第308話 全く

「全く...、エリーゼには困った物ね!」


 私は洞窟の奥で着替えるエリーゼを眺めながらそう呟きました。


「まさか足を滑らせて崖から落ちるなんて思いませんでしたよ、でもまあ...下が川で良かったですね」


 レイナの言う通りである。


 もしも下が川じゃなかったら一大事だったのは言うまでもない。


 私は着替え終わったエリーゼとプラルを呼んでこう言いました。


「まずはエリーゼ! 貴女は気を抜きすぎ! 森の中だったのに注意を怠った証拠が今回の川に落下した件だよ!」


 私の言葉にしょんぼりするエリーゼ。


「ごめんなさいですの...」


「そして次にプラル! 道案内してくれたのはありがたいけど、自分の命を削ってまで仲間を助けなくても良い! 私達は冒険者なんだから常に自分の命を最優先にする事! 良いわね!」


「...わかりました」


 言いたい事を言い終えた私は2人をそっと抱き寄せる。


「全く...、心配したんだよ...、2人とも死んだんじゃないかってさぁ...、次からは足元に気をつけて歩きないさよエリーゼ...、プラルは仲間の為にとはいえ自分の命を簡単に賭けないようにね」


 2人の釘を刺しながらも生きていた事に感謝する私。


「でも...ありがとう! 2人とも生きていてくれた私は嬉しいよ!」


 そう言い切った時にエリーゼは号泣していました。


「お姉様!! そんなに私達の事を...! エリーゼは幸せ物です!! 結婚しましょう!!」


 そう言われるとこう返すしかないな。


「...それは無理」


 さっきまでの感動ムードが台無しになるほどいきなり冷めた表情でそう言い放つと、なぜか悶絶しているエリーゼ。


「あっ...♡、お姉様は冷めた表情もイイですわ...♡」


 などと言いながら勝手に1人でやっている彼女を放っておきながら洞窟を後にするのでした。

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