第589話 【武闘家戦士】の限界突破③

 〜更に1週間後〜


「今日こそ師匠から一本取ってみせる!」


「やれるものならやってみなさい」


 私はミカと間合いを図りながら徐々に接近する。


「そこっ!!」


 凄まじく早い動きで私の脳天に踵落としを喰らわそうとしてくるが、流石に初手踵落としは悪手だと言い聞かせるように躱そうとしたのだが...!


「んっ!?」


 自分の体が動かない事に気がついて足元を見てみると、なんと岩の塊がいつのまにか私の足に引っ付いているではありませんか!


(ミカの奴...、もう【】をここまで自在に扱えるようになったのか)


 私はそう思いながらも水魔法で踵落としの威力を半減させ、足を掴んでそのまま投げてやりました。


「うわっ!」


 空中に放り出される彼女はすぐさま土魔法で柔らかい土のクッションを出現させて受け身を取り私に殴りかかってきます。


(なるほど...、土魔法の使い方が上手くなってるね、最近覚えたばかりのはずなのに確実に規模と威力が上がってるのがよく分かる)


 彼女と戦っていると少しずつ私の思考レベルが上がっていくのを感じて地味な特訓が面白いと思うくらいには彼女が成長しているとは思う。


(けど...、まだまだ甘いね)


 わざとコケたように見せかけて隙を作ってみると...。


「貰ったぁぁ!!!」


 凄い勢いで食いついてくる彼女の腹に水の魔法をぶち当てる。


「があっ!?」


 お腹にまともに水の弾丸を受けた彼女は尻餅をつき、隙を晒したので一瞬で近づき彼女の首横に拳を入れました。


「ぐっ...!」


 悔しそうな表情をしている彼女に私は言いました。


「今のは悪くなかった、意識をあなたに集中させてからの足元をロックする戦法はこれからも積極的に使えばいいと思う」


「お世辞はいらない、結局一本取れなかったんだし、他の方法も試して見たいからもう一本行くよ!」


 彼女はめげる事なく私との戦いを望んでいるようです。


「ふっ...、いいよ! 好きなだけ相手をしてあげる!」


 私とミカはこうして今日もお互いに技を磨くのでした。

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