第184話 彼女の想い③
「はぁ...はぁ...」
お嬢様の出す声にしては大きく粗暴な声でしたが、私の心には響きました。
「言えたじゃない、自分が本当にやりたい事、だったらやる事は私を説得して教師にする事じゃないよね?」
「...あっ」
彼女は自分が本当にやりたい事を自分の口で叫んだのだ。
それはきっと偽りのない心からの叫びだと私は感じていた。
そんな彼女にならば、私から手を伸ばそう。
「今の言葉が本心ならば私から勧誘しよう、エリーゼが私達の旅についてこない? 私達はこんな所で足を止めるわけにはいかないけれど、あなたが私達に足踏みをそろえると言うのであれば反対はしない」
私の言葉に彼女は言葉を失っていた。
「ケロナ...お姉様!!」
すごく嬉しそうな表情のまま彼女は光の灯った良い目になる。
「あなたがやるべき事はわかったよね? じゃあ行ってらっしゃい!」
私は微笑みながら彼女に手を振った。
「はいっ! お父様から
満面の笑みを浮かべる彼女の背中を私は押す。
「大丈夫、エリーゼくらいはっきりとものを言える子ならきっとね」
私がそう言うと、彼女は部屋から退出して父親の元へと向かって行った。
彼女が完全に退出したその後で、レイナが私の前に出てこう呟く。
「良いんですか? あの子を連れて行くとなると物凄く面倒な事になると思いますよ? だってあの娘大好きな【シュライン】公爵を敵に回す事になるんですからね〜、まあ私はどちらにせよサラの教師を続けないといけないので、ケロナにはついていかないといけないんですけどね〜」
と、少し皮肉混じりの言葉を垂れ流す。
「大丈夫だよ、彼女ならきっと両親の歪んだ愛から脱出し、自分の意思で私達の旅に同行するから...」
別に勝算があるわけでも、作戦があるわけでもないけれど、私はあのエリーゼという娘に対し、一定以上の評価をしているのでした。
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