第736話 氷点下の中に聳え立つ巨木
寒い。
ただただ表現としてはそれが正しいだろう。
あれからまだたった2日しか経っていないと言うのに体感温度が明らかに下がってきた。
「ママ...寒いよ...」
ミルシュが我の腕に身を寄せる。
「大丈夫、まだまだ元気だよね? 私のコートの中に入ってなさい」
その言葉を聞いてほっとしたのか、彼女は小さなトカゲの姿になってコートの中に入ってきた。
服と我の体温のお陰でミルシュも満足そうなのが嬉しいが、問題なのはミカの方だ。
「師匠...」
「ミカ...」
我はドラゴンなのでこのくらいの寒さにも耐えられるのだが、ゴーレム種であるミカは文字通りのアイスゴーレムになってしまいそうになっていた。
彼女が動けなくなる前に我の砂鉄で張り付いた氷を削ってはいるのだがキリがない。
「師匠、まだ着かないの?」
「もう少しだと思うから我慢して」
2人をパーティに迎え入れた後に我らは北の大地に足を踏み入れていた。
ここは通常でも寒い地域ではあるのだが、この寒気は異常であるといえよう。
吹雪で行く道が遮られ、冷たい風が体力を奪ってくる。
食べ物も少なくまさに死の大地と言う名に相応しい劣悪な環境だ。
ではなぜ我がそんな場所に足を踏み入れたのかと言うと...。
「昔の友人に会う為だ」
とミカには伝えてある。
感覚でその者の場所がわかるのはなぜだろうか?
それはきっとケロナ自身の直感の様な物だと思う。
しばらく歩き続けていると、吹雪の中に聳え立つ巨大な巨木が見えてきた。
明らかに不自然な場所に一本だけ立っているその木の内部から生命反応を感じる...。
「あれが目指していた場所? ただの大きな木じゃ...」
そう呟くミカを背負って空を飛び、
昔と同じようにケロナのジャンプで届く場所に入り口があったおかげで直ぐに分かった。
雪で埋もれてしまっているのだが、ここに扉がある事を我は...、いやケロナは知っている。
我は雪を掻き分けて扉を出現させた。
「木に...扉? 師匠? これは一体...」
「入れば分かる」
我はそう言いながら扉を開くといきなり見知った顔の少女が我に杖を向けてくる。
「誰ですか!?」
白髪のエルフは我に杖を向けてそう叫んでいるのでした。
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