第555話 1人旅③

 私が男の話を聞くと大体こんな感じの内容だ。


 男はこの近くの村に住んでいる漁師で噂になっている【光龍】を倒した者達に依頼をしようと思ったらしい。


 なぜなら、男の住んでいる漁村の海域に【Sランク】の【海龍ポセイディア=ルクベリアル】と言う魔物が住み着いたらしく誰に依頼してもやってくれる者が現れないらしいのだが、それもそうだろう。


 誰が好き好んで自分の命を投げ捨ててまで小さな漁村を守ると言うのだろうか?


 そんな奴は相当のお人好しだ。


 私は違う。


「...言いたい事はそれだけ? じゃあ他を当たってね、私は暇じゃないの」


 そう言いながらその場を去ろうとすると...。


「お願いします! 私には5歳になる娘がいるんです! このままでは漁にも出られず家族皆が飢え死んでしまうのです! どうか! よろしくお願いします!」


 頭を地面に擦り付けてお願いしてくる彼の根性もなかなかのものだと思う。


 たかだか娘1人を雇うためにそこまでしようとする奴はそういないだろう。


 だいたい、狼から助けられた程度で【Sランク】の依頼出してくるかね普通...。


 私は「はぁっ」とため息を吐きながら彼に言いました。


「全く...、私を雇う依頼料は安くないけどいいの?」


「と言う事は...!」


「いいでしょう、【大帝の眷属やつら】と戦う前の肩慣らしには丁度いい相手だしやってあげる」


 私の答えに男は歓喜に満ちた笑顔を浮かべながら村へと案内してくれるのでした。

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