第836話 レベル75の【高位冒険者】自信過剰な旅の純白魔女エルフ【レイナ】さんの魔術師見習い時代!! 短編集!! 第三弾 魔女の弟子

 〜草原〜


 ...。


 暑い...。


 温かいを超えて暑いと言うレベルになった日差しに照らされている...。


 そんな中でこの重たい荷物を持って旅を続けている白髪の可憐なるエルフの美少女は誰でしょうか?


 そう、この私レイナです。


 私が汗だくになってまで歩いていると...。


「レイナ遅いよ、このままじゃ日が暮れちまう」


 そう空から声をかけてくるのは師匠であるアルフィ様でした。


「アルフィ様、頼みますから少しは手荷物を持って下さいよ、いつも私がこんな重たい鞄を背負わされているのは不公平です!」


 私が不平不満を申し立てると彼女はこう言いました。


「貴方は私の弟子でしょ、弟子は師匠の言うことを聞くことが仕事ですよ」


 そう言いながらつらびやかな黒髪を日差しに照らしています。


「アルフィ様は良いですよね、【箒】魔法を扱えるんですから...」


 私は空を自由に舞う【魔女】アルフィ様に愚痴を呟く。


 しかし、彼女は笑って言いました。


「ならば早くレベルを上げてくださいね」


「...は〜い」


 私は地上を歩きながら時々出てくる魔物を倒して経験値を得て行きます。


「あっ、レベルが40になったような気がする」


 敵を倒しているとなんとなくレベルが上がったような感じになりますが、実際の所教会に行かなくては正確な数字は分かりません。


 父の反対を押し切り半年。


 家出をして師匠と旅に出た私はかなり成長していました。


 たった半年でレベル11だった私が40近くまで上がっているのでアルフィ様のご指導は凄く為になっています。


 確かにこんな荷物持ちをさせられるのは不服ですが、それの対価としてこれだけの成長を促してくれるのであれば悪い話ではありません。


 それに高価な魔術書による薬草学や実戦による魔法術の向上は私にとって喉から手が出るほど欲しい物だったので問題ない。


 そうして草原を歩いていると、ついに目的地が見えてきました。


 草原の真ん中に立つ村が。


 村に着くと早速師匠は仕事モードに入ります。


「じゃあ行こうかレイナ」


「はい」


 私と師匠が村の中に入るとシケまくった村の惨状が見られました。


 村の中には死体がいくつか見られ、その死体にはウジ虫が沸いている。


「うぇ...」


 私がそれをみて吐きそうになっていましたが、アルフィ様は普通に素通りしていました。


 まるでとでも言うように...。


 村の真ん中にある依頼主の館へと向かう師匠。


 そして依頼主に会い依頼内容を再確認していた。


「この村にドラゴンゾンビが現れて疫病を撒き散らした時いたけど本当?」


 その問いに村長らしき人物は素直に答えてくれた。


 どうやら数日前からそのドラゴンゾンビが近くに住み着き、生活が困難になってしまったらしい。


 ここにくるまでの間に見えた巨影は奴の物でしょう。


 師匠は報酬の前払いを受け取ると早速ドラゴンの元へと向かう。


「レイナ、行くよ」


「は〜い」


 そう言いながら村に出てまず行ったのはまだ生きていて疫病に侵されている住民達の手当てでした。


「アルフィ様? ドラゴンゾンビを倒しに行くんじゃないんですか?」


「ああ、ちょっと待ってね」


 そう言いながら倒れている子供の症状を読み取り私の背負ったリュックから最適な薬草をすり潰して飲ませて行く。


 症状の重い者には良い薬草を使い、軽い者には安く薬を売る。


 勿論これは慈善事業ではない。


 ちゃんとお金は貰っているからだ。


 薬が欲しくて買えない者には最悪物々交換で譲ると言う師匠のルールがある。


 慈善事業で仕事をやるのは良くないと日頃から言われて教育されてきたので今では私も良く分かっているつもりだ。


 つまりこれは副収入でドラゴン退治の収入も貰う。


 これにより収益を上げようと言う計画である。


 やはりアルフィ様は誠の【魔女】である。


【魔女】とは強欲でしたたかであるべきだと彼女に教わった。


 しかし、アルフィ様はどこか人間臭く、今回も明らかに値段不相応な対応をしていました。


 自分は利益主義だと言わんばかりの言動をとっていますが、何故か非利益な事も行うので少々難しい性格をしていますね。


 そして草原を飛び交う巨影を追いかけ回し、アルフィ様がドラゴンゾンビの両翼を焼き尽くしました。


 地上に落ちるドラゴンゾンビを指さして私にこう告げる師匠。


「レイナ、そこの腐敗したドラゴンを倒して見せなさい!」


 両翼を失ったとは言え相手はドラゴン。


 油断できない相手です。


 私は杖を手に取り応戦しました。


 まずは電撃の魔法で牽制し、氷の弾丸をくれてやります。


 しかし、そのどちらもそこまでの効果を発揮しませんでした。


(氷と雷はダメ、炎はどう?)


 奴の尻尾攻撃を躱して連続で炎の塊をぶつけてみると、予想以上の成果を上げる。


「ギシャァっ!!!」


(この反応、ドラゴンゾンビは火に弱いみたいね)


 私はその後も炎の魔法を連発し、辛くも勝利を手にしました。


「ふぅ...魔力切れです」


「お疲れ様、レイナ」


 師匠がタオルを私に渡してきました。


「ありがとうございます」


 それを受け取り汗を拭き散ると彼女はこう言いました。


「よくできましたね、弱っていたとは言えドラゴンを倒せる様になってきました、そろそろ中級冒険者として名乗りをあげても良いかもしれませんね」


 調子のいい事を言っている師匠だが、私はまだそんな気にはなれない。


「ありがとうございます、ですが私はまだまだアルフィ様の魔術から学べる事が多いと思いますので、冒険者として名を馳せるのはその後でも問題はないです」


 そう、私は別に冒険者になりたい訳ではない。


 私は【魔女】になりたいのだ。


 美しく強い【魔女】に。


 そう、そんな私からすればまさにアルフィ様は私の理想の【魔女】なのである。


 ※ちょっと抜けている所や甘い所がありますが、そこは目を瞑ります。


「まあ、そこまでレイナが私の事を慕ってくれて嬉しいわ、じゃあそんな師匠から命令です」


「はい!」


「ドラゴンゾンビの解体よろしくね☆」


「は...はい?」


「解体が終わるまで私はその辺を飛んでいるので終わったら読んでくださいね」


 それだけ呟くと私に腐ったドラゴンの解体を任せて何処かに飛んでいってしまう師匠。


「これを...一人で...ですか?」


 私は目の前に広がる大きなドラゴンの死骸に思わず2度見をしてしまいました。


「ああ〜! もう! やれば良いんでしょう! やれば!!」


 私は師匠に腹が立ちながらも、腐ったドラゴンの解体に勤しむのでした。

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