第743話 バレてる?

「...もしかして【次元龍】?」


 その言葉に我は驚く。


(どう答えるのが正しい?)


 本当の事を言えば警戒されるだけだろうし、嘘をつけば恐らくサラに見抜かれてしまうだろう。


 どうやっても詰んでいる状況に妹はふっと笑う。


「やっぱり...だよね」


(やっぱり? なにがやっぱりなんだ?)


 我の動揺っぷりに彼女はこう切り出した。


「ねぇ、【次元龍】お願いだからお姉ちゃんを返してくれないかな? 貴方が【大帝】を殺すまで止まれない事は分かっているけれど、私達もお姉ちゃんは返して欲しいんだよ」


 その言葉に我は眉をひそめる。


(なんだこいつ...、様子がおかしいぞ...)


 我の記憶の中に居るサラとは全く雰囲気が違う。


 そう...、まるで別人のような感覚がある。


 我は思わず小声で「お前こそ誰だ?」と呟いてみた。


 すると...。


「私は【魔女アルフィ】、【大帝】の元【専属眷属】でありこの世界の人間達に火刑に処された者、なんの因果かこの世界に少女の姿にて転生を果たした」


 その名前に驚愕する我。


「【魔女アルフィ】だと? 貴様が...か?」


 コクリと首を縦に傾ける彼女の表情は真剣そのものだ。


 冗談で言っているような感じはしない。


「そう、信じられないかも知れないけれど私は偶然この体に転生を果たしていたの、まあ、それを思い出したのもつい最近なんだけどね...」


 食材を鍋の中に放り込みながら彼女は続ける。


「実はね...、私達も【大帝】や貴方の復活が近い事は理解していたんだよ、だから必死に修行していたんだ、そしたら...さ、【聖女】のスキルで前世の自分の記憶を覗ける魔法があったんだ、それを使ったら大体の事を思い出したって訳」


「【聖女】にはそんなスキルがあるのか...」


「勿論全員が覚えられる訳じゃない、大体500レベル突破の報酬なんだからこの世界に置いて初めて習得したのが私かも知れないからね」


 淡々と続ける彼女の表情は少し固い。


 大切なお姉ちゃんの体を我に取られていると分かっているのだから当然ではあるが。


 しばらく彼女と話していると、こんな事を提案してきた。


「ねぇ【次元龍】、私が貴方の【大帝を殺さないといけなくなる呪詛】を解いてあげるって言ったらケロナお姉ちゃんを解放してくれる?」


「そんな事ができるのか?」


「今の私ならきっとできる」


 力強い目で我の事を見つめてくる彼女の言葉を信じるか否か。


 その選択を迫られているのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る