第744話 温かな空気

「...」


 その後から黙々と調理を進めて完成させた物を皆に渡してきました。


「うほ〜!!! ケロナちゃんのカレーじゃん!! 久しぶりだぜ!!」


 キィアが美味しそうに頬張るのを見た皆も次々に我の作ったカレーを食べていく。


「やっぱりケロナの作ったカレーは美味しいですね」


「お姉様の作った物ならば何でも美味しいに決まっていますわ!」


「...美味しい」


「師匠、早速だけどおかわりしても良い?」


「ママっ! ミルシュも!!」


 次々におかわりを要求されるのが嬉しくてついつい多めに渡してしまう。


 勿論サラに手伝ってもらったお陰で味の変化に気がつかない程度に誤魔化せたのは言うまでもないのだがな...。


 皆の前ではいつものサラを演じている【魔女アルフィ】の行動に我は目を光らせる。


(...此奴は油断ならない)


 口上手く言って我を騙す気かもしれないと考えずにはいられない。


 サラならともかく、過去の記憶が戻った彼女は【大帝】の【眷属】のようなものだ。


 それに気がついているのが我だけだと言うのであれば注意するのは当然だろう。


 先ほどの話が仮に本当だとしても、我が本当にケロナの肉体を解放するかは我次第なのだ。


 そう言う意味で考えればこの取引は我の方が優位に立てる事は間違いない。


 しかし、我も鬼ではない。


 ちゃんと呪詛を解いてさせくれれば【大帝】との決戦の後でこの体を返そう。


 悪いがケロナの肉体は我を大きく強くしている要素の一つである。


 それを取られるとなると戦況が悪くなる可能性があるので、今しばらくは借りておくつもりだ。


 それは置いておいて、今はこの温かな空気を楽しもう。


 我の味わった事のない仲間との談笑とやらを...な。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る