第183話 彼女の想い②
「エリーゼ、あなたはさっきからお父様お父様って父親の財力を振りかざしているよね?」
私の低いトーンの声に彼女は焦り始める。
「は...はい」
「それってさ、
私の言葉に彼女はコクリと頷く。
「そう言う部分をあたかも自分の力のように振る舞うのは感心しないなぁ...、少なくとも私はね」
眉をひそめ、威圧感のある表情で彼女を見つめる私。
「うっ...」
明らかに分が悪くなった事を確認したのか、エリーゼはだんだんと静かになって行く。
完全に意気消沈したのを確認した後に私はため息を吐いた。
「あのねぇ、エリーゼ、別に親の財力を振りかざすのも悪いことじゃない、悪い事ではないんだけどそれをあたかも当然のように行使しようとするのはやめておいた方がいいよ、その結果私は今あなたという人物を見誤っていたと感じているからね」
今まで彼女に向けたことのない残念な気持ちを彼女に送る。
「あうっ...」
私の残念そうな表情を見た彼女は、返す言葉もないように黙りこくってしまう。
そんな彼女には悪いが私なりの言葉の刃を突き立てた。
「今私は本当に残念な気持ちでいっぱいだよ、あなたは自分の力でなんでもやろうとする子だったのに、最後の最後で他人の力を借りようとする姿勢が強く見られてしまった...、私は自分の足で立とうとしない人間に何かを教える気はないの」
静かな空気の室内に私の言葉が浸透して行く...。
私のの持論を突き立てた結果、彼女はギュッと拳を握りしめてこう叫んだ。
「私だって...、私だって! こんな綺麗なお屋敷の中で静かに余生を暮らしたいわけじゃない! もっとハラハラドキドキする私だけのすっごい大冒険をしてみたいの!」
自分の中の溜まり込んでいたストレスのような物を発散させてくる彼女の姿を見ていた私は静かに笑うのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます