第371話 メイアの過去

「メイアとエルサお姉ちゃんは由緒正しい貴族の血筋ザナイン家に産まれたの...、メイアのこともエルサお姉ちゃんのこともその場にいた全員が祝福してくれていました...」


 静かにそう語る彼女の表情はどことなく悲壮感が漂っている様に見える。


「あれは...そう、初めて【次元龍】が私達の世界に侵攻してきた日...、エルサお姉ちゃんは皆の先頭に立って指揮をしていると言うのにメイアは暗い自分の部屋に閉じこもっていたの...、頑張り屋で率先して行動できるエルサお姉ちゃんは本当に凄くて強かった...、けれど【次元龍】の軍勢の勢いはどんどん増していって、ついに我がザナイン家は数日の攻防で落とされてしまったの...」


 拳をぎゅっと握りしめて悔しそうなメイアの表情には、本物の怒りに満ち溢れていました。


「メイアとエルサお姉ちゃんは【次元龍】に楯突いた悪君としてかつて仲間だった者達に連れられて処刑台に立たされたのを今でも思い出せる...」


 彼女はそう言いながら話を続ける。


「エルサお姉ちゃんが名君と呼ばれていた時にはぺこぺこ頭を下げていた連中に私達は裏切られて【次元龍】の軍勢に敗北し、あまつさえ命まで取られようとしていた...、その時に裏切った連中は「悪く思うなよ」とか言ってきたのよ? 本当に笑えるよね...」


 あははと笑う彼女の表情は笑っていない。


「貴女達には分かる? 信じていた者に裏切られるその心域が...、だからこそ私はあんな連中とはもうつるまないと決めて貴女達のような純粋な子達と友達になりたいと思ったの...」


 私の手をぎゅっと握りしめてくるメイアは静かにこう言いました。


「ねぇ...、争う事なんかやめてここで楽しく暮らさない? エルサお姉ちゃんは復讐に取り憑かれているけれど、メイアは違うよ? ケロナお姉ちゃんの中にいる【次元龍】だけをこの世から排除した暁には皆で仲良くしようよ...」


 そう呟いてくる彼女に私はなんて答えて良いのか分からない。


「私は...」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る