第835話 レベル75の【高位冒険者】自信過剰な旅の純白魔女エルフ【レイナ】さんの魔術師見習い時代!! 短編集!! 第二段 魔女アルフィ

 〜数年後・エルフの村〜


 ここはエルフの村。


 基本的に何もない小さな村で美しく佇む少女がいました。


 純白の髪と肌を持ち今日も自己流の魔術を研鑽する素晴らしく美しいエルフの少女こそが私です。


 母さんの残した魔導書を片手に今日も朝から晩まで魔術の勉強。


 母さんが亡くなったあの日から私はしっかりと魔術の勉強をして今となっては村1番の魔法の使い手となっていました。


「レイナ、今日も水瓶に水を入れてくれ」


「はい、父さん」


 私は杖を一振りして出来うる限り綺麗な水を出してあげます。


 とは言っても若干の濁りはありますけどね...。


 でもまあ集中してやれば飲む事ができるくらいの水質にはなるので問題はないでしょう。


「こんなもんか、いつもありがとうなレイナ」


「いえいえ、家の為にできる事はなんでもやりますからね」


「...それはありがたいが料理の方も少しは上手くなれよ? お前はなんでか知らないけど料理だけは下手だからなぁ...」


「うっ...、それは...その...」


 この可憐で美しい美少女エルフな私にも一つだけ苦手な物がありました。


 それが料理です。


 母さんはとても料理が上手かったのに私はてんでだめでした。


 今ではもうお父さんが代わりに料理を担当してくれているので女子としては少し恥ずかしく思います。


「...精進します」


「ま...まあ人には得意不得意はあるからな、少し言い過ぎたかもしれん」


「いえ、お構いなく、父さんの言う通り私の料理の腕前が残念な事は自分でも理解していますから、代わりに毎日の水出しや火焚きは任せてくださいね」


 私はそう呟くといつも通り焚き火用の木々を集めに森に向かった。


 〜エルフの森〜


 エルフの集落の近くには良い木の棒が沢山落ちている。


 これは私達エルフ族が木々との高い親和性を持つ種族と言うことで木々達が良質な木の棒を落としてくれているのだ。


 勿論私達エルフも木々にはお礼を告げる。


「いつもありがとうございます、水をかけてあげますね」


 私はそこら中の木々に水をかけて回る。


 勿論適量を与えながら...だ。


 私が水を与えながら木の棒がを集めていると...。


「うぅ...」


 何か声が聞こえてきました。


「なに?」


 声のする方に向かってみると、いかにも魔法使いっぽい人間の女性が倒れていました。


「だ...大丈夫ですか?」


 私がそう聞いてみると、彼女は「お...お腹すいた」と呟きました。


 こんな森の中で遭難していたせいか少し弱っていたので仕方なく面倒を見ることにしましょう。


「ちょっと待ってくださいね」


 私はそう呟くとそこらからキノコを採取してきて拾って来た木の棒に火の魔法を当てて簡易的な焚き火を作りました。


(料理は苦手ですがただ焼くだけなら...)


 私はキノコの表面をこんがりと焼いていきます。


(調味料とかはないので簡単な料理ですが...)


「焼きキノコです、食べてください」


 私はお腹をすかせている女性の口にキノコを押し込みました。


「グムっ!?」


 驚いた様な表情を浮かべながら頑張ってキノコを飲み込む女性。


「んんんん...!!!!」


「大変! 水で流し込んでください!!!」


 そう言いながら口に水魔法をぶっ放す。


「ぼがははっははがはははは〜!!! ごっくん!!!!」


 勢いよくキノコと水を飲み干した彼女はバタンとその場に倒れる。


 恐る恐る彼女の容体を眺めるために近づいてみると...。


 ガンっ!!  


「っ!!!!」


 いきなり彼女が起き上がり私の額に頭をぶつけてきたのだ!


 痛すぎて失神しそうになるのに耐えていると...。


「馬鹿かあんたは!! 生焼けのキノコを食わせたかと思ったら水をがぶ飲みさせて!!! 私を救いたいのか殺したいのかどっちなんだい!!!」


 いきなりそう言われたので流石の私も頭にきました。


「は...はぁぁぁ〜!!!? せっかくその言い方はないでしょう!!」


 お互いにガミガミ言い合った後に一息つく。


「ふぅ...まあ助かった、おかげで飢え死にせずにすんだからね」


 なんかあっちから謝ってきたので調子が狂う。


「...まあ謝るのならいいです、もうお腹が満たされたのなら私は行きますから、こんな森の中で迷う前に家に帰ってください」


 そう呟く私に彼女は「悪いな、帰る場所がないんだ」と答えてきました。


「はあぁ? 帰る場所がない?」


「そうなんだよ、だからさぁ今日だけでも止めてくれないかな?」


「なんで私がそこまでしないといけないんですか?」


 面倒くさくなってきたのでつゆ払いしようと水の魔法で水柱を立てました。


「じゃあそう言う事で」


 そう呟きながら私がその場を後にしようとしていると...。


 バシャン! と言う音とともに私の魔法が掻き消されていました。


「...えっ?」


 と驚く私に対し、彼女はあははと笑いながら「そこを何とか..」などと言っている。


 私はその言葉を聞いた後にゴクリと喉を鳴らしました。


「構えてください」


「えぇ?」


「構えてください!! 貴女と手合わせがしたくなりました」


 私の言葉に最初こそ呆気に取られた様な表情を浮かべていた彼女ですが、次第にニコッと笑いながら杖を振り上げました。


「久々の挑戦者ですね、いいでしょう相手になるわ」


 ここに来て相手の服装をよく見てみるとそこそこいい服を着ているのが分かった。


(なんでしょうか? 上級冒険者の方なのでしょうか?)


 杖を構えた瞬間から漂う強者の感覚...。


 こればかりは隠しきれない。


(この人...強い!!)


 しかしそうなると余計にこんな所で空腹になっていた訳が分からない。


 ここら辺の魔物は比較的穏やかで弱めだし、植物や木の実も食用の物が多く空腹になる事などあり得ないのだ。


 まあ、今考えていても仕方ないだろう。


 私は思いっきり杖を振り上げて炎の魔法を唱える。


 しかし、彼女はそれをいとも簡単に弾き返した。


「くっ」


「さあ、もっと撃って来なさい」


 私は得意の魔法を何度も唱える。


 氷に雷、風に闇魔法も試してみましたが、やはり全て簡単に打ち消されてしまいました。


「はぁ...はぁ...」


 私が肩で息をするくらいに魔力を消費した所で優しく私の首元に杖を突きつける彼女。


「チェックメイト...ですね」


「私の負け...ですか」


 私は力尽きたようにその場に座り込む。


「貴女は何者ですか? 私の魔法を全て完璧に打ち消した上で完封してくるなんてその辺の魔術師に出来る事じゃありませんよ?」


 そう、私はこう見えてもそこそこの魔術師なのです。


 実践経験もそれなりにありますし、日々の鍛錬にも気を抜いたことはありません。


 第一にここまで圧倒的に敗れたことがないのでいっそ清々しいくらいでした。


 私の問いに彼女は答えてくれました。


「私はアルフィ...、【魔女】アルフィ」


 私の目の前でにっこりと微笑む彼女の素顔は凄く優しく輝いているのでした。

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