第41話 旅の準備

 町に戻ると一旦ディール達とは分かれて雑貨品を見てみる事にした。


 スラナ村とは店頭の規模がまるで違うので歩いているだけでも楽しい気分になってくる。


 慌ただしい1ヶ月間だったので殆ど町の市場に足を運んでおらず、物資は基本ギルド内に配備されている店で色々と購入していたのだ。


「わぁ...、まるでお祭りみたいだね〜♪」


 人の多さにサラはそう呟いていたが、彼女の反応はあながち間違っていない。


 なぜなら、私もそんな気分になっているからだ。


「あんまり私から離れないようにね、サラは小さいんだからはぐれちゃったら見つけるのに時間がかかっちゃうから」


 私の言葉に不貞腐れる彼女。


「ふんっ! 小さくなんかないもん! 今なら魔法だって使えるしいざってなったら上空に花火をあげてケロナ姉ちゃんに私の居場所を教えてあげる!」


 杖を大きく掲げて今にも魔法を放ちそうだったので慌てて止める。


「馬鹿っ!! 町中で魔法を放たないでよ!!」


 私が彼女の杖に手を置いてやめるように促すと、彼女は渋々「わかってるよ...」と答えた。


 放っておくと本当にぶっ放しそうなので気が気でないが、いつまでもそんな調子じゃあ買い物が終わらないので色々と見ていると...。


「嬢ちゃん、もしかして旅の人かい?」


 そうとある露天商に声をかけられた。


「そうだけど...、今は冒険者やってるかな」


「それはよかった! 冒険者なら必需品のこれを持っていますか!? 一つ買えばなんでも入る魔法の袋!! 1番小さいやつでも数十キロ入りますよ!」


 そう言いながら私に見せてきたのは手乗りサイズの小さな小袋だったのでふっと笑う私。


「おじさん、騙すんなら人を見て騙した方がいいよ、そんなんじゃあ今時子供だって騙せないから」


 私が優しく忠告していると、商人のおじさんはこう言い続けている。


「騙すんだなんてとんでもない、この袋は正真正銘本物の収納袋ですよ、旅の必需品で一つは買わないと絶対に損をします」


 そう言われるとだんだん呆れてきたので軽く手を振ってその場を後にしようとする私。


「付き合ってらんない、他を当たってちょうだい」


 ゆっくりと背を向けようとした次の瞬間!!!。


 私の目にはおじさんが持っていた小袋の中に大きなトランクケースをすっぽりと収納する様がしっかりと映っているのでした。

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