龍】の強さではなかった事は身に染みて分かっている筈なのに笑みを止めない彼の手には【聖典】が握られていました。


「素晴らしい強さだ、さすがは【次元龍】! 我らが【大帝】と双璧を成すこの世界の絶対強者! 僕はやはり貴方様と【大帝】様がしのぎを削ったとされる【次元大戦】をこの目で見届けたい!」


 何やら言い始める彼にとどめを刺すように指を指す私の体。


『...』


 砂鉄武器達が奴の周りを取り囲み、全てが終わろうとした次の瞬間!


「...えっ?」


 何故か【次元龍】の力が散布してしまったのでした。

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